エリン音楽ひろば 2023年4月

オンラインRPG『マビノギ』で、2023年4月27日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第10回、タルラークサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.

内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

今回から時間を繰り上げて、21時すぎ開始になりました。開会時にだれもいなかったらさびしいな、と懸念していましたけれど、早くから何人も来ていただけてひと安心でした。

出てきた話題・質問を以下に要約しています。当日に言及できなかったこともいくらか補足しました。後半の時間に行なったサイコロトークのコーナーについては、あとのほうで触れます。このほか、楽器頒布とテスト演奏もありました。

4月のアップデートでの変更点について

1本の楽器(1本のMML)で、おなじ高さの音符をどう重ねようと、途中で音符がちぎれることがなくなりました。マビノギのアップデートによるMML演奏への影響のページの「同音連打・同音重ね」の節をチェックしてください。ほか、数点の「不具合修正」がありまして、テンポ指定によって合奏タイミングがずれていた件も直っています。

「同音重ね」の仕様変更で影響を受ける一例として、v0の音符を重ねる無音調律が使えなくなったことが挙げられます。このこと自体は、ごく一部のひとしか関係ないように思います。調律そのものが廃れていますし。

「無音調律はどのようなときに使っていたか」という質問もありました。デキる楽師だとアピールしたいときに……という冗談はさておき、マビノギMMLの調律のページの「無音調律」の節でちょっと述べています。まあ、この技にたいしたメリットはないので、できなくなったところでそんなに困りはしません。できなくなったせいで既存のMMLを書き直さないといけないのが、(わたしには)憂鬱の種です。現状だと、本来無音調律だった調律音がポーンと伸びたままイントロに突入してしまうMMLもありますし、それではちょっと恰好が悪いのです。

アンケートとかでMMLの仕様に対しての要望って皆さん出しているのでしょうか

ゲームクライアント終了時にブラウザが開いて、アンケート画面が出ます。わたしとしては、ああいう強制表示そのものをやめてほしいものです。

まめに要望を書くかたもけっこう多いようでした。「新しい楽器、音色を出せ」「文字数増やせ」など。もちろん種類が増えるだけなら歓迎です。増やせ、というのは際限がない要求なので、いくらでもいえますけれどね。

サービスが続いているだけでありがたいので特に注文はない、という声もありました。たしかに、どんなに不具合がたくさんあろうと、サービスが終わる(世界が終わる)理不尽さに比べればまだましです。近年のゲーム業界をよく知らないですけれど、なかなかたいへんらしい。

能動的にリアクションするか、受け身で乗りこなすか――わたしは、やはり受け身タイプですけれど、これがもし個人制作のインディゲームであれば、おもしろかったという感想とともにバグ報告を作者に送ることもありましょう。でも、マビノギはインディゲームではないし、まして韓国でつくられているので、日本のユーザーの声が届く実感が持ちづらいですね。

実際、たとえば「ダンバートンのユニコーン像広場にイベントNPCを置くな」という要望を繰り返し送っているひとたちもいるはずですけれど、対応の気配はなく、1年の半分くらいイベントNPC(とイベント消化用の倉庫キャラ)がユニコーン像広場に突っ立っている状況が続いています。

自作のメロディに和音(コード)を当てる方法を勉強中。いろんな方法があるみたいなので、皆さんどうやってるのか聞きたい

〈C〉や〈Dm〉や〈G7〉のようなコードネーム(和音の記法)がわかるようになると楽だと思います。質問されたかたは、コードネームなどはまだわからない、でも、トニック、サブドミナント、ドミナント、という言葉ならちょっと勉強した覚えがある、とのことでした。また、たとえばメロディがト長調なら、ト長調のコードを使えばいいよって聞いた、とも。

「○長調のコード」とは、おそらくダイアトニック・コードのことを指しているのだと思います。コードに関する小理窟を噛み砕いて書くと長くなるので、「内容の掘り下げ」の節のほうに分けました。そちらも参考にしてみてください。ト長調よりハ長調で説明するほうが初学者向けなので、ハ長調で説明しています。

なんとなくサマになる、聴き馴染みのある定番のコード進行というのがいろいろありますから、そういうのをいくつか知っておくと、コードをつけるとき手がかりになると思います。

