マビノギのアップデートによるMML演奏への影響

オンラインRPG『マビノギ』で、演奏システムに関する(単なるコンテンツ追加ではない)大きな変更を伴うアップデートが、これまで何回かありました。「従来とおなじ演奏が再現できなくなった」のでどうするか、という視点で、演奏家向けに変更点をまとめているページです。マビノギMMLガイドの記事のひとつです。

ここではおもに、2023年1月の「64bitクライアントアップデート」(以下、64bit改変)について取り上げます。同年4月のアップデート(以下、2023年4月の「不具合修正」――とくに固有名が冠されていない小さなアップデートのようなので)による変更点も、その続きとみなして書き足しています。

2016年12月の「MusicQアップデート」(以下、MusicQ改変)などについても軽く触れます。

なお、以下の記事に頻出する「アタック」「リリース」「定位」「ノートオフ」などの用語について、なじみのないかたは、当サイトの記事向けの音楽用語集のページに項目があるので、そちらを先に読んでいただくとわかりやすくなると思います。

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64bit改変で変わったこと

2023年1月18日のアップデートで、ゲームクライアントが64bit対応となり、32bitのPC環境では動作しないようになりました。

どうやら、この変更にあわせてサウンドライブラリを別のものに差し替えたのだそうです。サウンドライブラリというのは、ゲーム内で音を鳴らすときに処理のあれこれを肩代わりする、既製のプログラム一式のことです。オーディオエンジンとも呼ばれます。しかし日本では、公式ページのおしらせにそのようなことはまったく触れられず、MMLでの演奏がこれまでと異なる部分があります、という説明もありませんでした。

仕組みが変われば、出る音も変わります。ちょっと確かめただけでも、かなりの破壊的変更があったのだとわかりました。

サウンドライブラリを新調することで、処理がスムーズになったり新しいことができたりするのだと思いますから、これからの新機能に期待してもいいのかもしれませんけれど、音の鳴りかたが変わったり、これまでできていたことができなくなったりすると、これまでの作品が意図どおりに再現できなくなる場合もあるわけです。

2023年4月19日のアップデートで、いくつかの「不具合」が「修正」され、新しい局面を迎えた事柄もあります。

把握しているかぎりの変更点をひとつひとつ取りあげていきます。その前に、忙しいかた向けに要点だけ箇条書きでまとめておきます。

過去のMMLで手直しが必要そうな点は……
  • 曲の末尾で音がぶつ切れになる場合は、(休符ではなく)無音の音符を末尾に入れる。
  • 〈メロディ・和音1・和音2〉各パートの音符がおなじ高さで重なっている箇所を点検。意図に反して発音が伸びたり音量が大きくなっている可能性あり。たとえば、v0の音符を重ねる無音調律はもう使えない。
  • リリースをカットする目的で、微かな音量の音符をおなじ高さで連打している箇所は、以前とおなじ演奏を再現するすべがないので、代わりの表現を探す。
実際に弾くときのおもな注意点は……
  • 音の届く範囲が、MusicQ改変後の期間より狭くなった。
  • 定位を左右に拡げにくくなり、モノラルで聞こえる状況が大半になった。
  • 後追い演奏をする場合は、開始タイミングをあらかじめ確認・調整しておく。

注意:大人数がいる場での検証は試行回数が限られ、ひとりでできる調査は範囲が限られます。以下の記事は、鵜呑みにしすぎないようおねがいします。また、ゲーム本体に関係ない要因、音声デバイス・音声ドライバーなどが影響していることもあり得ます。「わたしの環境では」と但し書きがなくても、その点は、お含みおきください。

全体的な音量・音質の変化

音量がすこし小さめになった

以前よりすこし演奏音が小さいようです。ざっと比べてみたところ、音量指定がv8で、以前のv7くらいの大きさ。v9なら、以前のv8よりすこしだけ小さめ。v14で、以前のv12くらいでしょうか。

MusicQ改変時と違って、楽器ごとにまちまちに変わったわけではなさそうですけれど、まだ断言はできません。DLSファイルに収録されている波形そのものに変更はありません。

ひとまず従来のMMLの音量指定は、実際に鳴らしてみて大きな違和感がなければ、そのままでよさそうです。単純に音量が下がったのではないので、次項でそのことを説明します。

中高音域がやや強くなった

以前は、ローパスフィルター(高音域の成分を下げる効果)がかかったような、やや籠もった音でした。そのフィルターのかかりかたが変わったのかどうか、改変後は、ドラムのハイハット類とかバイオリンの高い音とかが鋭く響く(キンキンする)感じがあります。そのぶん、低音域が以前よりすこし引っ込んだように聞こえます。MML作成ソフトで再生したときの音にやや近くなったのだとしたら、MML作成ソフトで聴くときとゲーム内で弾いたときとで音が違うなあ、という悩みも減ることになるかもしれません。

改変前後の違いを可視化する為に、演奏音源のスペクトログラムを載せました。横軸が時間を、縦軸が音の高さを表わし、色が明るいほど大きな音が出ていることを示しています。画像1が、64bit改変前(MusicQ改変後)の録音。画像2が、64bit改変後の録音です。どちらもおなじMMLの演奏。ただし、64bit改変後のほうが音が小さいので、全体の音量がふたつとも同等になるように、64bit改変後の音源は2.2dB(デシベル)増幅しています。

画像1:MusicQ改変後・「キミに便乗」の演奏音源のスペクトログラム
画像2:64bit改変後・「キミに便乗」の演奏音源のスペクトログラム

低音も高音も豊かに鳴る楽器編成ということで、「キミに便乗」(マンドリン・ドラムの2人合奏)を素材に選びました。

このページ上で画像を見比べてもよくわからないと思いますので、画像閲覧ソフトなりブラウザのタブなりを使って、ふたつの画像を切り替えながら、色の明るさの違いを確認してみてください。

64bit改変後のほうが、中高音域がやや強くなっています。超高音域の15kHz前後より上は、(再生デバイスの設定によって変わるのでしょうけれど、サンプリング周波数を44.1KHzに設定しているなら、このように)なだらかに抑えられています。一方、MusicQ改変後のほうは、超高音域を中心に、折り返しノイズが出ています。(折り返しノイズについてはここでは説明しません。改変前も改変後もおなじ条件下で録音して、このように違いが見られました。)感覚的な言葉でいえば、64bit改変後のほうが、素直に・おとなしく聞こえる傾向があります。単純に見れば改善点ですけれど、つくり手・聴き手にとって、それがいいことか悪いことか一概にはいえませんし、長年やっているひとほど、とまどう面もあると思います。

音割れしなくなった?

わたしのプレイ環境では、以前は、大きい音を出しても、-1.8dBFS(デシベル・フルスケール:音量の単位)あたりでリミッターがかかっていました。それ以上の大きさの演奏音は平らに抑えこまれ、歪んで、音割れに至りましたエリン音楽ひろば 2021年12月のページの「内容の掘り下げ」に「音割れについて」の項を立てているので、くわしくはそちらで)。改変後は、大きな演奏音を鳴らしても歪んだ音にならず、録音した波形のピークは、-0.1dBFSくらいになっていました。

どうも、演奏音の大きさにあわせて、音が歪まないように、音量が調節されているようです(コンプレッサーがゆるやかに効いているのでしょうか)。どのくらいの音量から調整が始まるかを探り当てることができるのか、それを知ってもMMLづくりに役立つのか、先述の「音量がすこし小さくなった」のがこの効果によるものなのか……よくわからないところです。

再生時の時間のゆらぎがなくなった

ゲーム内でおなじMMLを複数回演奏し、その録音を波形編集ソフトで並べてみると、以前は、(音飛びしていなくても)冒頭と末尾の間の長さがそれぞれいつも異なっていました。音符の発音タイミングが微妙に伸び縮みしていたのです。

全体で数ミリ秒くらいのずれですから、単独ではどうということはありませんけれど、合奏譜面を何回かに分けて録音してミックスするときには、各パートのタイミング(拍)をつねに揃えないといけません。数ミリ秒のずれでも困ることがありますから、何度も録音しておき、ずれの少ないテイクを採用していたのでした。当サイトやサウンドクラウドに載せているような演奏音源をつくるのも、けっこうたいへんだったわけです。

わたしの使っているPCが低スペックなので処理がもたついて、このようなずれが起こるんだろうとずっと思っていましたけれど、改変後は、ミリ秒どころか1サンプルのずれもなくぴったり揃うようになりました。サウンドライブラリの違いをいちばん実感したのがこの変化です。……とはいえ、高性能なPCなら、昔から1サンプルもずれずに録音できてたよ、といわれるかもしれませんから、実際のところはどうなのかわかりません。とりあえずわたしの環境では、以前より改善したということになります。

