エリン音楽ひろば 2021年12月
オンラインRPG『マビノギ』で、2021年12月30日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。
第2回、マリーサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベル)です。
このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.
内容のまとめ
内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。
出てきた話題・質問を以下に要約しています。なにをいえばよいか、言葉がうまく出てこないことも多々ありましたから、当日に言及できなかったこともちょっと補足しました。
質問のほかにも、テスト演奏の11人合奏が1作ありました。そして最後に、めろさんによる、ハンドベル7本での合奏をしました。
- シラベルさんは曲をつくるとき、曲が先に浮かぶんでしょうか、歌詞が先に浮かぶんでしょうか?
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そのときそのときによって、いろいろですね。説明を書いてみたら長くなったので、「内容の掘り下げ」の節に回しました。
- シラベルさんの愛用のギターのメーカーを教えてください
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アコースティックギターもクラシックギターも、ヤマハです。持っている楽器類については、そのうちまとめのページをつくろうかと思います。(追記:宅録に使っている楽器や機材の紹介のページをつくりました。)おしらせ・近況の「2020年12月4日」にもアコギの紹介を書いています。
わたしへの質問が続いて、たどたどしく返答して、こんな調子でいいのか、みんな退屈してなかろうか、と不安になりましたから、みなさんの持ち楽器も尋ねてみたりしました。
- (テスト演奏のあと)いまの演奏について、エレキ、歌、ドラムのV(音量指定)を教えてもらえませんか
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装飾的な音を除き、女声は9から12、エレキは10から15くらい、バスドラムは14、ハイハット類は9、スネアやタムは12から14が中心、ということでした。曲調がバラードであれアップテンポであれ、参考になる数値だと思います。なお、わたしの場合、女声のリードは9前後にとどめます。サビでv指定を上げたいひとが多いようですけれど、ざんねんながらマビノギの音源は、「音の強さ」は表現できず、「音の大きさ」しか上げ下げできません。音量を上げても、サビの力強さが出せるとは限りません。もともとサビは、音高が上がりぎみな傾向があるから、とくに調整しなくても盛り上がりが表現できることも多いと思います。
- V(音量指定)の差はメリハリ的にどれくらいつけてますか、プラスマイナス1ってほとんどわからなくないですか?
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フルートなど、音量の小さい音色の場合は、1だけ変えてもパッと聴くだけではなかなかわかりません。女声などのような、音量の大きい音色は、はっきりいって1の増減ではおおざっぱすぎて困ることも多々あります。
おなじ音色内でも、音高・音域によって音量感が微妙に異なることもあります。そのでこぼこ感をなくす為に、1の上げ下げが必要なこともままあります。また、エレキギターの2種類の音色を行き来する場合、E4~D♯8の音域に充てられている音色(いわゆるディストーション)のほうが音量が大きめなので、その差を埋め合わせしたいときも、2くらいの音量変更が必要です。
ディレイ、疑似リバーブの音量をどのくらい下げるか、というのは、また別の機会にも話題に出ることがあるでしょうね。(2022年6月のときのミニ講座コーナーで、ちょっとだけ触れました。記事では省いてしまいました。)
- 音のひずみは、パソコンやスピーカー、ヘッドホンなど環境によって変わりますか、マビの問題でしょうか?
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MML演奏時の「音割れ」についての質問だったのですけれど、再生機器によって音質が違う、という話題のほうに行ってしまいましたね。スピーカーひとつとっても、低音域が得意なもの、クリアな高音域を売りにしているもの、フラットな特性を標榜するもの、いろいろとあるから、音質が違うのは当たり前なんですけれど、そもそもスピーカーに送られる前段階での音の損傷については、気にしておくほうがいいと思います。長くなるので、これもあとでくわしく述べます。
- 音や演出について、演奏の時に魅せる工夫やこだわりはありますか?
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質問されたかた自身は、「退屈がないように面白く」「音量のバランス」「迅速に」という部分を心がけているとのこと。いろんなかたの答えがありました。テンポや音量などで変化をつける、ツインギターは左右にそれぞれ離して配置する、といった音づくりの工夫。チャットの内容を事前にIME単語登録しておく、といった事前の入念な準備。などなど。
わたしも、いろいろありますけれど、「ぶくぶく ぶどういっぱい アンドモア!」制作裏話の内容を、答えに代えさせていただきます。
- 公式が出しているマビノギのBGMの楽譜はあるのでしょうか?