理論だけ頭に叩き込むより、好きな音楽をいろいろ聴いて、コードのつけかたなどを分析することを繰り返すのが早道です。五線譜やコード譜で調べてもいいですけれど、楽器が弾ける(おおまかに耳コピできる)ならそれに越したことはありません。でも、上手に弾く必要はまったくないし、スマホの楽器アプリで、指でこすって和音を鳴らしてみるだけでも充分だと思います。あまり「勉強」だと思わないことが、なによりのコツかもしれませんね。

寝起きによくメロディが浮かんできて、すぐ忘れてしまうので、いい記録方法ありますでしょうか

手の届くような位置に道具を置いて、引っかかりなくパパッとすぐさま記録できるようにするといいのでしょうね。

スマホに鼻歌を吹き込む、というかたが何名かいました。

数小節だけでもMML作成ソフトでMML化しておく、というかたは、PCもソフトも24時間つけっぱなしだそうです。

ドレミが頭で把握できるひとなら、紙にペンでメモしておくのも手です。五線譜なんてたいそうなものは使わず、カタカナで「ドーレミソー」というふうに書きます。

のそのそ起きて、喉をうるおして、お手洗いに行き、食事を摂り、PCを起動して……というルーティンをこなすうちに、ほぼ確実に夢の内容は雲散霧消してしまいます。それどころか、目覚めて1秒で、はらはらはらりと忘却がすでに進んでいます。わたしの場合、たいていそんな感じですし、寝起きがいちばん疲労しているので、なおさら記録できないのですけれど、もし頭にしぶとく残っていれば、これは具現化する価値があるぞと思って作業に取りかかることになります。

自分でも、どのように脳細胞が働いているのかと驚くくらいの名曲が夢で流れていることがあり、忘れ去るのがもったいない気がしますけれど、そういうのも含めて、音楽体験としてなにかしらの栄養分になっていると思いたいところです。

初参加(観客も含む)の演奏会ってなんでしたか

サービス開始のころから遊んでいるかたの口からは、わたしもめろさんも知らないような名前もいくつか出ていました。

演奏会に密接に関わったプレイヤーたちのことは、何年経っても心に残っているものです。

マリー、ルエリ、タルラークの3サーバーについては、公式のプレイヤー掲示板にいくつか記事が残っていて、当時のようすを垣間見ることもできますけれど、モリアン、キホール、トリアナ(およびロナパン)サーバーについては記録が残っていません(「インターネットアーカイブ」などで辿れるかも)。いまアクセスできる古い記事がいつまでも残される保証もありません。

こんな昔話を載せても誰得だよなー、なんて思ってウェブでの公開をためらうかたも多いのでしょうけれど、資料的価値がかならずありますから、どこかに載せられるなら、昔話でも昔のスクリーンショットでもどんどん載せるのがいいと思います。さっきの話ではないですけれど、数ヶ月でサービス終了する泡沫ゲーム群と違って、文化や記憶を語り継げるのが、長生きしているゲームのありがたみです。

わたしの初参加・初演奏の演奏会は、2013年7月のマリーの「はぴすて」です。意外、といわれました。わたしがマビを始めたのが2011年末で、その前後の時期に演奏界隈で一種の断絶・停滞があったらしく、いつどこで演奏会がある、という情報がほとんどつかめずにいました。そんななかで、はぴすてが数少ない入り口だったはずです。2014年にマリーで「MiciM」が始まり、サーバーが6つから3つに統合され、徐々に演奏会もにぎやかさを取り戻していったようです。取り戻したなんて、昔のことを知らないくせに、さも見届けてきたかのように記していいのかな? まあいいか。スクショだけならいくつか見たことありますし。

サイコロトーク

休憩を挟んで、後半はサイコロトークのコーナーを企画しました。

参加者のかたをひとつずつ当てていき、サイコロを振ってもらって、その出た目によって以下のテーマで数分しゃべっていただく、という内容でした。

画像1:サイコロトークのトークテーマを書いたお絵描きチャット
  1. めろに質問
  2. シラベルに質問
  3. 初めて買ったCD・レコード(・配信音源)
  4. 思い出に残っているマビノギの演奏会・イベント
  5. みんなにおすすめしたい曲
  6. ラッキー(?)ナンバー

