エリン音楽ひろば 2025年8月

オンラインRPG『マビノギ』で、2025年8月31日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第23回、マリーサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベル)です。

当日のようすのスクリーンショット

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内容のまとめ

出てきた話題・質問に関して、ひろばでのやりとりをもとに、つらつら書いています。

オリジナル曲を初めてつくろうとしているひとに、作曲する上でのとっかかり、基礎のキ、みたいなことを伝える際、おすすめできる知見が知りたいです

もし自動車の教習場で教官が「フィーリングを信じて自由に!」なんていいだした日には交通事故が増えて迷惑ですけれど、曲づくりではだれも怪我しないでしょうから、やりたいようにやればいいのです。でも「どのようにやればいいかわからない」から、さてどうしようか、という話になります。

好きな曲をいくつもコピーしているうちに、自分だったらこうしたい、と思うことがあるかもしれません。あの曲のフレーズをこっちに入れてみたらどうだろうとか、リズムを変えようとか、音符をずらしたり足したり抜いたりとか、なんでもいいのでいじってみて、変化やよしあしを感じ取ってみましょう。さらに原型をとどめないくらいに改造していくと、オリジナル曲ができるきっかけになるかもしれません。

手際よく上手につくるコツは音楽理論として体系化されているので、適宜それも参考にすればいいですけれど、あくまでも実際につくってみるのが先です。「DAWソフトもソフトウェア音源も買った、おすすめプラグインもひととおり揃えた、コード進行やスケールも学んだ、よしつくるぞ、……なにを?」というようなひとがたまにいるような気がします。そうではなくて、つくり続けながら、必要や興味に応じて道具や知見を増やしていく順序のほうが、きっと長続きすると思います。

ゲームだって、まずプレイしてみて、行き詰まったり、もっと高みを目指したいと思ったりしたときに、攻略記事なりウィキなりを調べるものでしょう。

短くても不恰好でも構わずに、模倣の域を出なくてもいいのでどんどん曲を完成させていって、その合間にすこしずつ、わかりそうなところから理論的なことも学んでいって、使えそうだと思ったものはすぐに実作に活かしてみて、その繰り返しですこしずつレベルアップしていくのが順序として良いと思います。

でも、どんどん量産すべしといっても、きっかけも衝動もないときには、なかなかつくれる気にならないかもしれません。なにか心が揺さぶられることがあれば、それが創作の原動力になるものです。

ひろばで挙がった話として、HDDが壊れたとき、それをテーマに悲しい曲をつくったことがある、というかたがいました。そんなふうに、きっかけはどんなことでもかまいません。それで「じゃあ悲しい曲ってどうやってつくるの?」といったような疑問にぶつかったら、そのたびに入門講座にヒントを求めて、なるほど短調でつくってみればいいのかな、なんてふうに見当をつけて試していけば、知識が自然と身につくと思います。

……というわけで、取り組みかたや心の持ちかたのほうが大事だと思うから、技法よりそっちのことを書きました。質問されたかたのお知り合いは、作曲しようとして挫折したことがあったそうです。作曲をおおげさなことと捉えず、楽しんで続けてほしいなと思います。理想どおりの曲なんて、生涯通じてもそうそうつくれるものではなく、ましてや最初からそんなものはできないので、気長に構えて取り組みましょう。

オープニングのBGMコーナーでめろさんが弾いた曲も引き合いに出されていたので、その話もメモしておきます。こちらは技法に寄った話でした。

ミとソばかりをメロディに使って、そこに〈ド、ソ、ド、ソ……〉というようなベース(オルタネイティングベース:コードの1度と5度を交互に弾く)をコピペで並べた、というつくりの曲でした。あまりたくさんのことを盛り込んで複雑にしないで、このように少ない材料で気軽につくってみてはいかが、というメッセージも曲に込められていたのかも(単に短い時間で仕上げたかっただけという説も)。ただ、ミとソに絞って、なんていうのは本当のところ「名人の余興」のようなもので、技術と慣れがあってこそササッと形にできることだったりするのですけれど、そういうのを聴いて「それだったら自分にもつくれそうだぞ」と、その気になるのは決して悪いことではありません。

こういう機会も含め、いろんな楽曲に出会って研究して、「〈ド、ソ、ド、ソ……〉というふうにベースが鳴っているパターンってけっこうよくあるなあ」と発見して、それから「〈ド、ソ、ド、ソ……〉のパターンっていいな、これを使ってなにか曲にしたい」という衝動が湧いて、それを真似してみて、さらになにかメロディなりドラムなりを加えたくなってきたら、曲づくりがモノになる大チャンスです。

8分の6拍子や2拍3連の音符を、MML(の作成ツール)で表現するやり方がわからない

質問されたかたは「和ねこ」で音符を打ち込んでいるとのこと。「和ねこ」で拍子を設定するには、ピアノロールの上のほうにある小節番号を右クリックして「拍子の変更」を選びます。