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そういう情報はありませんでした。CDはあっても、楽譜はたぶんないようですね。楽師には、耳コピ派と譜面起こし派(と自作派)がいます。先般の「演奏コンテスト」には、参加したくてもできなかった「譜面起こし派」のかたも少なからずいたみたいです。
振り返って
前回、わたしがぐいぐいと仕切りすぎたので、今回はめろさん主導での進行テンポを掴む、というのがテーマでした。わたしは裏で(主催用チャットで)「そろそろまとめて次へいきましょう」とかなんとか、タイムキーパーみたいなことをいう役でした。主催として大きな間違いはなかった、という感じで、頭もクラクラせずに終えられたし、まずまずでした。あれはいわなくてもよかったかな、ちょっと喋りが軽かったかな、とかそういう個人的な反省は、今回に限らずあるのですけれど。
わたしはもともとマリーが地元のプレイヤーです。でも実は、一番不安があったのがマリーでの開催でした。どんな顔ぶれになるかなあ、と。ふたを開けてみれば、〈マリー勢〉な顔ぶれは数人くらいで、マリーなんだかルエリなんだか、あやふやになりそうな感じで、ちょっとさびしくもありましたけれど、まあなにしろ12月30日でしたからね。年末にしてはけっこうな参加人数だったなあとも思います。足を運んでくださったみなさんに感謝しております。次回開催はルエリです。楽しみにしてます。
スクリーンショット集
21時40分ごろの、開会時のようすが画像1。前回は30分スタートで景色が暗かったので、10分ずらして、エリン時間で夜明け前になるようにしました。あいさつと説明が終わるころには明るくなるだろう、という計算ですけれど、雨が降ってて暗かったですね結局。
前回から場所もすこしだけずらして、画像2のように、ムーンゲートからまっすぐ走って座れるスペースを会場にしました。前回は、生け垣がないスペースをメインにしていました。
MMLの試演奏。チェックポイントだけこま切れに抜き出したコンパクト版でした。長尺の曲だというので、わざわざ気を遣っていただいたのかもしれません。でもみなさん、フルバージョンで大丈夫ですからね。MMLの切り貼りによって思わぬ事故も起きかねません。また、音楽表現というのは相対的なもので、部分的に聴くと判断がしづらくなるから、フルバージョンのほうが聴き手側にも好まれるようですね。
画像4は、めろさんの出しもので、年末らしく、ハンドベル7本による「お正月」です。マビノギのハンドベルは、ドレミファソラシおよび高いドの8種類あります。ヘ長調で弾けば、低いド(以下、固定ド表記)から高いドまでの範囲にメロディが収まります。5音音階の曲なので、ファソラシ♭ドレミのうち、メロディに必要なのはファソラドレのみ。和音としてミが必要になるので、ドレミファソラドの7本のハンドベルで演奏できる、というわけです。
内容の掘り下げ
今回出た話題のうちのいくつかについて、くわしく書きます。
曲先か詞先か
わたしについての話です。歌ができるまでの過程には、いろんなパターンがあるので、一概にはいえませんけれど、「こういうことを唄う曲がつくりたい」という衝動から始まることが、わりと多いですね。タイトルから決めることさえあります。音が完全に仕上がったあとで、似合いそうな歌詞をつけてみようと思い立つ場合もあります。
作詞作曲をひとりでやる場合は、「同時につくってもかまわない」点が強みになります。たとえば、ある言葉を歌詞に使おうとするとき、その言葉の抑揚がメロディを導いてくれます。この場合は、一瞬だけ歌詞を先行してつくっているともいえます。この例に限らず、歌のメロディを考えるということはすべて、なにかそういう言語的な響きを、音楽的に翻訳する作業なのかもしれません。
ギターやらキーボードやらで和音をてきとうに弾きながら、即興で唄ってみることもあります。そのとき、思いつきの言葉がメロディの素になったのか、メロディが言葉を引き寄せたのか、はっきりしないことも多くて、そういうのは「同時」につくっているとしかいいようがありません。思いつきの言葉は、スキャットや、意味の通らない単語のつらなりであったりもします。その母音や子音がメロディと切り離しがたい関係にあるときは、なるべくその音や言葉をキープするように、歌詞を改めて練ります。これはなかなか難しいし、いっそスキャットのままのほうがいいと思えるときもあります。ちょっと話が深入りしましたけれど、とにかく、「同時」につくるというのは、このような感じです。
ただ、1番の歌詞と2番以降の歌詞をまとめて「同時」につくるのは困難です。繰り返しの部分は、あとからメロディに合わせて歌詞をつけ加え、埋めていくことになります。そこは「曲先」の作業になります。
完全な「詞先」の場合、曲構成をおおまかに決めておき、おなじメロディが乗るべき箇所同士(たとえば1番のAメロと2番のAメロ)で、言葉の抑揚やリズムをできるだけ揃えておく必要があります。五七調、七五調のように韻律を持たせると、比較的つくりやすいのですけれど、抑揚やリズムを計算に入れながら言葉を探すのなら、いっそメロディを確定しておけばいいという話になると思うので、あまり詞先ではつくりません。全然しないというわけでもなく、歌詞だけ思いついたら、断片を書き留めてはいます。でも、メロディやリズムを想定せずに歌詞を書いても、エッセイのような、日記の走り書きのような、あるいは説明くさい文章になることも多く、そういう歌詞にメロディはなかなか乗りません。