あくまでも、おなじMML演奏が毎回おなじように再生される、という意味で「時間のゆらぎがない」と書いたので、ひとつの演奏内の1拍1拍の長さについては別の話です。1拍ごとの長さは均一ではありません。64bit改変で変わったことなのかどうかわからないから、詳しいことは省きます。「同音連打・同音重ね」のところで取りあげたこまかい話とも関連していそうです。

楽器の音色の変化

楽器によってリリースが変わった

全部こまかくチェックできていませんけれど、リリース(音符の末端以降の音の消えかた)が、以前と違うようです。

フルートでいくつかの例を調べてみたら、リリースタイムはそんなに大差ないようですけれど、リリースの途中の音量が、改変後のほうが大きめでした。こういう場合、以前よりふわっとした音の消えかたになります。女声などもリリースが以前より大きめに聞こえます。ほかの楽器にもそういう変化がありそうですけれど、まだはっきりしたことはいえません。

逆に、ほぼ一瞬で消えるようになったものもあります。ロンカドーラの変化が顕著で、リリースタイムがたったの0.02秒になっているようです。ロンカドーラで表現していたマラカス音も、そのせいで感じがずいぶん変わってしまいました。その一例を音源で載せます。「木の芽どき」のロンカドーラのパートの一部分を、改変前後で比較した音源です。

64bit改変前後比較・木の芽どき_MabiMML-ロンカドーラ.m4a[AAC]

前半が2022年4月時点の、9秒以降が64bit改変後の音です。もちろん、弾いたMMLはまったくおなじ。64分音符くらいの短さで発音を繰り返している内容です。以前はリリースがすこし残って、シュゥッ、シュゥッ、という響きだったのが、改変後の音はシッ、シッ、という感じで、まるでクローズドハイハット。このままでは、か細すぎて合奏だと埋もれてしまいます。ただ、アタック以外の音が抑えられるおかげで音高感もなくなるから、すこし発音を長めに調整すれば、響きは多少変わるにせよ、マラカス役として使える見込みは、まだありそうです。

もちろん、マラカス以外の用途でも使うわけで、ロンカドーラを含む小編成の合奏曲(またはソロ)での影響は甚大です。

リラやシロフォンのアタックの一部がつねに欠けるようになった

リラ、シロフォン、チューバが、すべての音量で、冒頭の波形が欠けるようになってしまいました。

マビノギの楽器の詳細のページで触れているように、64bit改変前(MusicQ改変後)は、リラならv15で、シロフォンならv10以上で、ほんの一瞬(0.01秒程度)、アタック(発音の立ち上がりの部分)が欠けていました。なんとなく詰まったような音に聞こえます。それで、できるだけリラはv14まで、シロフォンはv9までの範囲を使うようにしていました。

現在は、音量指定にかかわりなく、リラとシロフォンとチューバのアタックが、つねに欠けてしまっています。なんでわざわざこんな変更をするのかと思うのですけれど、なにしろリラやシロフォンは実装時期がおなじで、登場したころは正しい音高が鳴らない楽器でしたから、当時の実装のしかたが下手で、それがいまだに足を引っ張っているのでは、といぶかしんでしまいます。音高が直ったころのリラは万能楽器だったのに、MusicQ改変で音量が貧相になり、64bit改変でさらにハンディキャップをつけられて、どんどん劣化しているようで残念なことです。

チューバに関しては、このことによる音色面でのマイナス点はとくにないと思います。ちょっとおとなしい印象になったかもしれませんけれど、次に述べるプチプチノイズが鳴らなくなったことにくらべれば、ほとんど気づかないような違いです。もしかしたら、チューバも以前からアタック音が欠ける現象があったのかもしれません。もともとわたしはチューバを使うことが少なく、v15で鳴らす機会はなおさら少ないので、気にしたこともありませんでした。

ところで、波形の冒頭0.01秒が「削除されて発音される」のではなくて、「無音化されて発音される」ことに注意です(チューバとロンカドーラでおなじ長さ・高さの音を別々に鳴らし、発音開始位置のほうを揃えて波形を比較したところ、チューバのリリースが0.01秒ほど早く始まっていた。発音開始のほうがずれていると考えるのが妥当)。つまり、アタックが遅れる、0.01秒遅れて音が出る、ということになります。ちなみに、テンポ120のときの64分音符の長さは、0.03秒少々です。1tickか2tickくらい、音符を前倒ししたほうがいいかもしれません(tickは、MIDIにおける時間の最小単位)

0.01秒くらいどうってことは……と思うかたもいるかもしれませんけれど、アタック音は重要で、その0.01秒が欠けたことで、きらびやかさが失われることにもなるのです。わかりやすい例かどうかわかりませんけれど、「つぼみ」のイントロのリラパートを、改変前・改変後で聴き比べる音源を載せてみました。あえて音量はそのままにしているので、改変後のほうがすこし小さめです。

64bit改変前後比較・つぼみ_MabiMML-リラ.m4a[AAC]

それぞれの1音目のアタック部分の波形を並べてみました。画像3です(波形編集ソフト「Audacity」の画面)

画像3:リラのアタック音の欠けを示した波形表示

ギザギザの形を手がかりにしておなじ部分を揃えると、このとおり、64bit改変後のほうは最初の約0.01秒ぶんが鳴っていません。なお、そのあとの部分にも波形のギザギザ具合が異なるところがありますけれど、これは先述した音質の違い(音域ごとのバランスの違い)によるものだと思います。

チューバのプチプチノイズが改善された

チューバは、どうやってもノートオフ時のプチプチノイズから逃れられませんでした。いまはノイズが解消されました。なお、同音連打時のプチプチノイズのほうについては、次の項で取りあげています。

前項の続きも兼ねて、チューバの波形の画像も載せておきます(画像4)。こちらは、DLSファイルに収録されているサンプルも並べてみました。(本件と関係ありませんけれど、0dBFSに届いている箇所に、赤い縦線が表示されています。DLSファイルのチューバのサンプルそのものが、わずかに歪んでいるということです。)

画像4:チューバのアタック音の欠けを示した波形表示

以前は、リリースがほぼ一瞬で終わり、波形に無理が生じ、プチプチノイズが頻繁に鳴っていたけれど、64bit改変後は、最小限のリリースタイムが確保されて、きれいに鳴るようになった、と説明ができます。その一方で、冒頭部分が無音になっているのが、この画像でも確認できます。

同音連打・同音重ね

ここで「同音連打」とは、ひとつのMML内で、おなじ高さの音符を隙間なく続けて鳴らすことを指します。

また、「同音重ね」というのは、ひとつのMML内の〈メロディ・和音1・和音2〉のいずれかのパートに置いている音符と重なる位置に、おなじ高さで、別のパートに音符を置くことです。一般的には「重複ノート」などと呼ばれるもので、わたしは(技法としての意味合いも含めて)同音重ねと呼んでいます。

合奏譜面のそれぞれのMMLをまたいで連打したり重ねたりすることは、それらに含まれませんし、本稿でとくに触れるべき問題点もありません。幻想のコーラスつきバフ演奏の、〈メロディ・和音1・和音2〉と〈歌〉パートとの関係も同様です。

64bit改変前は、同音連打・同音重ねについて、楽器や音域によって2種類の振る舞いが混在していましたマビノギの楽器の詳細のページ参照)。改変後は、すべての楽器でおなじ振る舞いになっています。

そして、2023年4月の「不具合修正」で、同音重ねをしたときの振る舞いがまた別物になりました。

画像5でまとめて図解してみました。(2023年4月の「不具合修正」にあわせて画像をつくり直しました。以前の画像ファイルも残しています。)こまかい注意点や検証内容とあわせて、それぞれ説明していきます。

画像5:同音連打・同音重ねの鳴りかた

同音連打のプチプチノイズがなくなった

同音連打したときに、フルートなど一部の楽器で出ていたプチプチノイズがなくなりました。これで、音符の間に短い休符を挟んでノイズを回避しなくてもよくなりました。

また、同音連打しようがするまいが目立っていたチューバのプチプチノイズも改善されたのは、前項でも触れたとおりです。わたしたちはプチプチノイズからついに解放されたのです。

画像5のなかで説明している内容も含めて、音の鳴りかたをまとめると、同音連打は、

ということになります。2023年4月の「不具合修正」の後も、この点に変化はありません。

ふつうなら「改善点」と捉えると思います。しかし、直前の音がスッパリと切れるタイプの音色の「リリースを切る」技が、この変更のせいでできなくなってしまいました。わずかに遅らせたv1の音符を同音連打して、リリースを切ることで実現していた、ウクレレノイズドラムや、エレキのミュート音とかが出せなくなったのです。