6の目は、ひとり指名して、1から5のテーマのいずれかを指定して、そのひとに代わりにしゃべってもらう、または、自身が会場のみなさんにぜひ伝えたいことをフリートークする、というラッキーナンバーです。なにがラッキーなのかよくわかりませんけれど、こういうのも入れておいたほうがおもしろいかなと考えたのでした。

しゃべったあとは、つぎにサイコロを振るひとを指名できます。指名したくない場合は、主催に一任もできます。最初ひとり目は挙手制としました。どうなるかなと思いましたけれど、積極的に名乗りを上げたかたがいて助かりました。もし誰もいなければ、紙ヒコーキを飛ばして、止まった位置をもとにして当てようという予定もありました。

当てられたときに、パスしてもよいことにしました。なるべくいろんなひとにしゃべってもらいたいとはいえ、聞き専で来たかたやチャットが苦手なかたに強要するわけにはいきません。また、反応がない場合は、あとでまた当てるぞ、という含みを残して別のひとに――実際やってみたら、無反応でもパスでもおなじことになってしまうと気づいたのですけれど、まあ、これはしかたないですね。また、サイコロを振ったあとにはパスできません。

と、このようなルールで行ないました。

ひろばは「学びと交流の場」と銘打っています。その「交流」のほうに思いきり振った企画でした。よく顔を見かけるようなかたでも、そんなに詳しく知っているものではないですし、意外な一面が垣間見えたりすると、なんとなく親近感を覚えるものだと思います。演奏関係の濃いひと限定の会合ではないぞ、ということをアピールしたい気持ちもありました。もちろん、ひろばらしく、音楽関係の話題をいちおう軸にはしていますけれど、趣旨としてはそのようなくだけた感じの企画でした。

ところが……。まず最初のかたが2の目(画像2)。そのあと1、1、3、1、とどめに1、という出目でした。主催への、とくにめろさんへの質問ばかりになってしまいました。

画像2:サイコロトーク中

めろさんもたまらず「シラベルさんこのサイコロおかしいでしょ?」と叫んでいましたけれど、サイコロに偏りはありません。1が続いたから次こそは別の目が、というのは〈ギャンブラーの誤謬〉として知られる誤った期待なのです。こういうこともありますって。それにしても、もうちょっとみなさんの意外な一面とかひととなりとかのほうを覗きたかったですねえ。なんで「めろに質問」「シラベルに質問」でふたつも枠をとってしまったんだろうか。次回するときは1枠にまとめましょうかね……。

なんだかんだで盛り上がったことは盛り上がったようでした。主催の意図を参加者のかたも汲んでくれている、と思える場面もあってありがたかったです。あと、当てられないように気配を消そう消そうと努めていたかたも若干名いたようですねえ。罰ゲームみたいになってはよくないし、一方でハラハラドキドキ感も保ちたいし、なかなかバランスが難しいですね。

2回連続ではしませんけれど、とくに企画がないとき用のメニューとして、サイコロトークがひとつ確立できたように思います。常備食みたいなものですね。ルールも今回のをおおよそ踏襲していきます。

スクリーンショット集

画像3:休憩コーナー

開会前のBGM演奏をやめたかわりに、途中に休憩を入れて、その時間に2曲ほど弾くという構成にしました。主催者の為のインターバルです。わたしが弾いているあいだにめろさんがひと息ついて、めろさんが弾いているときにわたしがお手洗いなどに行って……。会が中だるみしてはいけないので、演奏でつなぎます。

画像4:サイコロトーク中

サイコロトーク、寝落ちと思われるかたを除いて、当てられたみなさん、パスせずにサイコロを振ってくれました。なにをしゃべったら(なにをめろさんに質問したら)いいんだろう、と困っているかたも多かったですね。わたしも同じ立場なら、おろおろするでしょう。でも、事前に準備されては素顔が引き出せませんから、お題も本番まで明かさなかったのです。サイコロトークとはそういうものでしょうからね。

