エリン音楽ひろば 2021年11月

オンラインRPG『マビノギ』で、2021年11月25日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第1回、タルラークサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.

内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

以下は、わたしなりのまとめで、出てきた話題・質問を以下に要約しています。こういう意見もありました、こんな発言もありました、と引用をならべるときりがないので、かなりばっさりと単純化しつつ、音楽ひろばで言及できなかったこともちょっと補足しました。……ほとんどが補足になってしまったかも。

質問のほかにも、テスト演奏の2人合奏が1作ありました。そして最後に、めろさんによる、フリースタイルジャム合奏のテスト(大人数の参加で音がどうなるかの確認)をしました。

主催のふたりはピアノ教室やバンド、音大等の経験は? いままで弾いてきた楽器は?

わたしは(小中高の音楽の授業を除いて)独学です。アコースティックギターを弾くことが多いです。

16人演奏中に、(スキル使用時などの)効果音を出すとどうなる?

効果音・BGMと、演奏音とでは、それぞれ再生の仕組みが違いますし、効果音が「17人目の音」と扱われて演奏音が消える、ということはありません。効果音を演奏の一部に取り込めるかどうかについては、動画で撮るなら工夫と情熱次第。演奏会などで披露するのは、現実味がなさそうです。

16人超の演奏時の音消え現象についても、話題が及びました。どうなっているのかについては、コンセンサスを得るのがなかなかむずかしく、とりあえず今後の宿題として切り上げました。後日、いくつか実験してみました。それについては別項で後述します。

「MabiIcco」で音符をコピーする際の範囲選択のしかたは?

右クリックドラッグで矩形選択できます。(音符選択中に、別の音符をShiftキーを押しながらクリックすると、両音符間を範囲選択できます。)

「3MLE」でトラック10が再生できないのは、そういうもの?

マビノギMMLを書く用途なら、そういうもの、という認識で問題ありません。ただ、まったく使えないわけではないので、後述します。3MLEは、5人合奏時代のソフトなので、トラックが15個あれば、当時はそれで事足りたのでした。

集中鑑賞モードで合奏を聴くとき、パーティリーダーの立ち位置からの音が聞こえるのか、自分の位置からの音が聞こえるのか

集中鑑賞モード(ゲーム内表記:集中観賞モード)をオンにすると、

  • 距離による音量の減少がすべてなくなる
  • 左右の音の振り分け(パンポット)が、集中鑑賞モードをオンにした時点で固定される(自分の位置が基準になる)

という効果があります。オンにしても変化がないことがあり、その場合は、カメラアングルかキャラをすこし動かすと、効果が現れます。

左右の振り分けが無効になるとか、リーダーの位置が中央定位になるとか、いろんな説が従来いわれているのですけれど、わたしの知るかぎりでは、そんなことはありません。はっきりさせたいから、また話題にしてみたいところ。

合奏時の位置取りにこだわることに、どれだけ意味があるのか。どの音を真ん中に寄せて聴くか、聴き手の好みに任せればいいのでは?

こだわる演奏者もいましたし、あまりこだわらないひともいました。意図した聴こえかたを正面観客に届けることを目指して配置を決める、という意見が、わたしのスタンスに近いものです。楽譜を配る際にも、位置取りをしっかりやれば迷いにくい、という面もあります。位置取りにこだわるから準備時間がかかる、というふうに単純に結びつくわけではないと考えます。配置については、別項でもうすこし詳しく書きます。

好きな曲、アーティストやバンドは?

この種の質問は毎回でもOKです。むしろわたしはこっち方面の話が聞きたいっていうのも少なからずありまして。MMLのレパートリーと、ふだん聴く音楽とが違うというかたもいましたし、音楽嗜好の背景が垣間見えたのはおもしろかったところです。

シラベルカさん!! フレンド送ってもいいですか!!

だめです、なんてあの場でいうわけありません。このあと何名ものかたから続々とフレンド申請がとんできて、うひゃあ、というかんじで、わたしにとってこの日のハイライトのひとつとなりました。どうもありがとうございます。(ふだんは、面識の薄いひとからのいわゆる「無言フレ申請」は受け付けません。)このように(?)、親睦の場としても、音楽ひろばを御利用ください。

合奏を作ってみたら楽器が9個くらいに膨れ上がったけれど、無理に演奏した場合はどこから音が消える?