昔は、歌詞の素、テーマが先にないと、メロディや曲の雰囲気を決めるとっかかりもない、という感じでした。マビノギMMLを書きはじめて、歌詞のない曲もたくさんつくるようになって、ちょっとスタイルも変わってきたかもしれません。
音割れについて
デジタルの音声波形の振幅(音量)は、「dBFS」という単位で表わします。最大値が、0dBFSとなります。(音声データのビット深度が16なら、-96dBFSから0dBFSまでの音量の範囲を表現できます。)
0dBFSを超えるような大きな音が入力されると、その天井を突き抜けた部分が無視されて、不自然に平らに切り取られた波形になってしまいます。これが、ビリビリした音割れを生みます。クリップノイズ、クリッピングノイズとも呼ばれます。
天井に届くまではまったく変わりなく、天井を超えた瞬間にいきなり平らになるので、激しく音が歪むわけです。
マビノギの演奏でも、クリッピングノイズ、音割れが発生します。演奏をPC内で録音した場合、わたしの2台のノートPCで確認した限りでは、0dBFSよりもうすこし小さい音、-1.8dBFS程度が天井になって、それを超えた部分が切り取られます。この値がどんなプレイ環境でもおなじかどうかは、わかりません。PCの「サウンドのプロパティ」の設定によっても変わるようです(たとえば、ラウドネスイコライゼーションのような機能をオンにすると変わります)。マビノギ自体が-1.8dBFSまでの音量しか出せないということではありません。効果音などが重なったら、0dBFSに近づきます。
マビノギの演奏でクリッピングノイズが出ないようにするには、その天井に届かない範囲の音量に抑える必要がある、ということになります。ただし、環境設定の演奏音ボリュームを下げたり、離れた位置で聴いたりすれば、演奏の音量が下がって、天井までが遠くなります。つまりクリッピングノイズが防げます。
クリッピングノイズの実例を挙げます。ソロ演奏でもクリッピングノイズが起きる楽器はいくつかあります。たとえば、空き瓶を大音量で鳴らすと、ほとんどブザー音のように聞こえます。ここでは、ハープの低めの音を使って説明します。MMLは次のとおり。
MML@o2L1v13crv14crv15cr,o2L1v13erv14erv15er,o2L1v13grv14grv15gr;
オクターブ2のドミソを同時に3回鳴らすだけのMMLです。1回目のドミソがv13で、続いてv14、最後にv15と大きくなっていきます。それをゲーム内で演奏し、「Audacity」というソフトで録音した内容が「クリッピングノイズのテスト_MabiMML.m4a」です。(以下の記述は、圧縮する前の音源に基づきます。掲載音源は圧縮しているので、わずかに波形が違っていますけれど、クリッピングノイズの試聴には影響ありません。)
演奏音源の前半は、マビノギの環境設定の演奏ボリュームが最大の状態で弾いたものです。1回目のv13では、まだピークは天井に届いていません。2回目になると、最大音量が-1.809dBFSの天井に達しますけれど、ほんの一瞬であり、クリッピングノイズもそんなに目立ちません。しかし、3回目のv15になると、さすがにクリッピングノイズが耳障りになります。
14秒からの後半部分は、環境設定の演奏ボリュームをすこし下げた(左ボタンを10回押した)状態(画像5)で、おなじMMLを演奏した録音です。1回目はピークの値が-4.49dBFS、2回目は-3.2dBFS、3回目も-2.01dBFSで、どれも天井に届いておらず、クリッピングノイズは発生していません。
画像6は、演奏音源の波形を「Audacity」で表示しているようすで、v15の音の鳴りはじめ、0.1秒間くらいの部分です。上が前半の、つまり演奏ボリューム設定が最大のとき、下が後半の、少し下げた設定のときの音。少し下げたほうの波形は正常です。上のほうで、数サンプル以上にわたって平たくなっている(クリップしている)ピーク箇所があります。画像で赤丸をつけて示しています。これらがビリビリしたクリッピングノイズをもたらすのです。
環境設定の演奏ボリューム設定は、数値で表示されず(レジストリには数値で格納されていますけれど)、目盛りのないバーになっているので、最大に振り切っておくのが、おなじコンディションの維持が保証できる最善策です。とはいえ、そんなの演奏愛好家の常識でもなんでもないし、そうしていないプレイヤーもけっこういると思います。「このひとの演奏、音が割れまくりだなあ」と思っても、それは、演奏ボリューム設定を最大にしているからそう聞こえているに過ぎず、演奏者のほうは、中くらいのボリューム設定が当然と思っているかもしれません。また、繰り返しになりますけれど、やや離れた場所で集中鑑賞モードを使わずに聞けば、音が小さくなり、音割れもさしたる問題ではなくなります。そういうわけで、ほかの演奏者の音割れ演奏については、目くじら立てないほうがいいかな、というのがわたしの考えです。自分の演奏については気にしますけれど。
聴き手によって音が割れるかどうかが異なるということは、別のいいかたをすると、意図的な音づくりとしてあえて音割れさせてみても、それがみんなに伝わるとは限らない、ということでもあります。