植え込みのところに飾りつけられているけばけばしい風船は、もちろん主催が置いたものではありません。この時期の期間限定イベントに伴う設置物でした。

画像5:テスト合奏

サイコロトークのあとにねじ込むことになったテスト合奏を見守っているようすです。今回のテスト演奏は1曲だけでした。

画像6:エンディング

閉会時の記念撮影です。23時半をめどに、という予定だったのに、0時をすこし過ぎてしまいました。申し訳ない。いえ、たしかに、1次会が深夜3時半にまで及んだ伝説の演奏会(2021年3月の「コンドルの袂で」)にくらべたら、どうということはないレベルかもしれないですけれど、次回はなるべく23時半から0時までの間に終わるようにします。でも、なんだかんだで結局ずれ込むかもしれません。昔のテレビの野球中継みたいなものですね。定時に終わることはまれで、たいてい後続の番組がなくなったり放送時間がずれたりしていたものでした。

内容の掘り下げ

メロディにコードをつけるコツ、という話に関するサブテキストです。ダイアトニック・コードやトニックやドミナントといった言葉を知っているひとは、とくに読む必要ありません。


以下、ハ長調を例として説明します。ハ長調の音階は(固定ド記法で)〈ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ〉です。基本、これらの音高でメロディや伴奏を構成します。

音階に含まれる音高のみを使って、ふつうの3和音(3つの音の和音)が7種類つくれます。〈ドミソ〉〈レファラ〉〈ミソシ〉〈ファラド〉〈ソシレ〉〈ラドミ〉〈シレファ〉です。これらを専門用語で「ダイアトニック・コード」といいます。

ただし〈シレファ〉だけは、ほかの6つのコードとちょっとタイプが違うので、作曲の初学のうちは考えに入れなくてかまいません。

ハ長調のメロディに、(6つの)ダイアトニック・コードをどう当てるか、というふうに焦点を絞って話を進めます。

ダイアトニック・コードにはそれぞれ、コード進行のなかでの役割があって、安定・一時安定・不安定の3種類に分けられます。

ハ長調の主音は〈ド〉です。ハ長調の曲なら、〈ド〉で始まって〈ド〉で終わるのが基本です。〈ド〉で始まったり〈ド〉で終わったりするようなときにどんなコードが鳴っていると収まりがいいかというと、〈ド〉を根音とするコード〈ドミソ〉がやはり適役です。この〈ドミソ〉が「安定」担当となります。

メロディが〈ド〉で終わるなら、その直前の音には〈シ〉が使われることが多く、〈シ〉から〈ド〉へ流れると、ああ終わった、という感じが強く出せます。直前が〈レ〉や〈ソ〉でもそういう感じになります。〈ソシレ〉の和音は「不安定」の役を担います。不安定のコードから安定のコードへ進行するのが、いちばん収まりのいい締めくくりかたです。

安定と不安定をどのように繰り返すか、というのがコード進行を考える上での要点といえます。(メロディづくりにもおなじことがいえます。)

一時安定、というのは両者の中間みたいな役です。安定のコードに比べるとそわそわ落ち着きないけれど、不安定のコードほど安定志向がないので、どこにでも向かえます。〈ファラド〉のコードが一時安定の役です。視界がパッとひらけるような、新しい風がはいりこんでくるような、ちょっとした変化をもたらします。

「安定・安定・不安定・安定」とか「安定・一時安定・不安定・安定」などのように、4コマ漫画の起承転結みたいにコードを並べる、というのが基本パターンです。さっきから基本です基本ですってしつこいですけれど、あくまで西洋クラシック音楽を根っこに持つ音楽理論ではこう説明できます、ということです。こういう理論があてはまらない音楽もたくさんあります(たとえばテクノやアンビエントなど)

ハ長調のシンプルな曲をつくる場合、〈ドミソ〉と〈ファラド〉と〈ソシレ〉の3つあれば、安定、一時安定、不安定の3役が揃っていますから、充分です。この3つはいずれもメジャー・コード(長三和音)です。ちなみに、3つそれぞれを専門用語で「主和音(トニック・コード)」、「下属和音(サブドミナント・コード)」、「属和音(ドミナント・コード)」と呼びます。