16人までなら、無理なく演奏できるのでだいじょうぶです。昔は8人合奏が上限でした。さらにいにしえの時代では5人まででした。

スクリーンショット集

初開催ですから、ちょっと多めに画像を載せて、雰囲気をお伝えしたく思います。

画像1:開会5分前

開会5分前の21時25分の風景が画像1です。すでに10数人も集まっています。ありがたや。

かつて「クリスマス演奏会」でやったように、始まる直前まで10分ほど、BGMを何曲か流していました。打ち合わせなしでひそかに計画していたわたしの独断です。これ、自分自身のテンションを高めていく効果もあるんです。あとでサポート役のかたに、そんなことは主催がやらないであたしに任せなさい、というようなことをいわれました。そうします。

画像2:オープニング演奏

画像2は、21時30分、開会のあいさつをしながらテーマ曲を弾いているところ。21時30分だと、エリンでは深夜になって、とても暗いので、次回からはちょっと開会時間をずらす予定です。

画像3:テスト合奏中

画像3は、テスト合奏をしているときのようすを、会場全体を俯瞰して撮ったものです。ちなみに、画像でいうと左下にあたるスペースを中心に、みなさんに集まってもらう予定でしたけれど、右側にもたくさんのかたが座っています。たしかにムーンゲートから歩いてくる動線を考えると、右側のほうが自然なんですよねえ。

画像4:フリースタイルジャム合奏のようす

画像4は、めろさんの、7人プラス自由参加のフリースタイルジャム合奏のテスト。16人を超えるといずれかのパートの音が消えるので、それを踏まえた上で、多少音が消えても致命傷にならないような構成にする、というのがフリースタイルジャム用合奏づくりに特有の難題です。めろさんのは合奏譜としてすでに作り込まれているので、音が消えるとつらいところです。で、この作品は結局、ジャムはあきらめてふつうの合奏形式で、本番披露となったようです。

画像5:エンディング演奏

そして画像5。0時過ぎ、エンディングテーマの演奏です。弾きながら、ああ、どうにかこうにか終わりまでたどり着いて、よかった……と、しみじみ。自分でつくっておきながら、思いのほか、自分自身に効いてきたエンディングテーマの音でした。

さっきのジャムでみんな近くに集まっていたので、にぎやかなスクリーンショットが撮れました。

内容の掘り下げ

今回出た話題のうち、いくつか、試論を書いてみます。

16人を超えるときの音消えについて

だれでも追試できることが肝腎だと考えたので、どうやって実験したのか、別ページでちゃんとした記事にしようとしたら、何日つぶしてもかたづかなかったので、ちょっと後回しにして、とりあえずかいつまんで書いておきます。

実験用に、サイン波の音色ファイル(DLS)を自作して、ゲーム内で鳴らして、その録音をスペクトログラムで解析する、という手法で調べました。

まず、最大同時発音数を超えると古い音から消えていく、という意見が出ていましたので、これについて少し探りました。

残響音が長時間伸びる音色を用いて、C0からE8までの高さすべてを、64分音符で一気にジャラララランと鳴らして、「ノートオフ後の残響音」を大量に重ねる、という実験をしてみました。(ピアノロールでいうと、音符のバーの終わりがノートオフ。)

画像6:C0からE8までを64分音符で一気に鳴らした演奏のスペクトログラム

スペクトログラムは、横軸が時間、縦軸が音の高さで、その点はピアノロールと同様です。画像6を見ると、音数が増えたときに残響音がぷつりと切れる、というようすは見受けられません。また、残響音がたくさん重なっていても新しい発音がさまたげられることはないようです。この演奏を2人で試しても同様の結果。つまり、200音程度の残響音は問題なく同時に鳴りました。

ノートオン中の音符が「16人×3音」の48音、ちゃんと同時に発音できるのかは、ひとりでは調べられないので、確認できていません。

演奏音が鳴るのは同時に16人まで、という制限において、幻想のコーラス1本も1名ぶんにカウントされる、という話もありました。試したところ、幻想のコーラスは16本まで重ねることができて、17本目を鳴らすと、その前に鳴らしたぶんが消えるのを確認しました(画像7)。

画像7:幻想のコーラスをサイン波の音色で重ねた演奏のスペクトログラム

17本目の幻想のコーラスのかわりにふつうの楽器演奏をしても同様でした。この実験だけで断言はしませんけれど、幻想のコーラスも1名ぶん、のように思えます。

音の鳴らない幻想のコーラスであっても同様です。ただし、〈すべての音符(音量ゼロを含む)を演奏し終えた〉時点で、演奏内容が終わったとみなされます。もし休符だけの楽譜なら、最初の一瞬だけしか、同時演奏人数に影響しません。

同時に鳴っている幻想のコーラスが16本未満になると、消えていたぶんが復帰して、最初から再生されました。この〈最初から〉というのは、幻想のコーラス特有の振る舞いでしょう。(――と思いきや、フリースタイルジャムでも、演奏終了のタイミングで冒頭のフレーズがちらっと聞こえるという現象があります。16人を超えた為に鳴っていなかったトラックが、一瞬だけ解放されるのでしょうか。わからないことが多いですけれど、ジャムの場合は、ちらっと鳴って終わるだけだから、困りはしません。)

2キャラで幻想のコーラスを重ねていくと、自分以外のキャラの鳴らしたぶんが優先的に消えることも確認しました。

合奏の位置取りは重要か?