ウクレレノイズドラムの例として、「紅させば都」のウクレレAの演奏を、64bit改変前(2019年録音)と改変後とで、おなじ部分を15秒ほど抜き出した音源を載せます。

64bit改変前後比較・紅させば都_MabiMML-ウクレレA.m4a[AAC]

ウクレレノイズドラムは、ウクレレの低音を大きい音で鳴らした直後に、v1の音符を続けることで、ノートオフ後のリリースをもぶつ切りしつつ、同音連打のノイズによってぺちぺちとした音を出す、という荒技です。音源の前半15秒がその音です。一方、16秒からが改変後の音です。まったくおなじMMLなのに、演奏結果がまるっきり異なっているのがこれでわかると思います。ノートオフ後のリリースがそのまま残っていて、これでは単に64分音符でスタッカートのようにして鳴らしているも同然です。

もうひとつ、「きゅうりの酢の物」のエレキAとエレキBを同時に鳴らした音源です。

64bit改変前後比較・きゅうりの酢の物_MabiMML-エレキギターAB.m4a[AAC]

こちらも、v1の音をすぐさま同音連打することで、リリースを消し、きゅっ、きゅっ、というアタック音だけを鳴らしています。改変後の音は見る影もありません。リリースの音がふわふわと残ってしまっています。

〈メロディ・和音1・和音2〉をまたいだ同音連打については、あとで取りあげます。

同音重ねをしたときの音符の扱いが変わった

つづけて、同音重ねについて見ていきます。64bit改変直後は「同音重ねがほぼできなくなった」という見出しでした。4月に再び大きな変化がありました。

画像5のなかで説明している内容も含めて音の鳴りかたをまとめると、同音重ねは、

ということになります。なにいっているんだか自分でもよくわからなくなるところですけれど、画像5で示したピアノロールの音符バーを見れば、多少はピンとくると思いますので、大目に見てください。

64bit改変前後で、演奏結果に大きな違いが出る点だったので、いろいろと調査したのですけれど、2023年4月の「不具合修正」でもとどおり……ではなく、またもや新しい仕様に変わってしまいました。

音符が重なっているかどうか、気を配る必要がもはやなくなり、どのように音符を置いても、音符が途中で切れなくなりました。

一例を挙げると、画像6のように、すこしずらしておなじ音型を小さめの音で重ねる手法が、1本のMMLで楽にできるようになりました。以前は、2人以上で手分けして弾く必要がありました。

画像6:メロディにディレイを重ねたピアノロール

シンプルなのが一番、めでたしめでたし、といえたら幸せでしたけれど……。逆にいえば、別パートでわざと重ねて音符を切る技が使えなくなったわけです。

たとえば、4拍子の1小節目の頭にだけ、64分音符の長さの音符を毎回置きたいとします。ふつうに1パートに書くと〈L64cr9r8r2.cr9r8r2.cr9r8r2.cr9r8r2.〉……というような形になります。これを2パートぶん使って、〈L1cccc〉と〈r64L1v0cccc〉というふうに無音の音符を64分休符ぶん遅らせて重ねる形にすると、少ない文字数で同等の演奏ができるし、ずらしかたを加減するだけで発音の長さも調節できたわけです。こういった手法がもう使えません。

無音の音符を重ねるタイプの無音調律マビノギMMLの調律のページ参照)もできなくなりました。過去のMMLを弾くときは、同音重ねの箇所について点検や手直しが必要です。

ほんの数ヶ月で古くなってしまった以下の記述は、とりあえず、飛ばしやすいように折りたたみ表示にした上で、そのままにしています。こういう変遷をたどってきた、という記録としていくらか残すほうがいいかな、と考えるのですけれど、過渡期の記述としては些細なことに立ち入りすぎの感もあるから、そのうちばっさり整理するかもしれません。

64bit改変直後の時点での古い記述(折りたたみ)

こちらは同音連打と対照的に、改変前の同音重ねができない楽器のほうに近い振る舞いになっています。おなじタイミングで音符を重ねた場合、〈メロディ・和音1・和音2〉の順で先のパートが一瞬だけ鳴ります。たとえば、〈メロディ〉にv8の音符、〈和音1〉にv5の音符が、おなじ高さ・おなじタイミングで配置されているなら、アタックの瞬間にだけ両方をあわせた音量が鳴り、すぐにv8の音符のほうはリリースになります。そしてv5の音符の音だけが残ります。

「アタックの瞬間に一瞬だけ発音」というのをもうすこし具体的に書くなら、音符の長さがほぼゼロ同然で、アタックと同時にリリースが始まっているかのような発音です。(これは、次項で説明する音切れの発音とも同様です。)

同音重ねの例として、「中長期的スパンでいこう」のチェロパートを取りあげます。16秒までの前半が改変前、17秒以降が改変後の音です。

64bit改変前後比較・中長期的スパンでいこう_MabiMML-チェロ.m4a[AAC]

おなじ音高を2音、同時に重ねたり、すこしずらして重ねたりしています。同時に重ねるのは音量補強、すこしずらすのは響きに変化をつける狙いがあります。改変後のほうの演奏音は、アタックだけ音量が上がって、そのあと急に小さくなってしまっています。

わかりやすそうだったから、この曲から例を拾いましたけれど、この曲の場合、実際は音量指定の値にまだ余裕があるから、単音に書き直してもなんとかなるかもしれません。(MusicQ改変よりさらに昔は、チェロがやや小音量だったので、こういう手法を採っていたのでした。その名残です。)でも、音量に難のあるバイオリンやリラが主旋律を受け持つ曲で、同音重ねができなくなったのは致命的です。

しかも、リラとチューバは、ほかの楽器と異なり、「一瞬だけ発音」の場合にまったく音が出ません。(これも前述の「0.01秒遅れて音が始まる」根拠のひとつになります。)だから、同時に同音重ねしても、違いがまったくありません。また、ロンカドーラなどの場合は、一瞬だけのアタック音が小さすぎて、パッと聞くかぎりだと、重なっているのかどうかがほとんどわかりません。

一方、同時に重ねたときにアタックが強調される点を活かせば、音色づくりの新しい手法を生みだすこともできるでしょう。また、ドラムのバスドラムやサイドスティックなど、アタックだけでも重なればよいような音色なら、音量を持ち上げる目的での同音重ねが引き続き使えそうです。

無音調律マビノギMMLの調律のページを参照)を弾いて演奏成功したときに、最初に一瞬だけ音が出るのも、v0の音符を同時に同音重ねした結果、v0の音符のほうが伸びて、調律音のほうが開始位置でのみ発音されているからです(改変前は、なにも音が鳴らないことが大半で、たまに一瞬鳴る場合もありました)

リリースの長い音色(ハープなど)だと、ふつうに鳴っているか一瞬だけ発音されているか、違いがわかりにくいかもしれません。

64分音符を使ってパッ、パッ、と短く発音させるかわりに、(無音調律とおなじように)〈メロディ・和音1・和音2〉の順で、あとのパートにv0の音符を同時に置くことで、もっと短い発音ができますから、うまく応用できればいいですね。

ちょっと上級者向けの未整理なメモになりますけれど、1tickだけずらした音符を同音重ねする例について見てみます。ここでは、v15の音符にv0の音符を重ねてみます。まず、うしろにずらす場合。

MML@r64v15crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,r54v0crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

これを弾くと、〈メロディ〉パートのv15の音符が、すぐさま〈和音1〉パートのv0の音符で切られて、ピッ、ピッ、と一瞬だけ鳴ります。意図どおりの演奏結果です。ところが、パートの順番を差し替えて、たとえば〈メロディ〉の中身を〈和音2〉に移すと、一瞬だけ鳴ったり音が伸びたりと、不安定になります。

では、1tickだけ前にずらしたv0の音符を同音重ねすると……

MML@r54v15crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,r64v0crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

これも、一瞬だけ鳴ったり音が伸びたりと、不安定になります。そして、さっきと同様に〈メロディ〉の中身を〈和音2〉に移動してみると、意図どおりにすべての音が伸びます。伸びるといっても、1tick手前でv0の音符が終わって、v15の音符がそこでちぎれてるから、1tickだけ短くなります。

どうも、1tickずらしているのに、同時に同音重ねしているかのような処理になってしまうことがあるように見えます。64分休符を使って6tickずらせば、このようなややこしいことはたぶん起こりません。64bit改変後は、ごくわずかなtickの差を使った技を避けたほうがよさそうです。

次項の「パートをまたいだ同音連打」の実験結果と共通する部分が多いし、さらに調べれば、もっとうまい説明ができるかもしれません。

パートをまたいだ同音連打で音が切れるかどうかが変わった

64bit改変直後は「パートをまたいだ同音連打で音が切れやすくなった」という見出しでした。

1本のMML内で〈メロディ・和音1・和音2〉の各パートをまたいでおなじ音高を連打すると、条件によっては音が鳴らない(あるいは一瞬だけ発音されて切れる)ことが昔からありました。

