マビノギMML作成ソフトの簡単な紹介

オンラインRPG『マビノギ』用の「MML」をつくるのに便利なソフトの紹介と、それらに関して知っておきたいいくつかのことを書いています。マビノギMMLガイドの記事のひとつです。

今後、記述をつけ足すかもしれませんけれど、ソフトの操作法や設定などについて、当サイトでくわしくは取り上げません。

MML作成用ソフトの種類

マビノギの仕様に特化したMML作成ソフトは、何種類かあります。マビノギMMLを作るひとたちの間で話題にのぼるのは、「3ML EDITOR 2」(3MLE)、「MabiIcco」、「まきまびしーく」、「和ねこ」の4本です。いずれも無料で使えます。

各ソフトの作者による配布ページ:

「3ML EDITOR 2」の画面
「MabiIcco」の画面
「まきまびしーく」の画面
「和ねこ」の画面

各ソフトの画面のようすを載せました(初期設定と異なっている表示もあります)。

「3MLE」は、MMLを直接タイピング(手打ち)して、ピアノロールで音符の配置が確認できます。MIDIイベントリストも表示できます。

ピアノロール型MIDIシーケンサーと似た感覚で作業できるタイプとして、むかしむかし広く使われたのが「まきまびしーく」です。その後継的存在でもあり、現行のマビノギの仕様に唯一対応しているのが「MabiIcco」です。これからマビノギMMLをつくってみようというかたは、「MabiIcco」を使うといいでしょう。

「和ねこ」は新しめのソフト。ほかのソフトとは毛色が異なり、もともと和音提案ツールとして出発した経緯があります。「和ねこ」については「その他のMML作成支援ソフト」の節で取り上げます。

わたしは「3MLE」を使っています。手打ちの長所として「マウスで音符を置いたり移動したりするよりタイピングのほうが速い」「微妙な音符の長さも制御しやすい」「複数のパターンで迷ったときに代案をコメントアウトしておけば、あとで差し替えやすい」点などを挙げることができます。ただ、合奏が最大5人だった時代の古いソフトなので、大人数合奏を書くときは苦労します。オクターブ番号0の音符を置くときに「<」ではなく「o0」で指定しないといけない、といったこまかい注意点もあります。

以下、「3MLE」の使い手としての視点で、「MabiIcco」にもすこし言及しながら書いていきます。

読み込ませるDLSファイル

「3MLE」「MabiIcco」「まきまびしーく」は、DLSファイルが読み込めます。DLSファイルというのは、音色データが格納されている、サウンドフォントの一種です。

マビノギの楽器の音色で再生する場合は、マビノギ本体に附属するDLSファイルをソフトに読み込ませます。初期のマビノギはDLSファイルがひとつだけでしたけれど、いまは4つもはいっています。

「3MLE」の場合、DLSファイルがひとつしか読み込めないので、マビノギ本体内の「mp3」フォルダに含まれる4つのDLSファイルをまとめて扱うことができません。それではどうするのかというと、4つのDLSファイルの内容をひとつにまとめたものを自前で用意して、それを読み込ませることになります。「DLS Reader」というソフトで、ふたつのDLSファイルをひとつに結合できます。下記ブログ記事を参照してください。ソフトに附属する説明書も、勉強になる内容です。

「MabiIcco」のほうは、4つのDLSファイルをそのまま読み込むだけなので、つまづく点はとくにないでしょう。マビノギのアップデートでDLSファイルが突然更新されることがあるので、DLSファイルのコピーを別途とって、それを読み込ませるようにしておくと安心です。

パート、トラック

「3MLE」の場合、〈メロディ・和音1・和音2・歌〉のそれぞれを「トラック」に振り分けて書きます。(だから、ソロ演奏の譜面であっても、各トラックのパンポットをそれぞれ変えることができます。――ゲーム内での再現性から見れば意味ありませんけれど。)

「MabiIcco」の場合、それらは「パート」であり、その4パートをセットにしたものを「トラック」として扱います。つまり、8人合奏ならトラックが8つになります。

「パート」「トラック」の言葉は混用しがちです。「リュートパート」「マンドリンBパート」というように、合奏用の楽譜のそれぞれ(〈メロディ・和音1・和音2〉または〈歌〉パートからなる1本のMML)を「パート」と呼ぶこともあって、ややこしいところです。あまつさえ、曲中の一部分を指すときにも「間奏のパートで……」などといったりもします。区別したくても、しっくりくる適当な言葉がなかなかないので、当サイトの記事では、なるべくまぎらわしくならないように注意しながら、それら複数の意味で「パート」という語を使っています。