ステレオにおける、音の左右の定位、いわゆるパンポット設定が、マビノギの演奏システムでどう表現されるか。右か左かは、「画面上の、聴き手と演奏者との位置関係」で決まります。つまり、聴き手のキャラより左側に表示されているキャラの演奏音は、左から大きく聞こえます。左真横の位置で弾けば、左からのみ音が出ます。さらに、画面のアングルを垂直ぎみ(頭上から見下ろす形)にするほど、音が左右に強く拡がり、水平ぎみにすると音が中央に寄ります。つまり、左右の定位については、聴き手が決定権を握っています。

おなじ位置からおなじアングルで聴いているひとたちなんていないので、すべての聴き手におなじ音をステレオで届けることは、理窟からいうと無理です。とくに合奏参加メンバーは、極端に左右に振れた音を聴くことになりがちです。

でも、作り手側の願望としては、より多くのひとに、左右の音の振り分けを意図に近い形で届けたい。悩ましいところです。そこでひとまず、斜めや横のエリアはあきらめて、せめて正面の聴き手、あるいは合奏の最前列中央の演奏者(多くの場合、合奏リーダー)には、意図に近い形で鳴るようにと考えてみるわけです。――これはあくまで考えの一例です。

また、たとえばおなじフレーズを、別種の楽器(ウクレレとリラ、リュートとハープ、などなど)で重ねて音色をつくる、という場合、ぴったり隣接して並んでもらわないと、狙いどおりに鳴りません。左右に音が散らばると、音色をつくるというより、単に別々の楽器でおなじフレーズを弾いている、というふうに聞こえがちです。別々の楽器に限らずとも、おなじ楽器のひとつのパートを2人、3人ぶんに分割している場合も、あまりばらばらの位置から鳴らすと、意味が変わってきます。

そのほか、見た目のイメージ的な都合もあるでしょう。たとえば、一般的なライブ演奏がそうであるように、ドラムを後列に配するとか、リードボーカルを前に立たせるとか。

聴き手はべつに、作者のそういう意図を汲み取る必要はありません。しかし、聴き手が自由な向きで聴くということと、演奏の送り手側がでたらめにやるというのとは、同列の次元ではありません。位置の指定に、作者の意図が明示(または暗示)されていれば、実際にどう聴くかとは別に、鑑賞の手がかりを得ることもできます。

演奏者と聴き手との位置関係は、音量にも影響します。一定以上離れた距離の演奏音は、小さくなります。後列は、聴き手から遠くなるぶん、音量が下がりはじめるラインも、前列のそれに比べて手前側になります。客席の位置でさえ、前列と後列とで音量差が生まれていると考えられます。ただし、音量差の問題については、集中鑑賞モードを使えば解消できます。


わたしの場合は、左・やや左・中央・やや右・右、という具合に各パートの定位をふりわけて、左を前列左端に、右を前列右端に、やや左右は後列に配置することが大半です。前列・後列の間隔はなるべく狭くします。

ポップミュージックにおいては、メロディ(リードボーカルなど)と、ベースやドラムなどのリズム隊は中央に置く、というのが(ミキシングの)一般的なセオリーです。ふつうのヒット曲はほとんどそうです。(1960年代くらいのレコードには、ボーカルが右から、ベースやドラムが左から、というようなものもあります。)和音を鳴らしたり合いの手フレーズを弾いたりしている、ギターやピアノなどは、左右に寄せます。ドラムも、シンバルやハイハットなどは、やや左右に音を散らすことが多いようです。ドラムだけずいぶん横に長いんだね、と突っ込みを入れるひとは少ないと思いますけれど、まあとにかく、一般的にはそういう傾向の録音物が多いし、MML演奏のときもそれを参考にすると、安定感が出しやすくなると思います。

ある程度MMLアレンジが形になった時点で、左右の振り分けはだいたい決めてしまいます。左右の音量差ができるだけ揃うように仕上げていきます。当サイトで公開しているMML演奏音源は、ほぼ意図した通りの左右の振り分けで録音しています。もちろん、それを実際の演奏会などの場で再現することは望めません。でも、意図に近い音を聴いてもらいやすくすることはできます。