以前は、「おなじ音高の音符同士が、〈和音1・メロディ〉、〈メロディ・和音2〉、〈和音2・和音1〉のいずれかの順にぴったり隣接していて、先行の音符が鳴っているあいだ、後続の音符側のパートに音符が置かれていない場合」が該当していました。大昔は法則がさらに異なっていたかもしれません。

64bit改変後から2023年4月の「不具合修正」までは、「おなじ音高の音符同士が、〈和音1・メロディ〉、〈和音2・メロディ〉、〈和音2・和音1〉のいずれかの順に、ぴったりまたは数tick程度あけて隣接している場合」に、後続する音が一瞬しか鳴りませんでした。このように法則が変わったので、以前は正しく鳴っていた譜面が、ちゃんと発音されなくなっている場合がありました。しかも、演奏人数によっても音の切れかたが変わるようでした。

逆にいえば〈メロディ・和音1・和音2〉の順で隣接しているときは、音が正しく鳴りました。

2023年4月の「不具合修正」の後は、先述のとおり、各パートの音符が別パートの音符を邪魔しなくなって、どのように音符を置いていても音切れしなくなりました。

ピアノロールで例を示した画像7の左側、「1」のように置いても問題がなくなり、右側の「2」のようなケアに神経をとがらせる必要もなくなりました。

画像7:同音連打のピアノロール

2023年4月の「不具合修正」を経たいまとなっては過去の話となった考察を、折りたたみ表示にしました。(折りたたみのなかに、さらに重箱の隅をつつく折りたたみの記事を含めているありさまで、そのへんのくだりはいまや無意味すぎるのですけれど、前の項で軽く触れた「1拍の長さは一定ではない」話にも絡んでいるので、いまのところそのままにしています。)

64bit改変直後の時点での古い記述(折りたたみ)

たとえば、つぎのMMLを演奏するとします。

MML@rcrc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

〈メロディ〉と〈和音1〉両方のパートに、4分音符と4分休符の繰り返しで半音ずつ上がっていくおなじフレーズがはいっていて、〈メロディ〉パートの冒頭にだけ4分休符を加えています。ピアノロールで図示するほうがわかりやすいと思いますから、画像7を用意しました(MIDIシーケンサーの「Domino」の画面です)。画像の左側、「1」のような形で音符が並んでいます。

入力パートに関する先述の条件にあてはまる場合、赤いほうのバーで示された音符が一瞬しか鳴りません。いま挙げたMMLでは、〈和音1〉の音符の末尾にくっつく形で〈メロディ〉に音符が置かれています。画像の青いバーが〈和音1〉の音符、赤いバーが〈メロディ〉の音符に相当します。このような場合、〈メロディ〉の音符は一瞬しか発音されません。

もし、画像の右側「2」のように、おなじ音高の音符の間に隙間を空ければ、ちゃんと鳴るようになるかというと、以前はそうだったのですけれど、64bit改変後、1tickや2tickくらいの狭い隙間ではだめな場合があります。さっきのMMLをちょっと書き換えて実験してみました。重箱の隅をつっつくマニアックな内容なので、折りたたみ表示にしています。対処法だけ知りたいかたは飛ばしてOKです。

実験内容(折りたたみ)

まず、次のMMLは、〈メロディ〉パートの最初に〈r5r18〉というふたつの休符を入れています。合わせて、4分休符より1tick長くなります(r4とr5r19はおなじ長さです。r19よりr18のほうが1tick長くなります)。これで、パートをまたいでの音符の隙間は1tickになります。

MML@r5r18crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

これをソロで演奏してみると、メロディパートの〈d〉〈d+〉〈f+〉〈g〉〈a+〉〈b〉の音符が一瞬で切れてしまいます。切れる音符とちゃんと鳴る音符とが交互に現れています。何回弾いても、どの音符が切れるかは固定されています。バフスキルやフリースタイルジャムで演奏しても同様です。

ところが、(演奏パートナーラグリンネと)2人合奏すると、〈c〉〈c+〉〈e〉〈f〉〈g+〉〈a〉の音符のほうが切れるようになります。また、ひとりでパーティを組み、ひとりで合奏すると、〈c+〉〈d〉〈f〉〈f+〉〈a〉〈a+〉の音符が切れます。ソロと合奏とで結果が異なるのです。3人以上の合奏だと結果がさらに異なる可能性すらあります。

ここで念の為に書き添えておくと、「〈d〉〈d+〉……は、ソロで弾くと切れる」という意味ではありません。何番目の音符が影響を受けたがわかりやすく記述できるように、〈c〉から〈b〉までを順番に並べたMMLを使っているだけのことで、音符をほかの高さに変えようとも、何番目の音符が切れるかに変化はありません。しかも、これから書くように、ちょっとMMLを書き換えるだけで、どんどん結果が変わっていきます。

MMLのテンポを変えると、切れる音符の現れる周期も変わります。たとえば、つぎのMMLでは、T116を冒頭につけ足しました。

MML@t116r5r18crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

これをソロで弾くと、メロディパートの音符すべてが切れます。2人合奏ではすべて鳴ります。ひとり合奏では〈g〉以降が切れます。

テンポによって結果が違う、と仮説を立てる前に、つぎのMMLを弾いてみましょう。

MML@r5r18t116crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

さっきの例は冒頭にテンポ指定がありました。こちらは、最初の休符〈r5r18〉のあとにおなじ値のテンポ指定があります。最初を除いてテンポはさっきと一緒なのですけれど、これをソロで弾くと、メロディパートの音符すべてちゃんと鳴ります。2人合奏だと、〈c〉から〈f+〉までが切れます。くだくだしくなるのでもう書きませんけれど、以降の例も、ソロと合奏とで結果が変わります。

別の例です。両方のパートの頭におなじ長さの音符か休符を足してみても、音切れの現れる周期が変わります。つぎのMMLは、テンポ指定は入れず、かわりに8分休符を冒頭に加えました。これまで同様、隙間は1tickです。

MML@r8r5r18crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,r8crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

この場合、ソロ演奏では〈c〉〈c+〉〈e〉〈f〉〈g+〉〈a〉が切れます。「その2」のときと結果が違いますけれど、鳴らない・鳴らない・鳴る・鳴る、と2音ごとに変わる周期性は共通しています。

どうも、演奏開始からどのくらい経過したかによって、音切れするかしないかが変わっているように見えます。ソロと合奏とで結果が違うのも、合奏開始時に(まるで休符が加わるかのような)遅延があることの表われでしょう。

次の例では、〈r5r18〉のところを〈r5r17〉に書き換え、音符間の隙間を2tickにしてみました。

MML@r5r17crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

これをソロで弾くと、音が切れなくなります。しかし、いろいろ書き換えてみると、冒頭に〈T125〉を加えてテンポを速めたり、あるいは両方のパートの冒頭に〈r12〉の休符を加えたりした場合、切れる音符がいくつか現れました。

傾向として、テンポがゆっくりなほうが、音切れの起こる頻度が下がるようです。1tickの隙間でも問題ないようなテンポがどのくらいなのか気になります。残念ながら、テンポ61でさえ、次のMMLの2人合奏で音切れが確認できました。

MML@t61r5r18crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

テンポ60未満なら問題ない可能性がありますけれど、冒頭に休符を足したりすればまた結果が変わるし、そもそも実験に使っているMMLはとても短いものであって、2分、3分と弾き続けて1音も切れない保証もありません。

では、何tick空ければ、どんな場合でも安全になるのでしょうか。つぎのMMLは、5tickの隙間を空けた例です。

MML@t255r5r15crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr,crc+rdrd+rerfrf+rgrg+rara+rbr;

テンポの上限は255です。このMMLのテンポの値のみ書き換え、200から255まですべて試し、さらに200未満の値についても10の倍数だけに絞って調べてみたところ、音切れする例はありませんでした。また、テンポは255のまま、冒頭に休符をひとつ入れるパターンをすべて試したところ、これもまた問題はありませんでした。ただしソロ演奏で確認しただけなので、合奏でどうなるかは心もとないところです。さっきとおなじ理由で、これで大丈夫と断言はしようがありません。

ちなみに4tickの隙間では音切れします(〈r5r15〉を〈r5r16〉に書き換えればテストできます)。テンポ200未満なら4tickでもめったに音切れしないかもしれませんけれど、つくり手・弾き手としては「めったに」でも困ります。

