エリン音楽ひろば 2022年6月

オンラインRPG『マビノギ』で、2022年6月30日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第5回、マリーサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベル)です。

このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.

内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を以下に要約しつつ、若干の掘り下げをしています。

今回、テスト合奏はありませんでした。エコーやリバーブの表現について、実例をまじえて紹介するコーナーを、最後に設けました。

ソロ用MMLのアレンジをするとき、3音に収める為にどの音高を優先して拾うべきか悩みます。みなさんどうしていますか

ふつう、主旋律とベースパートの音は省けませんから、主旋律とベースに含まれない「音高」(オクターブの高さを問わない「ドレミ」のことをここでは指すことにします)を、3音目に充てるのが基本となります。その選びかたについては、そのとき響いている和音のなかで、その和音らしさに欠かせない音高を優先するわけです。その判断がむずかしい、というのが質問の主意でした。

調に長調と短調があるように、三和音にも、長三和音、短三和音があります(ほかにもありますけれど省略)。ドが根音(和音のなかで土台となる音)であれば、前者の構成音は「ド・ミ・ソ」、後者は「ド・ミ♭・ソ」となります。また、ラが根音の三和音なら、それぞれ「ラ・ド♯・ミ」と「ラ・ド・ミ」です。これらの例からわかるように、前者と後者は、1音だけ違うわけです。つまり、この音が抜けていて「ド・ソ」だけだと、長三和音、短三和音の区別がつきません。したがって、「ミ」か「ミ♭」かの情報が大事です。もしベースが「ド」、メロディが「ソ」なら、「ミ」か「ミ♭」がどうしても必要になります。

とはいえ、1小節のなかで、メロディがずっと「ソ」を鳴らしつづけているとは限りません。たとえば、メロディが「ミソソー」でベースが「ドドドド」なら、これだけで「ド・ミ・ソ」の和音がその小節を支配していることが伝わります。もっといえば、伴奏が分散和音で「ドミソミ」と鳴らしていれば、それだけで和音が伝わります。1小節の間のどこかに、和音らしさを決める音高が目立つ形で総登場していさえすれば、あまり破綻せずに済みます。(もちろん、根音など、最初に鳴ってくれないと困る音高もあれば、途中でちらっと出てくれればそれでいい音高もあります。)

「ド・ミ・ソ」か「ド・ミ♭・ソ」の場合や、あるいはこれらにさらに音が加わって「ド・ミ・ソ・シ」とか「ド・ミ・ソ・シ♭」とか「ド・ミ・ソ・レ・ラ」とかの和音になっている場合、「ソ」の音は最優先して省けます。理由は次のとおりです。

画像1:「倍音説明用リュート独奏」のスペクトログラム
倍音説明用リュート独奏_MabiMML.m4a[AAC]

リュートでC3(オクターブ3のド)を単音で弾き、続いてC3、E3、G3、C4、E4、G4(オクターブ3のド、ミ、ソ、オクターブ4のド、ミ、ソ)と順番に鳴らし、最後にC3とE4(オクターブ3のドとオクターブ4のミ)の2音を鳴らしたものの録音を載せました。そして、画像1は、その音源のスペクトログラムです。ピアノロールとおなじように、縦が音の高さ、横が時間をあらわし、色が明るいほど、その高さの成分が強い、ということを示しています。

この画像1でわかるとおり、単音を弾いても、ただ1種類の高さだけが鳴っているわけではなく、2倍、3倍……の高さも小さく鳴っています。これを「倍音」といいます。倍音の強弱は、音色によって変わります。

いちばん下の、いちばん豊富に鳴っている高さを基音と呼びます。そこから2倍の高さの倍音は、ちょうど1オクターブ上の音高と等しくなります。画像の左の「ド」の2倍音と、まんなかあたりの「ドミソドミソ」の4音目の「ド」の基音とを比べてみれば、そのことが確認できますね。そして、3倍の高さの音は、「ドミソドミソ」の最後の「ソ」の音とおなじ高さです。

つまり、「ド」を鳴らしたら、その倍音に「ソ」の音高の成分もすこし含まれているのです。さらに上の倍音も見ていくと、5倍の倍音が「ミ」にほぼ一致します。ただ、5倍ですから、基音からかなり遠く、小さくなります。もっともっと上の倍音には、ほかの音高も出てきますけれど、どんどん微小になります。

説明用音源で、最後に「ド」と、1オクターブ以上離れた「ミ」とをハモらせています。弾いている音はあくまで2音ですけれど、「ド・ミ・ソ」の成分が基音の近くでちゃんと出揃っているのが確認できます。

これが、「ド・ミ・ソ」の和音のうち「ソ」の音符を省いてもサマになる理由です。「ソ」があってもなくても、あんまり和音の雰囲気が変わらないのです。逆にいうと、ほかの音を完全に省くと、ニュアンスが変わってしまうということになります。たとえば「ド・ミ・ソ・シ♭・レ」の和音であれば、「ミ」と「シ♭」と「レ」がある程度の範囲(1小節間など)のうちに総登場するよう、各パートの音を構成しましょう。根音の「ド」も、必ずしもずっと鳴らさなくてもよくて、最低限、和音が変わる最初など、要所で鳴らせば、たいていOKです。