モノラルで合奏するのも手です。つまり、メンバーが全員おなじ位置にぴったり重なって合奏すれば、どの位置から聴いても、各楽器の左右の定位差、距離による音量差がなくなります。こういう思い切った手段も一案です。

だれもがステレオ再生で音楽を聴いているわけではないし、モノラルで再生して成立するなら、それに越したことはありません。モノラルできれいに鳴っている音楽であれば、どのように左右に振り分けても、そんなに破綻しないと思います。そういう観点でいうと、左右の振り分けに頼るのは軟弱だとさえいえるかもしれません。答えはひとつではないので、いろいろ試してみましょう。

3MLEのチャンネル10

MML作成ソフト「3ML Editor 2」(3MLE)を、ふつうにマビノギMMLを書く用途で使うかぎり、気にしなくていいことなのですけれど、通常は「チャンネル10と紐づけられたトラックは生成されない」ようになっています。

新しいトラックをつくると、Track4、Track5…というように自動で名づけられます。その数字がチャンネル番号に対応しています。Track9の次は、Track11が生成されます。だから、見た目としては「Track10がない」ということになります。

「Track1」などは単なる名前に過ぎません(「リュート1」のようにリネームしたりします)。この話題の本質は、トラックではなくてチャンネルのほうです。

MIDIの標準的な音源仕様(GM)では、1番から16番のMIDIチャンネルのうちの10番のチャンネルが、打楽器用となります。ここでいう打楽器とは、音の高さごとに、バスドラム、スネアドラム、ハイハット、タンバリン、などが割り当てられているタイプの音色のことです。マビノギにも、太鼓やらドラムやらありますけれど、マビノギの演奏で用いる音源では、チャンネル10は使われません。だから、3MLEでも無視するようにしたのでしょう。

ただし、3MLEでは「拡張版MML」を書くこともできます。これは、マビノギMMLに、ピッチベンドやエクスプレッションなど一般のMIDIの機能を足したものです。

MMLのトラックの冒頭に、

//#using_extension

と書くと、拡張版MMLになります。さらに続けて、

//#using_channel = 10

と書くと、そのトラックは10チャンネルに割り当てられます。

マビノギの演奏用音源では、なにも鳴りませんけれど、別の音源を環境設定で指定すれば、そのトラックが、その音源の打楽器用の音色で演奏されます。

拡張版MMLは、ほかのゲーム用の譜面を書くときに有用かもしれません。わたしは、拡張版MMLで作業したことがないので、くわしく知りません。「標準MIDIファイルを入力」したとき、データの取り込みの設定によって、拡張版MMLが生成されるので、その際に上記のようなソースを見かける程度です。

なお、テキストエディタでmmlファイルを書き換えれば、拡張版MMLを用いずに、チャンネル10に紐づけられたトラックをつくることもできます。いずれにしても、マビノギの演奏用音源を使うぶんには、意味ありません。

初開催を振り返って

初めてのことでしたし、反省点やくやしいこともいろいろとありました。でも、全部は書けないので、サラッと振り返ってみます。

30人くらいの参加者数になったのは、主催の想定を上回るものでした。企画の立ち上げから、めろさんと、運営サポート役のかたとの3人で相談を重ね、もし人数が少なくて話もはずまないときにどうするかと、あれやこれや思案しました。そういうときに備え、わたしは場つなぎ用のBGMもひそかに量産していました。そういうBGMを弾く機会がなかったのは、幸いでした。

主催としては、演奏会でよく見かけるかたにも、そうではない層のかたにも、居心地よく発言してもらえるように気を配ることになります。対人スキルに難のあるわたしですから、なおのこと意識づけしないといけません。ある程度、まずまず役目を果たせたと思います。

ただ、司会進行を意識しすぎたかもしれません。とくに「挙手制」のルールに固執して進行しようとして、気まずくなるという場面もありました。柔軟に対応をと、あとでめろさんたちにたしなめられましたけれど、そこをあいまいにしてしまうと、自分のペースでしゃべった者勝ちになってしまい、発言のタイミングを逸してしまうひとも出てしまうので、難しいところです。

要領とテンポをつかむのが、わたしにとって初回の大きなテーマでありました。今回、めろさんと息が合わない感じが多少あったので、次回はもうちょっと抑えぎみでいこうと思います。

終盤ぐらいになると、頭が貧血ぎみになってくらくらしました。2時間もチャットに集中するというのはたいへんなことです。ふだんあんなにチャットしないですからね。「シラベルさんがしゃべってる!」と驚いたひともいるとかいないとか。……やはり、次回はもうちょっと抑えぎみでいこうと思います。

みなさんの、閉会時のあたたかい言葉、うれしく思いました。参加してくださりありがとうございました。