エリン音楽ひろば 2026年4月
オンラインRPG『マビノギ』で、2026年4月26日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。
第27回、ルエリサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。
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内容のまとめ
出てきた話題・質問に関して、ひろばでのやりとりをもとに、つらつら書いています。
- バイオリンの表現について。自分が普通に使うと、音が細くてキンキンした感じになるのですが、うまい楽師の演奏は、耳に優しい感じの音で柔らかに表現されているようで……なにかテクニックがあるのかな
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マビノギにはバイオリンとチューニングバイオリンと、2種類のバイオリンがあります。マビノギの楽器の詳細のページでも触れているように、それぞれ音色の特長がちょっとばかり違います。その点も含めて、いくつか実演も入れつつみんなでしゃべりました。
単品で聞くと、たしかにキンキンした音です。わたしの初期のバイオリンソロ作「木枯らしで旅立ちを」も、キンキンする点はハナからあきらめてつくったのでした。
合奏での伴奏であれば、音量を控えめにしておけば、ほかの楽器の音色にマスクされて、そこまで気にならないものです。それでも音色が浮く場合、あるいは主旋律を担当したり、間奏などでソロをとったりという場合には、ちょっと工夫がしたくなります。
おなじフレーズを別種の楽器でささやかになぞると、キンキンしづらくなるはずです。たとえば、バイオリンとチューニングバイオリンとを組み合わせるのもよいし、あるいはチューニングフルートを足すのも味つけに有効です。
バイオリン1本だけでも、おなじフレーズを2つ重ねることができます。その場合はちょっとタイミングをずらして重ねる必要があります。これで「ストリングス」らしい音に近づくでしょう。双方のパートの音量の配分は試行錯誤で決めます。この「同音重ね」の手法は、音量が足りないときにも役立ちます。単に音量をv15よりも上げたいだけのときは、まったくおなじタイミングで音符を開始するといいでしょう。(そして片方の音符をごく短くしてすぐに切れば、アタックだけが大きくなってめりはりが出ます。速弾きのソロに有効です。)また、1オクターブ下で重ねても問題ないなら、そうするだけでもまろやかな響きになるかもしれません。
音符を長く伸ばしても発音が切れてしまって困る、という話も出ました。普通のバイオリンは(チェロも)3秒くらいしか音が伸びません。だから、必要とあらば、おなじ高さの音符を複数ならべることで、長く音を伸ばしているように聞かせないといけません。
曲の内容によって最善の手法は変わりますけれど、こまかい音符を連打、つまりトレモロで弾く手もありますし、あるいは、3パートのうち2つ以上を使ってリレーさせる形で、1つめの音符の発音が消える前に次の音符を始める方法もあります。アタックが目立たなくなるよう、引き継ぎの音符の開始タイミングを微調整することになります。チューニングバイオリンなら、なにも小細工しなくても、ふつうのバイオリンよりは音が持続します。
- 「和声」とは何か、どのように考えればよいか。和音までは理解できましたが、和声の理解が進まないのです
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〈ド・ミ・ソ〉や〈ソ・シ・レ〉のような音の組み合わせを和音(コード)と呼び、和音から別の和音への推移のしかたをも含めて和声(ハーモニー)といいます。ギターなどを弾きながら鼻歌で歌をつくることが多いと、「コード」の種類やその進行のパターンをいろいろ知っていればだいたいなんとかなるので、そのもとになった、西洋クラシック由来の「和声」理論を、わたしはちゃんと学んでいません。
「和声」は作曲寄りの理論、「コード進行」は演奏にも便利な考えかた、ともいえます。両者で共通する内容も多々あります。
ひろばで話題にできたのは、安定・不安定・一時安定、で説明されるコードの「機能」をうまく並べてストーリーをつくるという考えかたです。(この記事ではこれについて詳しく触れず、和声の理論との付き合いかた、位置づけのほうに絞って述べます。)