一方、〈レファラ〉〈ミソシ〉〈ラドミ〉はマイナー・コード(短三和音)で、ハ長調よりイ短調のほうで主役を張るコードなのですけれど、ハ長調のダイアトニック・コードでもあるから、ハ長調の曲のなかで普段遣いができます。その場合、〈ラドミ〉と〈ミソシ〉は安定役、〈レファラ〉は一時安定役となります。どういうことかというと、一時安定の〈ファラド〉を使うところで、構成音が似ている〈レファラ〉を代わりに使ってもいい、ということです。これを「代理コード」といいます。3つのコードだけで曲づくりするのに飽きたら、代理コードを混ぜてみましょう。表情の幅が拡がります。

あと、不安定のコードの〈ソシレ〉は、セブンス・コード〈ソシレファ〉の形で使うと、多くの場合しっくりきます。最初は、セブンスの使いどころがよくわからないかもしれませんけれど、作曲に慣れれば、なんとなくわかってきます。まずは、セブンスなどの4和音を使わず、3和音でいろいろやってみるほうが取っつきやすいかと思います。

さっき書いたように、メロディが主音の〈ド〉で落ち着いている箇所には、〈ドミソ〉のコードが似合います。そのほかにも、〈ファラド〉や〈ラドミ〉のコードにも〈ド〉が含まれているので問題なく使えます。逆に〈ミソシ〉や〈ソシレ〉なんかは、コードの構成音とメロディとが噛み合わないので、あまりふさわしくありません。

こういうふうに、フレーズの一区切り(たとえば1小節単位)のなかで支配的な(大事な)音高を見定めて、その音高を含むダイアトニック・コードを選んで当てはめていきます。複数の候補があるなら、前後の流れを考慮して、いちばん魅力が引き立ちそうなコードを選びます。パズルみたいなものですね。

実践例を示してみます。

画像7:コードづけのかんたんな例
コードづけのかんたんな例.m4a[AAC]

画像7の楽譜を見ながら、音源を聴いて響きを確かめてみてください。(楽譜はわかりやすさを優先して、コードの音符を転回形にせずに記しています。)

〈ドーレミ|ソーーー|ラーソラ|シーーー〉というメロディに、3パターンのコードのつけかたをしています。安定・一時安定・不安定の役割がわかりやすいように、色つきでマーキングしました。

1番目の例〈C―G―F―G〉は、基本の3種類のコードだけを使い、安定、不安定、一時安定、不安定、という流れをつくっています。不安定のコードから必ずしも安定のコードに進まねばならないわけではなく、このように一時安定のコードに寄り道することも多々あります。

メロディの1小節目の〈レ〉や3小節目の〈ソ〉は、コードに含まれない音で「非和声音」といいます。メロディにコードをつけることは、メロディのどの音が非和声音になっても構わないかを選ぶことでもあります。

ふたつ目〈F―C―Dm―G〉は、いきなり一時安定のコードから始まっていて、次の小節で一旦ホッと落ち着く感じに。そこから後半2小節は1番目の例とおなじく一時安定、不安定、という展開で、〈F〉の代理コードの〈Dm〉を当てている点に違いがあります。〈Dm〉から〈G〉に跳んで〈C〉に着地するパターンは、定番中の定番です。

もうひとつの例は、1小節ごとではなく、メロディの1音ごとにコードを変えています。〈C―G―Am―Em―F―C―F―G〉。あんまりコードチェンジを細かくしすぎると、メロディが伴奏のお付き合いをしているような印象になりがちです。演奏も難しくなりますし。でも、ゆっくりしたテンポの曲で非和声音が目立ちすぎてしまう場合や、ジャズやフュージョンなんかでキメのフレーズを際立たせる場合には、細かく変えるほうがちょうどいいときもあります。逆に、4小節くらいおなじコードで突っ走るほうがいいときだってあります。

多くの曲には転調が含まれます。転調前の調から見れば安定役となるコードを、転調後の調にとっての不安定役のコードとして機能させることもよくあります。また、短調の場合は音階が複数あるから、ダイアトニック・コードの扱いも長調より事情が込み入ってきます。この記事ではあくまでも、3和音のダイアトニック・コードを使って長調のメロディにコードをつける、という基本の部分をかいつまんで述べるにとどめました。――とどめたというか、これくらいで精一杯です。