作業ファイル

MMLそのものはプレインテキストです。つまり、テキストエディタでひらいて読める文字データです。

MML作成ソフトで読み書きするファイルは、いわばプロジェクトファイルで、これもプレインテキストなのですけれど、各ソフト専用のファイル形式になっていて、拡張子も異なります。別ソフトのファイル形式でも読み込める場合がありますけれど、後発の「MabiIcco」用のファイル形式は、当然むかしのソフトでは読めません。「MabiIcco」用のファイルをたとえば「3MLE」で再生したいなら、MMLを1本ごとにクリップボード経由で移し替えることになります。

ファイルの拡張子はそれぞれ、3MLE形式が「.mml」、MabiIcco形式が「.mmi」、まきまびしーく形式が「.mms」です。

3MLE形式のMMLファイルのサンプルとして、「待合室」という曲のMMLファイルを公開しています。

「3MLE」でひらく用のファイルですけれど、一般的なテキストエディタでも中身が見られます。

テキストエディタでひらいて眺めてみると、[Settings]の部分がファイル全体の、[ChannelProperty]の部分がトラック別の(ソフトの機能に紐づけられた)設定で、[Channel]のところが正味のMMLの記述になっているのが確認できます。要は、こういったデータの配置がソフトごとに異なるわけです。

たまに、MMLファイルが壊れて開けなくなった、という話を聞きますけれど、そういうときは、試しにふつうのテキストエディタでそのファイルを開いてみましょう。MMLの中身だけでもコピペで救出できるかもしれません。

(わたしが)「3MLE」で制作するときは、読みやすいように、小節ごとに改行したりコメントを書き込んだりします。この「待合室.mml」は、公開用ですし見本も兼ねていますから、ちょっとだけ記述を整理していますけれど、実際はもっとごちゃごちゃとコメントを書き残しています(前掲の「3MLE」の画面のような感じです)

MML作成ソフトによるMMLの最適化と出力

最適化については、マビノギMMLの基本のページの「MMLの最適化」の節も参照してください。

どのMML作成ソフトも、ゲーム内で楽譜スクロールに書き込むときに便利なように、「MML@」で始まるMML文字列をクリップボードにコピーする機能があります。そのコピーの時点でMMLが最適化できます(またはコピーの前から最適化されています)。

「3MLE」での作譜の最中は、自身がいちばんわかりやすい・書きやすいように書けばよくて、完成して「クリップボードへMMLを出力」するときに「最適化して出力する」にチェックを入れておけばOKです。(完成が近づいてくると、最終的な文字数を見積もる為にこの操作を頻繁に行ないます。なお、1トラックの文字列を直接最適化する機能もあり、MIDIからインポートしたときなどに役立つことがありますけれど、折り返し改行が含まれるので、そのままコピペしてもゲーム内では正しく鳴らせません。)

ゲーム内で楽譜スクロールに書き込む際にだけ、MMLを最適化してソフトから書き出せばいいのですけれど、より万全を期するなら、最適化済みのソースをあらかじめTXTファイルとして書き出して、後述するような手直しも加えて、MML作成ソフト用の作業ファイルとともに管理しておくといいでしょう。「3MLE」用のファイルの中身を最適化してしまうと、あとから手を入れたくなったときに編集が難しくなるので、そちらは最適化せずに保存しておきます。


MML作成ソフトの最適化機能は万能ではなく、「3MLE」の場合は、最適化後に手作業で修正が必要な場合もあります。

たとえば、最適化後に〈l1.rrrr2r2〉というような変換がされることがたまにあります。これはもちろん〈l1.rrrr1〉と書くほうが2文字減らせます。この種の冗長な変換が何パターンかあります。文字数に余裕があるならそのままで構わないのですけれど。ほか、〈cl8&c〉になるべきところで〈c&l8c〉と変換されてタイがちぎれてしまう危ない例もあります。そういうわけで、最適化した文字列に「r2r2」や「&l」がないか、検索・置換をするのが習いとなりました。ほか、64分休符の付点が消えてしまう、という例もまれにあります。