……というわけで、音符の隙間が短すぎると、正しく発音されたりされなかったりします。なにか周期性があるようで、演奏開始からどれくらい経過しているかが関係していそうですけれど、これ以上はお手上げです。

しかも、独奏と合奏とでその結果が異なりますから、「ソロでテストしてみて音切れがなければOK」というのは合奏譜面では通用しない、ということになります。合奏テストができて、たくさんの音のなかから音切れがちゃんと見つけられるひとなら別として、「音切れの可能性がある音符の置きかた」は、ひたすら避けるのが賢明です。

5tickの隙間で音切れする例が(上記の実験では)見つからなかったということは、おそらく64分休符(6tick)の隙間があれば、ほとんどの場合問題が起きないでしょうし、せめてそうであってほしいところです。

結論、「おなじ音高の音符は、おなじパート内で連打する」のを鉄則にするのがやはり一番の対処法です。仕様が二転三転しても、それならたいてい間違いは起こりません。さりとて、それができない場面だってありますから、「音符間に64分休符以上の隙間をあける」か「2本以上のMMLに分ける(ソロ譜面なら2人合奏譜面にする)」こともあるでしょう。もしそれもできず、やむを得ずパートをまたいで音符をくっつけるのなら、「おなじ音高の音符を〈メロディ・和音1・和音2〉の順にのみ配置」しなければいけません。

テンポ指定

休符の直後のテンポ指定が正しく機能するようになった

長年、マビノギMMLの特徴のように思って付き合ってきた「休符の直後にテンポ指定を置くと、直前の休符もテンポが変わってしまう」現象が修正されました。

これで、たとえばつぎのように、テンポの前に休符を置きたい場合に無音の(v0の)音符で代用する、という細工が要らなくなりました。

MML@l1rrrv0ct160r4l8cdefg;

……と、思っていたら、打楽器のモーションについては、テンポの直前の休符が無視されています。休符が飛ばされるぶん、モーションだけが前倒しになるということです。64bit改変前がどうだったのか、昔からそうだったのかが、いまひとつわかりません。

見た目を気にするなら、打楽器パートには無音の音符を残しておくのもいいかもしれません。打楽器に関連した妙な挙動が、2023年4月の「不具合修正」でいくつか直ったようですけれど、これは当分直らないのでしょうか。

テンポ指定の直前の休符のところで、ほかのパートに音符がどう置かれているかによって、テンポの変わるタイミングも違っていました。それがなかなか複雑で、解説記事を書くならそのへんをクリアしないといけない気がして、とはいえv0の音符を使って対処しているかぎりはべつに必要のない情報だし、などとぐずぐずしていてまとまらなかったのですけれど、もはやそれも過去のことになったから、取りあげる必要もなくなりました。よかった。

冒頭と末尾とでテンポが異なる譜面で合奏すると、演奏開始タイミングがずれた(修正済)

悩ましい一件でしたけれど、幸い、2023年4月の「不具合修正」で正常になりました。これも、古い記述をそのまま残して折りたたみ表示にしています。

64bit改変直後の時点での古い記述(折りたたみ)

冒頭のテンポと末尾のテンポとが異なるMMLで合奏すると、合奏リーダーの演奏開始タイミングがずれるようです。テンポが異なっていても症状の出ないMMLもあります。合奏人数によっても変わるのかもしれず、くわしいことはまだわかりません。

末尾のほうがテンポが速いと、リーダーの演奏開始も早くなり、逆にテンポが遅いと、演奏開始も遅れます。ふたりでおなじMMLを弾いてもずれます。

合奏リーダーが演奏するMMLの「末尾にテンポ指定を足して、冒頭とおなじテンポで終わる形にする」という応急処置法がすでに発見されています。ひとまず、ずれる場合はそのようにしてみましょう。

たとえば、冒頭にテンポを入れず、調律などのあとで曲本篇のテンポを指定している場合なら、冒頭が既定値のT120になるので、末尾にもT120を入れて戻す、ということになります。もちろん、曲中でテンポを変更している場合も、冒頭のテンポとおなじ値を指定します。末尾のテンポ指定のあとに音符や休符を入れる必要はありません。

冒頭のテンポと末尾のテンポが異なるMMLなんて、まれな事例でもなんでもなく、こんな手当てをしないとまともに弾けない世界が続くとしたら、哀しいことです。近いうちに修正されると見込んで(ちょっと楽観的かも)、しばらくは、直近で弾くつもりのMMLだけ点検すればいいかなと思っています。そういう意味でも、あまり突っ込んで調べる気がなかなか起きません(というより合奏に関する調査は、ひとりでは限界がありますし……)。また、冒頭と末尾とで少ししかテンポが違わない場合に、実際には微妙にずれていても、耳で聴いてわからない程度でしかないこともあります。支障なければそれでいいともいえますけれど、つくり手としては、なんとも落ち着かないところです。

なお、フリースタイルジャムの場合、このずれは起きません。

同時に演奏できる人数・音数

17人以上での合奏で音がすべて鳴るようになった?

少なくとも64bit改変以前は、演奏人数が(幻想のコーラスも1人と数えて)16人を超えると、16人ぶんからあふれたぶん、どれかのパートが鳴らなくなっていました。

2024年2月現在、ラグリンネを含めた18人合奏や、(合奏のように各自楽譜を持った)18人でのフリースタイルジャムをしてみたところ、わたしの環境では音が消えることなく再生されました。

これまでわたしがやってきた16人超えの演奏について箇条書きにします。

検証用の合奏時にメンバーから音抜け報告があった、というのが気になるところです。合奏リーダーのみ正しく聞こえる、などの可能性もありますし、いまのところ「?」つきの仮説ということになります。

実際に同時演奏人数の上限が緩和されているのだとすると、それが64bit改変以降のことだというのはほぼ間違いありません。ただ、それが2023年の1月以降なのか4月以降なのか、あるいはべつのタイミングのパッチでなのかは、よくわかりません。なにしろ、大人数の合奏やフリースタイルジャムで「すべてのパート・すべての楽器が鳴っている」ことを確認することが難しかったので、なかなか検証できませんでしたし、しようともあまり思っていませんでした。

18人までの合奏が(わたしの環境で)成功したわけですけれど、それでは、最大で何人まで同時に演奏できるのか、ということが気になります。残念ながら判明していませんけれど、次項ですこし仮説を書きます。

なんにしても、最大でいくつの音が同時に出せるのかすらわからない環境下で、MMLをつくって弾かねばならない、というのは不幸なことです。シンセサイザーだったら「最大同時発音数」の明記は当たり前です。あえて詳細を伏せて「謎解き」させたいのでなければ、そのくらいの仕様(の変更)はきちんと公式で告知してほしいなとつくづく思います。

なお、わたしが確認できたのは、それぞれの演奏者が別々の楽譜を持って弾く、という事例ですから、たとえばフリースタイルジャムで、主催者の楽譜1本をみんなで弾く、という場合でもおなじことがあてはまるかはわかりません。

幻想のコーラスが64本まで重ねられる

幻想のコーラスをたくさん重ねたときの、64bit改変より昔の振る舞いについては、エリン音楽ひろば 2021年11月の「内容の掘り下げ」の節に書いているような方法で検証して、16本まで重ねられるし、コーラス1本が合奏人数ひとりぶんに相当する、と結論しました。

2024年1月から2月に調べたところ、64本まで鳴るようになっていました。

誰でもできる検証のしかたとしては、1時間ぐらい続くような長いMML(末尾に無音でいいので音符を置く。休符だけではだめ)を何度も重ねていき、64本鳴らしてから、なにか楽器を弾いたり幻想のコーラスをさらに重ねたりしてみると、その音が出ないことがわかります。

図を入れて説明したのが画像Aです。前項の合奏人数の仮説も盛り込んでいます。

画像A:幻想のコーラスは何本重ねられるか(そして合奏人数の仮説)

同時に鳴っている幻想のコーラスのいずれかが完走して64本より少なくなると、また演奏を(64本になるまで)上乗せできるようになります。

幻想のコーラスを63本重ねている状態で、1本の楽器で和音を弾いたら正しく鳴るので、複数の演奏による「最大同時発音数」は64音にとどまらないことになります。

ちなみに、60本前後から、効果音が複数鳴るときにぎくしゃくするようになりはじめ、63本重ねた時点で効果音がまったく鳴らなくなり、64本重ねるとBGMも無音になります。演奏と効果音とBGMとで、チャンネル(と呼ぶべきかわかりませんけれど)を取り合う仕組みなのでしょうか。

65本目以上の、いわば「順番待ち」の幻想のコーラスは、64本のなかで空席ができたタイミングで、途中から再生されます。以前ははじめから再生されていました。

幻想のコーラス1本が合奏1名ぶんに相当するのかについては、この調査だけではなんともいえません。

それに、幻想のコーラスは普通の演奏にくらべて特殊なところが多いから、幻想のコーラスが64本重ねられたからといって、「64人合奏ができる」と短絡的に結びつけるのは早とちりになりそうです。でも、できる可能性はあります。ただし、ひとつの合奏パーティでは、16人全員がラグリンネを使う32人合奏がシステム的に限度ですし、そのようなメンバーを集めるのも困難です。フリースタイルジャムならできるのかもしれません。

1本の楽器の最大同時発音数は64音?