8分の6拍子の楽譜をもとにピアノロールに入力する場合、拍子の設定も8分の6拍子にするといいでしょう。マビノギMML自体には小節や拍子の概念がないので、その設定はあくまで、MML作成ツールのピアノロールの小節と楽譜の小節とを一致させるだけの意味です。

3連符も、「音符の長さ」の項目で「(3連符)」を含む長さを選べばOKです。「12分音符 (3連符)」を選んでいる状態で、音符を置き、その長さを1段階伸ばせば2倍になり、2拍3連の長さ(2拍を3等分した長さ、1小節が4拍子であれば6分音符)にできます。

以上、操作方法の説明でした。

8分の6拍子または8分の12拍子は、ハチロクとも通称されます。ハチロクのリズムと4拍子のハネるリズムと、それぞれ共通する部分があるので、ちょっと触れておきます。

画像1:8分の12拍子と、ハネたリズムの4分の4拍子

画像1は、〈ド・レミ・ファソ・ラシ・ド〉というフレーズを楽譜とピアノロールで表わしたものです。上側の例は8分の12拍子を、下側の例は4分の4拍子と3連符を用いています。

8分の12拍子は、1小節の長さが8分音符12個ぶんです。この例だと〈ド・レ〉〈ミ・ファ〉〈ソ・ラ〉〈シ・ド〉いずれも「8分音符・8分休符・8分音符」の組み合わせで、すべて並べてちょうど1小節となります。

一方、4分の4拍子のほうは、4分音符を3等分した長さの3連符(いわば12分音符)を使っています。音符の配置は、8分音符が12分音符になった以外、8分の12拍子の例と同様です。

実際にこのように打ち込み、8分の12拍子のほうのテンポを1.5倍にして再生するとわかるように、どちらも演奏に差はありません。

人間が楽譜の意図を汲み取って演奏する場合は、8分音符基準のリズムのとりかたと4分音符基準のリズムのとりかたとで演奏内容も微妙に違ってくるので、両者の拍子は別もの、ということになるのですけれど、コンピューターに演奏させるデータを(ピアノロールシーケンサーなどで)打ち込む場合、そういうノリの違いは音符ごとのベロシティや発音タイミングの微妙な調整で表現することになります。拍子設定そのものは直接関係がありません。

ついでにつけ加えると、4分の4拍子1小節と4分の2拍子2小節との違い、8分の12拍子1小節と8分の6拍子2小節との違い、についても同様で、打ち込みではそれぞれ同等と考えていいはずです。拍子は、音楽家にとって自明のことのように取り扱われがちですけれど、よくよく考えるほど混乱します。「8ビート」「16ビート」でもたいてい4分の4拍子で書かれるのはどうして、とか、8分の12拍子ってどういうこと、1小節を12分割しているのに8分音符なのはどうして、とか……。

で、逆にいえば、8分音符を基準に打ち込むか、3連符(12分音符)を基準に打ち込むかは、曲にあわせて都合のいいようにすればよいです。また、こういう「タッカタッカ」のハネるリズムが途中で切り替わり「タカタカ」とハネなくなるような曲の場合、8分の12拍子の例だと「タカタカ」が付点8分音符基準になり、4分の4拍子の例の場合はふつうに8分音符基準になります。

つまり、さっきは「8分の6拍子の楽譜なら拍子の設定も8分の6拍子にすればいい」と書きましたけれど、曲中にリズムの切り替わりがあるなら、どう打ち込めばいちばん楽でわかりやすいかを事前に見積もって、拍子設定を選ぶのがベストです。

また、3連符はピアノロールに表示される縦の基準線と合わない位置に置かれることにもなりますから、3連符のハネるリズムはハチロク系の拍子に置き換えて、8分音符基準で入力するほうがやりやすいこともあるでしょう。

スクリーンショット集

画像2:開会後のBGMコーナー

21時30分からの演奏コーナー。わたしは「フォルテで踏み込め」「キミに便乗」と新作の「月のふち」を弾きました。めろさんのは、先述したミとソでつくった曲でした。

画像3:質問・相談コーナー
画像4:合奏コーナー

今回の締めの合奏コーナーでは、季節ものということで、わたしとめろさんそれぞれ1曲、音頭ものの曲をかけました。わたしは「おもちゃの兵隊音頭」を。めろさんはこの8月、黒い砂漠のほうでも盆踊り演奏会を主催していました。今回の2曲はそちらでも披露したものでした。

画像5:エンディング

記念撮影をして、23時15分ごろに閉会。

来ていただいたみなさん、ありがとうございます。次回は10月末にルエリサーバーで開催予定です。詳細が決まり次第おしらせします。