なお、コードの場合は、低いほうから〈ドミソシ〉と重ねても、あるいは〈ドソミシ〉でも〈ドソシミ〉でも〈ドミソシミ〉であっても、おなじ【CM7】(Cメジャーセブンス)です。ベースが担当するいちばん低い音がどれなのかは意識されますけれど、あとは構成音だけわかればよく、実際に出す音は演奏者や楽器の都合に任せる、といったところです。
一方、クラシック由来の和声学では、安定・不安定・一時安定のような話に加えて、音の積み重ねかたも見ます。ソプラノ、アルト、テナー、バスの4声を使うとして、それぞれの声部にどの音を配するか、それぞれの声部で音がどのようにつながっていくのかを、つぶさに扱います。
ソプラノやバスの音が決まっているときに残りの3声をどうつけるか、というのが演習問題によくありますけれど、ひろばの主催みたいに「とにかく自由にやってみましょー」というノリで取り組んでも残念ながらマルがもらえません。4声のそれぞれの動きの一部が意図せず悪目立ちしてバランスをそこねることのないように、響きや流れが最大限に豊かになるように、と設けられたさまざまな掟や決まりごとに則って考えていきます。
まさしくパズルであり、その解きかたを説明する言葉もへんてこなので、辟易しそうになります。でも、制約が多いほどよいものが創作できる、というのはよくいわれることです。……うん、いまのが核心かもしれません。制約のなかで熟考して吟味することが、1音1音をおろそかにしないで調和のとれたきれいな響きを追求することにつながります。和声理論はそんなパズルのレシピ集、あるいは攻略ガイド、といえるかもしれません。
ただし、「調和のとれた」「きれいな」という審美基準は、時代や文化によって変わります。〈ドミソ〉の周波数比がきれいなのは数学的に説明できて普遍です。でも、不安定な和音から、そのようなきれいな和音に進むのを美しい、好ましいと感じるのは、たぶん文化的なものか、人間の本能的なものでしょう。そこをまず「みんなそうでしょ」と前提にした上で理論が積み上げられているので、根本から疑いだすと、なんで、なんで? と理論の解説がちっとものみこめなくなります。
数百年前の西洋でならいざしらず、現代人だったら、調和だなんて白々しい、つくりものだ、と嫌うこともあるでしょう。掟を破って意表を突くような和声もすっかり定番化して、それをかっこいいと感じるひとも多いはずです。ザーザーしたノイズにうっとりすることさえありましょう。なんでもアリな時代の音楽に親しんでいると、クラシック曲がどれもこれも同じ顔のワンパターンに見えて退屈に感じるかもしれません。
そんなわけで、あらゆる音楽文化のうちの一部分を対象にした理論だという点は強調したいです。豊かな一部分には違いないし、応用もききますけれど、すべてを解き明かすものではありません。なぜ「きれいな」響きに感じるのか、という話になるともはや哲学なのです。
作曲したいのでその道具として学びたい、というのであれば、先に理論をマスターしようとするのでなく、好きな曲をまねながら、たくさん習作をつくり、すこしずつ理論を興味や必要に応じてつまむのをおすすめします。
マビノギMML関係のソフトウェア「和ねこ」は、和声を意識した作譜の支援機能が手厚いです。(マビノギMML作成ソフトの簡単な紹介のページ参照。)
その後は雑談っぽく、みんなでわーわーしゃべりました。日本にもあの新楽器は実装されるのかどうか、という話から、サックスやトランペット実装してくれー、といういつもの夢語りに展開したりしました。
スクリーンショット集
夜明け前の21時30分に開会です。キャンプファイアをつける為に、その場で競売場で薪を買います。中級薪も薪なみに安くなっていました。デフレが叫ばれる昨今のマビです。
ひとつめの質問のときに、バイオリンの試し弾きをしている場面です。
締めに主催の演奏コーナー。わたしからは「サイクリング・ピッピ」の鳥ペット入り版と「あてのない旅路」をお届けしました。
めろさんからは、さわやかな自作曲の4人合奏を。焚き火のそばで横になって聴きます。
記念撮影をして、23時30分ごろに閉会。来ていただいたみなさん、ありがとうございます。次回はたぶん6月、タルラークで開催です。
で、そのあとも数人で長々とおしゃべり。本篇での質問のつづきや、生成AI話とか昔話とかいろいろ聞くことができました。