さらに確信が持てない話ですけれど、1本(ひとり)ごとの最大同時発音数についてもいちおう推測できました。これもおなじくエリン音楽ひろば 2021年11月の「内容の掘り下げ」の節に書いたように、残響音が長時間伸びる音色を用いて、一気にジャラララランと鳴らして、「ノートオフ後の残響[リリース]音」を大量に重ねることで、1本の演奏での「最大同時発音数」を調べてみました。

件の記事では「200音程度の残響音は問題なく同時に鳴りました」と書きました。しかし、2024年2月時点では、リリースが65音以上重なると、先に鳴らした音がとぎれていました。

ラグリンネと一緒に弾いてみても(別々に独奏)、それぞれが64音以内に限られていたので、あくまで1本ごとの最大同時発音数のようです。

合奏人数がもっと増えると、各楽器ごとに割り当てられる同時発音数が減っていくのかもしれず、そこまではわかりませんけれど、仮にそうだとしても充分ゆとりがあるように思います。シロフォンやハープのようなリリースの長い音色で全音域の音符を一気に鳴らすのでもないかぎり、最大同時発音数を超えて音欠けすることを心配する必要はなさそうです。

演奏時の操作感や再生のされかた

演奏を開始してからMMLが再生されるまでが短くなった

スキルやアクション、作曲スキルウィンドウや吟遊詩人掲示板の再生ボタンも含め、全体的に、MMLの再生開始が早くなったようです。後追い合奏(幻想のコーラスの併用含む)の際には、これまでと感覚が変わることになるので、注意が必要のようです。合奏のレスポンスが早くなったか遅くなったかについては、また別の話のようです。

これは、幻惑の演奏スキルやオルゴールを用いた演奏にも大きく影響します。幻惑の演奏スキルの使用中は、演奏が反復します。たとえば40秒ぴったりで終わるように書いたMMLを弾くと、開始が早くなったぶん、最後が余って、冒頭部分がすこし反復されてしまうことになります。また、オルゴールの反復時のラグも短くなっています。これまで数品つくってきたオルゴール向けのMMLでは、反復時にちょっと間が空くのも計算に入れて、末尾の音符の長さを調整していましたし、とくに「G-Zero R」のような、オルゴールの反復を用いた合奏では致命的です。


また、ゲーム起動後に最初に演奏をした(聴いた)瞬間に、ソロ演奏でも(バフスキルなどでも)、はっきり知覚できる程度のフリーズが起きます。これはわたしのプレイ環境が貧弱なせいに過ぎないかもしれません。どうも、音色ファイルの読み込みによるフリーズのような感じがします。音色ファイルは4つに分かれているので、たとえばリュートを最初に弾いて、その次にドラムを弾いて、次に歌を唄うとすると、リュートとドラムと歌それぞれ、音色の収録されているファイルが別なので、いずれも1回目の演奏開始時に一瞬固まります。

演奏会などで弾くときには、前もって農場などでソロ演奏を一度しておくほうがいいような気がします。

項目を立てるほどの確証がないのですけれど、合奏時のタイミングずれがMusicQ改変後よりも起こりやすくなっているかもしれません。いまのところ、12人合奏をリーダーで1回弾いたことがあり、そのときも楽器によって微妙なずれがありました。それだけなら以前もたまにあったので判断しかねますけれど、演奏パートナーラグリンネとの2人合奏でおなじ音を鳴らしてみたときに、タイミングが揃わない場合がすこし(かなり)増えているような印象があります。

打楽器の演奏モーションと音の同期が悪くなった?

打楽器(太鼓類、シロフォンなど)のモーションと音のタイミングを見ると、ソロ演奏のときはだいたい一致しているものの、演奏パートナーとの2人合奏で、音がモーションよりやや遅れています。以前も、人数が多くなると遅れがそれなりに(1拍くらい)ありましたけれど、2人合奏程度で打楽器のモーションがずれていた印象はあまりありません。

合奏人数がどのくらい要因になるかは、よくわかりません。むしろ、MMLの内容によるのかもしれません。

数秒くらいの大きなずれは、マビノギの演奏システム七不思議のページの「打楽器の演奏モーションのタイミングは、テンポ指定直前の休符を無視する」の項で取り上げていることが関係していただけなのかもしれません。(この段落は2024年2月14日追記)

また、5分なり10分なり、長いこと演奏していると、モーションと音がすこしずれていく現象もあります。あまり気にしたことがなかったから、以前からそうだったかもしれません。


打楽器のモーションがまったく出ず、硬直してしまうこともありました。以前から、演奏の途中でモーションが止まることがたまにありましたけれど、症状が悪化したのか、演奏開始から動かないことが増えている印象がありました。こちらは、2023年4月に直ったかもしれません。アップデートのおしらせに『打楽器の演奏モーションが再生されない場合がある問題』を修正したと書かれています。

演奏終了時に音がぶつ切りになりやすい

音を鳴らしている途中で演奏をキャンセルしたとき、一瞬で音が止まる、つまり音色ごとのリリースタイムを無視してスパッと無音になります。また、環境設定でサウンドバックグラウンド再生を無効にしている場合に、ゲームクライアントを非アクティブにしたときも同様です(こちらが以前どうだったかは知りません)

それだけならまだしも、演奏をキャンセルせずに完走したときにも、曲の末尾の音符の発音がぶちっと切れることがあります。パッと聴いた感じでは違和感がなくても、波形で確認すると、末尾の音が不自然に切れていることが多く見られます。

従来、音符やテンポ指定がそれ以降なくなったところで、そのMMLの再生が終わり、BGMの音量も戻ります。一方、スキルやアクション自体は、末尾の休符も含めて完走するまで続きます。作曲スキルウィンドウなどの再生ボタンも同様です。

音符がなくなったところで再生が終わるのはいいのですけれど、リリースの音まで切られては困ります。合奏ならそれぞれの譜面で、最後の音符のケアが必要になります。

ぶつ切りが目立つ場合は、次のようにすれば対処できます。

楽器の種類や音量によっては、気にするほどではないのですけれど、ピアノやハープやシロフォンのような、リリースが長い音色の楽器は、とくに注意したほうがいいでしょう。

たとえば、末尾が〈c8r1r1r1〉のようになっているなら、〈c8v0c1r1r1〉のようにすれば改善されます。リリースが鳴りきるよりうしろに音符があればいいので、〈c8r1r1v0c1〉などのようにしてもかまいません。

あるいは、音符のかわりに、テンポ指定を末尾に置いてもOKです。

意図的な仕様なのか修正の予定があるのか、はっきりしませんけれど、このままでは困ったものです。大半の過去作に手を入れないといけません。

実例として、リラのソロ曲の「とんずらはお早めに」の末尾を取りあげます。

64bit改変前後比較・とんずらはお早めに_MabiMML.m4a[AAC]

この末尾の波形のようすを画像8で比べます。末尾にv0の音符をつけ足した場合の演奏音の波形も並べてみました。

画像8:末尾のリリースのぶつ切りを示した波形表示

この作品は、幻惑の演奏スキルで完走できるように、ぎりぎり40秒に仕立てています。あまり長くない音符を最後に置いているので、その音符のノートオフとともにばっさりと音が消えてしまっています。先述した、演奏開始タイミングの変化によって、どっちみち幻惑の演奏を想定した曲は手入れをしないといけなくなりましたから、末尾の音符を伸ばすなり、v0の音符を足すなりするよりほかありません。

演奏者との位置関係による左右の定位の動きが変わった

以前は、画面上で真横に1歩以上離れているキャラの演奏音の定位は、極端に右か左に寄っていました。いまは、周囲の一定距離にいるキャラの演奏は、横だろうと斜めだろうと、みんな中央定位で聞こえます。ある程度離れてみると、すこし左右に音が寄るようになりますけれど、以前にくらべるとずいぶん左右差が縮まったように感じられます。

中央定位で聞こえる範囲を測るには、幻想のコーラス起動時に地面に現れる模様が、便利なものさしになります。イメンマハ公演場の舞台で幻想のコーラスを出したときのようすが画像9です。