エレキギターの譜面では、オクターブ番号8の音域も使うので、その結果、最適化時にNコマンドの音符〈n97〉や〈n99〉が現れることがあります。「3MLE」での再生ではその音符は無視され、マビノギでの演奏では〈n96〉扱いになります。この場合も最適化後の手直しが必要になります。つまり、Nコマンドではなく通常の音符の書きかたに置換することになり、たいてい字数が増えます。エレキ実装以前の時代のソフトですから仕方ないところでしょうか。

対して「MabiIcco」のほうは、音符を入力するたびに自動的にMMLが最適化されます。よって、最適化を意識する機会はあまりないかもしれません。「MabiIcco」は開発が続いているので、バージョンによって最適化の結果が違っていることもあるようです。

ただ、打楽器の場合、ゲーム内での演奏はNコマンドの音符の音量が下がってしまうので、場合によっては最適化後の修正が必要です。Nコマンド化を回避する機能は「3MLE」にはありません。「MabiIcco」はバージョン1.3.97で、「Nコマンドを使用しない」オプションがトラック単位で設定できるようになりました。既定値はオフです。「まきまびしーく」は、最適化にNコマンドを使いません。

MML作成ソフトの音とゲーム内の音

MMLをMML作成ソフトで再生したときの音と、ゲーム内で演奏したときの音とは、おなじではありません。高音域・低音域のバランスがすこし異なりますし、打楽器の音量、リリース(ノートオフ後、音が消えるまでの部分)の伸び具合など、いくつかの点で振る舞いが違います。マビノギのアップデートによるMML演奏への影響のページをざっと眺めていただくと、マビノギでの演奏再生に特有のクセがいろいろある(あった)というのが、なんとなくでもわかると思います。たとえば、2023年のアップデート以前のゲーム内での演奏は、おなじ高さの音を連打したときにプチプチノイズが鳴る場合がありました。MML作成ソフトでは(当然ながら)プチプチノイズが再現されません。

「MabiIcco」なら比較的いまのマビノギの仕様に沿っていますけれど、どのソフトもやはり多かれ少なかれゲーム内の再生音と違いがあるので、ゲーム内で実際にテスト演奏することが、(演奏会通いをしているような)楽師のあいだでは一般的になっています。

その他のMML作成支援ソフト

「和ねこ」は、「MabiIcco」や「3MLE」のようなソフトと異なり、和音の提案や分析機能を重視しています。ピアノロール型シーケンサーという面では「MabiIcco」に近いです。

エリン音楽ひろば 2023年10月のときに話題に出て、そのすこしあとにソフトが公開され、改良が重ねられました。(最初のうちは「MML作成支援ソフト」という印象だったので、こういう見出しを立てて記事を書いたのですけれど、いまはだいぶいろんな機能がつきました。)

音符に対して短3度、長3度、完全4度、完全5度、短6度、長6度、完全8度、の音程となる音がピアノロール上に示されます。スケール外の音や不協和音や、西洋クラシック音楽の和声学で禁則とされる音づかいの箇所があればマーキングしてくれます。それらの表示はオンオフできます。

この音とこの音が不協和音だ、と表示してくれるだけで、そこに価値判断は含まれていない、ということを気に留めておきましょう。

また、調の推定をしたり、その瞬間瞬間でのコードネームを表示してくれたりします。メロディにコードを当てはめるのを支援する機能もあります。

作譜支援のひとつとして、伴奏をAIで自動生成して補う機能が実験的につけられていた時期もありました。あまりうまくいかなかったらしく、現在のバージョンでは削除されています。

音色については、マビノギのDLSファイルを使う代わりに、それに似せた音色を自前で内蔵しています。

クリップボードのMML文字列の読み書きや、「MabiIcco」形式のプロジェクトファイルとしての出力ができる一方、ソフトの画面上ではMMLそのものを露出しないデザインになっています。

ほか、音圧メーター、開いているファイルと別のファイルとの差分を可視化する機能、などいろいろな機能があります。

……と、「和ねこ」の特徴をならべるとこんな感じです。学習にも役立つソフトだと思います。「堆積和音」とか「並達5度・並達8度」とかの専門用語も出てくるから、理論に疎いひとは面食らうと思いますけれど、なにもかもを知る必要はないので、とりあえず気軽に、「MabiIcco」でつくったMMLを「和ねこ」に読み込んで眺めてみる、という感じで使ってみるのもいいかもしれません。

2026年3月13日、この節をまるごと書き直しました。開発初期のころの「和ねこ」についての、古くなって関係なくなった文章は削除しました。