画像9:幻想のコーラス(英字ランク)で地面に現れる模様

幻想のコーラススキルのランクによって、模様の大きさが変わります。画像はAランクで出した大きさです。この場合、模様のぎりぎり外までが、中央定位で聞こえる距離になります。模様の外側、右上のほうの床にリボンをかけた小箱があります(見つけづらいかもしれませんけれど)。その箱の位置だと、定位がすこしだけ左に寄るようになります。9ランクから2ランクまでの大きさなら、外周のふたつ目の円の内側が目安です。1ランクの大きさに関してはわかりません。

小箱の位置のように、中央定位で聞こえる距離からすこし外れただけだと、そんなに左右の音量差は拡がりません。さらに遠ざかれば、より強く左右に定位が寄るようです。ただし、音量そのものも小さくなります。

これでわかるのは、公演場の舞台で合奏(の手伝い)をすると、大半の、あるいはすべての演奏音が中央定位で、つまりモノラルで聞こえがち、ということです。

演奏音にかぎらず、効果音全般、たとえば野生の動物の鳴き声や羽ばたき、交易中に略奪団と接近したときの音なども同様の動作になっているようです。位置が遠いときには横から音が鳴るのに、一定範囲内では真横の位置であっても音が真ん中から聞こえます。直観に反する挙動であり、ゲーム世界への没入感をそこねると思いますし、とくに音で略奪団の潜伏位置が判断しにくいのは、きっと多くのプレイヤーの不興を買っているでしょうから、そのうちまとめて改善されるのかもしれません(これもまた希望的観測でしょうか)

そのほかこまかい話として、以前は、中央定位でもほんのわずかに左側に音が寄っていました。(だから、というほどでもないのですけれど、当サイトに載せているMML演奏音源は、ソロ演奏であってもモノラルにせず2チャンネルのステレオ形式にしています。)いまは、中央定位のときに左右の音量がぴったり一致するようになりました。

演奏が聞こえる範囲が狭くなった・距離による演奏音の弱まりかたがおそらく変わった

MusicQ改変後は、キャラクター名の表示が薄くなるか消えるか、といったあたりの距離で、演奏音が届かなくなっていました。それに比べて、64bit改変後を経たいまは、演奏音の届く距離がずいぶん狭まってしまいました。たとえばイメンマハ公演場でいうと、会場の外縁をふらふら歩いていても、舞台からの演奏音がちゃんと届いていたのが、いまは、外壁からほんのすこし離れただけでも届かなくなる場合があります。

文章より画像のほうがイメージしやすいでしょうから、舞台からの演奏音が届くぎりぎりの距離の例を、画像10のスクリーンショットで示しました。

画像10:演奏音が届くぎりぎりの位置関係・中央口

イメンマハ公演場の舞台やや後方で弾いています。ソロ演奏ならもっと前で弾くようにすればいいですけれど、大人数合奏だと後列の演奏者が画像例のような立ち位置になることが多いでしょう。聴き手のキャラが、正面入口の階段手前に立っています。これ以上離れると音が聞こえなくなります。ちゃんと会場内にはいって聴きなさい、という開発者側の遠回しなメッセージなのでしょうか(それなら集中鑑賞モードはなんなのだという話になりますけれど)

ついでに、別の位置の例も載せます(画像11)。

画像11:演奏音が届くぎりぎりの位置関係・待機列

二次会形式の演奏会で、演奏者の待機列が長いと、画像11の手前のキャラの立ち位置くらいに並ばないといけないこともたまにあります。舞台上に座っているキャラの位置からの演奏音なら、ぎりぎり届く距離ですけれど、合奏ならもっと遠い位置にも演奏者が立つでしょうから、集中鑑賞モードを使わないと一部のパートが聞こえない、ということにもなります。

このぎりぎりの距離に関してですけれど、MusicQ改変よりも昔の2016年3月に、おもな演奏会場(イメンマハ公演場、イメンマハ聖堂横、ダンバートンユニコーン像広場、ダンバートン図書館、タラ法皇庁)で、舞台上から10歩・20歩離れた距離をスクリーンショットで図示したものをツイートしたことがありました。2016年3月21日のわたしのツイート(外部リンク)その直後のわたしのツイート(外部リンク)です(各ツイートをつなげていないので両方にリンクを張りました)

人間20歳(17歳と同等)の歩幅で、演奏者から10歩の距離までなら、100%の音量で聞こえる、と書いてあります。

ふたつ目のツイートはタラ法皇庁についてのもので、20歩以上離れた「寄付箱のあるほうの出入り口すぐそばは演奏が聞こえないので注意」とあります。

大昔のことなのですっかり忘れていたのですけれど、そのとおりだったのなら、演奏音が聞こえる範囲が「昔の仕様に戻った」ということになります。画像10、画像11のキャラ間の距離は、まさしく人間17歳の20歩ぶんです。

20歩ぶん歩いて測るほかにも、ウィンドミルスキルを持っているペットやパートナーを使って測ることもできます。ウィンドミルを起動させたペットやパートナーから一定以上離れると、スキルを解除して駆け寄ってきます。そのときの距離が、音が届かなくなる距離とほぼ一致します。

アルペジオコンサートホールについては、64bit改変前に範囲を測って、マビノギのアルペジオコンサートホールのページに載せました。その図に含まれるミニマップと、画像11のミニマップとを見比べると、おおよその見当がつくわけで、もはや集中鑑賞モードを使わなければ、ほぼ全域で音が聴けなくなっているのではないかと思います。

なお、集中鑑賞モードの有効範囲は、以前とおなじのようです。

聞こえなくなる距離の中間、つまり演奏者から(人間17歳での)10歩以上離れると、演奏音が小さくなるという点は、MusicQ改変後もおそらくそうでしたし、64bit改変後のいまも変わっていません。でも、細かいところが違うようで、はっきりとはいえないのですけれど、音が小さくなる比率が、以前より急勾配になったようです。ぎりぎりの距離での音量が、以前よりだいぶ小さいかもしれません。

合奏が途中から再生される場合、各楽器の演奏タイミングがずれることがある

合奏中の演奏音が聞こえていない状態から聞こえる状態に変わったときに、合奏を構成するそれぞれのパートのタイミングがずれる(同期しなくなる)ことが多いようです。

つぎのような場合が該当します。

ふだん演奏コンテンツに親しんでいるようなひとなら、すこし気をつけていれば防げる程度のことです。でも、演奏を耳にするひとがみんなバックグラウンド再生を有効にしてプレイしているわけではないでしょうし、なんだか頼りない再生環境だなあ、という感じが否めません。

もともとの見出しは「合奏の一部のパートが途中から聞こえるようになると、タイミングがほかのパートとずれていることがある」でした。掲載当初、音の届く距離が要因になっているような書きかたをしていましたけれど、集中鑑賞モードやバックグラウンド再生の振る舞いを考え合わせると、そうではなさそうでした。

離れた位置、別マップから演奏の聞こえる範囲にはいったとき、演奏の再生が曲の冒頭から始まる場合がある

遠く離れた場所や別マップから、演奏中のキャラの近くに行くと、すでに行なわれている演奏であっても、曲の頭から再生されます。

具体例としては、浪漫農場から退場して戻ってきた場所の近くで、すでに演奏しているひとがいると、その演奏が曲の出だしから再生され、演奏者が演奏し終えた時点で再生が(完走せずに)終わります。

(合奏テストの場所としてもよく使われる)ダンバートン図書館のように、マップ切り替えの出入り口が近くにある場所だと、この現象がよくわかるそうです。

また、同一マップ内でも、集中鑑賞モードの有効範囲より離れると、おなじことが起きます。

MusicQ改変後から64bit改変前まではどうだったかというと、演奏中に可聴範囲にはいると、途中の箇所から再生されていました。最初から聴いていたひとたちと再生位置が同期されていたわけです(1秒くらいのズレはあったかもしれませんけれど)。また、MusicQ改変前の大昔は、記憶があやふやですけれど、たしか途中からの演奏音は再生されていなかったはずです。

ちなみに、幻想のコーラスについては、鳴らしたプレイヤー自身であれば、ゲームを終了させない限りは、別キャラに替わったり遠くへ行き来したりしても、コーラスを鳴らしたエリア内に戻れば途中からの再生音が聴けます。単独調査でわかるのはここまでです。ほかのプレイヤーが途中で来たときはどう聞こえるのでしょうか。

打楽器で弾いたことのあるMMLの和音1・和音2パートが再生されなくなっていた(修正済)

2023年4月の「不具合修正」で正常になりました。古い内容を折りたたみ表示にしています。

64bit改変直後の時点での古い記述(折りたたみ)

ゲーム起動後、打楽器で最初に鳴らされたMMLは、そのあと打楽器ではない楽器で鳴らしても〈和音1・和音2〉パートが正しく再生されなくなります。

打楽器の仕様とおなじように音量が1.5倍相当になって、〈メロディ〉パートだけが鳴ります。演奏に失敗したとき(音が外れるとき)は、3パートとも通常どおりに鳴ります。

おなじMMLを別の楽譜スクロールに書いても、ほかのキャラで弾いても、症状は変わりません。ゲームを再起動すれば直ります。おそらく、おなじ場でおなじ演奏を聴いていても、プレイヤーごとに聞こえかたが変わり得るでしょう。

ピアノなどの椅子型楽器を使うときに、打楽器を装備している状態で、うっかり打楽器のまま弾いてしまい……ということはありがちですから、修正されるまでのしばらくは、気に留めておくほうがいいかもしれません。

作曲スキルウィンドウでの再生時には、この症状は起きません。


〈和音1・2〉パートの不発については、別の情報も聞いています。打楽器うんぬんと関係ないのであれば、わたしにはなんともいえないというかお手上げな話なので、さしあたり、情報へのリンクを載せるだけにします。

集中鑑賞モードとBGM

集中鑑賞モードをオンにするとモノラル再生になる

以前の集中鑑賞モード(ゲーム内表記:集中観賞モード)は、オンにした時点での左右定位が固定される、という効果だったのが、モノラル再生で固定される効果になぜか変わりました。また、以前はオン(またはオフ)にしてからカメラアングルか立ち位置を変えないと効果が表れませんでしたけれど、いまはオンにすると即座に効果が出ます。距離による演奏音の減少がない、という効果は以前とおなじです。

ただし、以前の集中鑑賞モードの効果については「モノラルになる」「パーティリーダーがいる位置の音で聞こえる」などの説も聞かれたものでした。まさかプレイ環境によって挙動が違っていたなんていうことは考えづらいですけれど、実際どうだったんでしょうか。ちなみに64bit改変当日の検証会では、ほかのみなさんも「モノラルで聞こえる」といっていました。

集中鑑賞モードをオフにしたあとも、自キャラの立ち位置を移動させないかぎり、効果が続きます。

集中鑑賞モードをオンにしても効果音やBGMがミュートされない

ヘルプの記述には、以前とおなじく『合奏パーティーの演奏以外の全てのサウンドがミュートに』なると書かれていることから考えても、効果音やBGMの音量がゼロにならないのは奇妙です。もともとBGMは、集中鑑賞モードのオンオフに関係なく相応に音量が下げられるものの、効果音が防げなくなったのには首を傾げます。そもそも、演奏システムのみならず、効果音やBGMを含めた音声関係のあれこれが、以前と違う動作をしています。雨・雷雨の効果音も邪魔になります。演奏をまともに聴くには、環境設定の「サウンドエフェクト」「背景音」のボリュームを絞るしかありません。でも、アンコールスキルの拍手の音もサウンドエフェクトなので、悩ましいところかもしれません。

集中鑑賞モードと幻想のコーラスとの相性が改善された

以前は、幻想のコーラスが鳴っているときに、演奏者以外の合奏パーティの集中鑑賞モードボタンをオンにして音をミュートしてしまうと、オフに戻したときに幻想のコーラスだけが、コーラスを出したキャラがいま立っている位置でふたたび最初から再生されてしまう、などの現象があって、集中鑑賞モードと幻想のコーラスとの相性が悪かったのですけれど、そのあたりがまともになったようです。

BGMの音量が演奏の開始時にゆっくり下がり、終了時に一瞬で戻る

演奏中は、BGM(背景音)が完全に無音になるのではなく、26dB下がります。以降に音符またはテンポ指定がなくなった時点で、(スキル・アクションが終わっていなくても)音量が戻ります。これらのことは以前もほぼ同様でした。

音量の上がり下がりの速度について以前調べたことはないので、感覚的な比較しかできないのですけれど、いまは演奏開始時、2秒かけてなめらかにBGMが26dB下がります。以前はもうすこし素早く音量が絞られていた気がします(わたしは普段からBGMをオフにしていて、こうしたことをあまり意識してこなかったので、確信はありません)。一方、演奏終了時は、なぜか一瞬でもとの音量に戻ります。これも以前は、少なくとも一瞬ではなかったと思います。しかも、26dB下がりきる前に演奏が終わった場合のみ、2秒かけてなめらかにもとの音量に戻ります。(たとえば、空白文字か休符だけを入れた無音楽譜を弾くと、BGMが0.4秒くらいかけてちょっとだけ減衰してから、すぐさま2秒かけて戻ります。〈v0c〉のように無音の4分音符ひとつで終わる楽譜の場合、0.8秒くらい減衰してから、おなじく2秒で戻ります。)本当はそちらこそが意図した動作で、一瞬で戻るのは手落ちのように見えます。

演奏開始時にBGMが2秒かけて絞られる上に、再生開始が早くなったということは、弾きはじめの音、イントロなどにBGMがかぶりやすいということです。さらに、BGMや効果音の再生音量が以前より上がっているらしく、おなじ設定の場合に演奏音のほうが相対的に小さくなった、という点もそのことに追い討ちをかけます。自分で聴くぶんには、環境設定でBGMのボリュームをゼロにすればいいだけですけれど、演奏会などで弾く際に、BGMのボリュームを大きめにしている観客も考慮するなら、演奏開始と同時にイントロを鳴らさずに、(4分の4拍子なら)冒頭の1小節くらいを休符(または調律)にするほうがいいと思います。

仮にBGMのボリュームを抑えめにしていても、演奏音の合間からちらちらと聞こえてくるようなレベルです。現状の集中鑑賞モードの動作もあわせて考えれば、さっきも書いたように、演奏を聴くときはBGMを完全に切ることを強くおすすめしたいところです。


幻想のコーラスを鳴らしているときに別の演奏を始めると、その瞬間にBGMの音量が一瞬戻ってから、またゆっくり減衰します。幻想のコーラスを併用した後追い演奏をするときに支障あり。幻想バフなどを後追いで弾く瞬間に、BGMの音量が戻ってしまうことになるからです。

そのほか、幻想のコーラスが聞こえているエリアから移動して聞こえなくなっても(あるいはリログしても)、演奏が終わる時間まで、BGMの音量が下がったままになります。相変わらず、幻想のコーラスまわりの処理がごちゃついている印象です。

MusicQ改変で変わったこと

「MusicQ」は、2016年12月と2017年1月に行なわれたアップデートです。64bit改変と異なり、演奏コンテンツの拡張を看板にかかげた内容でした。

12月の改変では、フリースタイルジャムの実装、DLSファイルの新調などがありました。1月の改変では、合奏パーティシステムの強化・16人合奏対応、作曲スキル使用時の操作体系の変更、吟遊詩人掲示板の実装、チューニング楽器とザブキエルの楽譜集の登場、合奏・合唱成功率の判定方法の変更などがありました。

既存のMMLにとっての破壊的変更は、DLSファイルの新調、つまり楽器の音色に関する部分でした。マビノギの楽器の詳細のページのほうで、あれこれ書いています。(いまのところは、関連する話題をこちらのページに移さず、そのままにしています。)

音量が楽器ごとに大きくなったり小さくなったりしていたのがとくに厄介でした。音量指定の置き換えについての指針を、楽器の詳細のページに載せています。MusicQ改変前の古いMMLを修正するときに、いまも役に立つと思います。

また、エレキギターのアタック部分の遅れ(むだな余白)が省かれたことで、その遅れも計算に入れて仕上げていたエレキギターの譜面を書き直す必要が生じましたし、バイオリンやチェロの音の伸びが短くなったのも頭痛の種でした。エレキの件はともかくとして、どういう意図で変更したのかわからないことが多すぎでしたけれど、なんとかめげずに適応していったのでした。

もっと昔のアップデート

わたしが本格的にMML演奏活動を始めたのは2013年半ばからですし、マビノギを始めたのも2011年末からなので、それ以前のことには詳しくありません。

2011年12月ごろまでは、打楽器も和音1・和音2の音符が鳴らせたそうです(同時にではなく、メロディ、和音1、和音2の順につなげる形で演奏される)。

また、もっと昔(2008年4月まで)は、分解能も現在の3分の1だったそうです。4分音符の長さが、いまは96tick、昔は32tick。どういうことかというと、たとえば3連8分音符を表すとき、いまは〈L12ccc〉と書けばいいのですけれど(32tickが3個で96tick)、昔は〈c11c12c12〉というような入れかたをしないといけませんでした(12 + 10 + 10 = 32tick)。〈L12ccc〉だと微妙に短いので、以降がずれてしまうのでした。

このほかにもいろいろあったかもしれません。昔のことを知るなら、昔の文献を紐解くほうが確実です。たとえば下記のサイトで、マビノギMMLのいろいろなことをわたしも知りました。