これはあくまでも、和音の機能性を維持する為の方法ですから、原曲にできるだけ忠実に、ということなら、ほかのことを優先する場合もあるでしょう(耳につきやすいトップノートを優先して拾う、という意見も出ていました)

というわけで、ドレミで話を進めましたけれど、「度数」の概念を使えば、もっとスマートに説明できる内容でした(めろさんの記事のほうに図説もあります)。たとえばさっきの「ミ」か「ミ♭」が大事、というのは、「3度の音」が大事、といい換えられます。ところがこの「度数」、音楽理論嫌いを生む最有力候補なので、ひろばで安易に持ち出すと、「ぜんぜんわかんない、つまんない、帰ろ、帰ろ」ということにつながるから、あまり使いたくないわけです。

和音パートにディレイ音を入れたら、シロフォンだと付点8分ディレイがかからない。フルートやマンドリンでも、メインの音が消えてしまう。一方、リュートなどはかかった。楽器によるのでしょうか

おなじ音高の音符を重ねることによって、意図と違った演奏になってしまう、ということのようでした。

まず、シロフォンについては、小太鼓やシンバルなどとおなじで、メロディパートの内容しか演奏に反映されません。

「MabiIcco」(v1.0.49以降)では、ひとつの楽譜内でおなじ音高の音符を重ねられるかについての情報が確認できます。

画像2:「MabiIcco」の画面・音域ごとに色分けされている縦線

画像2は、リュートの音色を選んだ場合です。音域ごとに色分けされている縦線があります。赤は音域外であり、音が出ません。E1からB3までが青になっていて、この音域は、おなじ音高の音符を重ねられます。C4から上は緑で表示されていて、この音域は、おなじ音高の音符を重ねた場合、先に鳴らしていた音が切れます。

MIDIデータをシーケンサーソフトで打ち込む際、おなじフレーズをちょっとずらして別トラックに貼りつけて音量を下げることで、かんたんにディレイが鳴らせます。マビでも、別々の楽譜にディレイパートを割り当てれば同様です。しかし、ひとつの楽譜の「メロディ」「和音1」「和音2」内では、音符がぶつかってしまいます。(「3MLE」はそれらも個別の「トラック」扱いですので、MIDIシーケンサーみたいな感覚で作業すると、ゲーム内で弾いて、あれれっ、ということにつながりやすいのかもしれません。)

「MabiIcco」ユーザーなら、縦線の色を確認すればよいのですけれど、そうでないなら、マビノギの楽器の詳細のページを参照してください。各楽器の説明に「音域」や「同音重ね」の項目があります。

リズム系がちょっと苦手で、ドラムがいまひとつかっこよくならない。ドラムの各パーツの使いかたがよくわからない。コツみたいなのはありますでしょうか

その場で、ドラム譜面をひとつ弾いていただきました。そのあと、表情付けや音色づくりに関する話がいくつか出ました。

ドラムの打ち込みがうまくなりそうな遊びとして、次のふたつが思いつきます。

  • 生ドラムの演奏を(動画などで)観察したり、自分でもエアドラムで手足を動かしてみてイメージしたりする。
  • 8ビートのありきたりな定型パターンをいろいろ入力してみて、そこから音量を加減したり、ハイハットやスネアやバスドラムを1打増減したりして変形させて、ノリの変化をつかんでみる。慣れてきたら、ハネるリズムや16ビートなどの定型パターンでも同様に。

ドラムが実際に叩けるようになる必要はなく、手順がおおまかにイメージできるようになればいいと思います。すると、腕は2本までしかないから、スネアとタムとシンバルを同時に叩くことはできない、ということなどにも注意が行き届くようにもなります。もちろんこれは、人力による演奏らしさを再現する場合の話で、リズムマシンなどで鳴らすドラムの表現には関係ありません。

マビのドラムでランダム演奏してみてもわかるように、定型パターンをくりかえすだけでもそこそこサマになります。無理に我流で音をならべるよりも、まずは定型パターンをつぎはぎすることから始めるほうが近道かも。慣れたら、フィルイン(メロディなどの切れ目、たとえばAメロからBメロに切り替わる直前などに挟むフレーズ。タカトンッ、とか、タラッタッタッタタン、とか)も、織り込んでみましょう。これも常套句がいろいろあります。フィルイン以外のところでは、あまり不規則にフレーズを動かさないほうが無難かもしれません。

ドラムの各パーツについては、これもやはり、マビノギの楽器の詳細のページに載せていますので、御参考に。

各パーツのなかで、A2のB2のスネア、A3とB3のハイハット、E4とF4のライドシンバル、これらの使い分けには、ちょっと迷うところだと思います。奏法が違うわけですけれど、マビで鳴らすぶんには、どちらの音色を使えば曲に似合うか、という点で選んでもかまわないと思います。また、速く連打するとき、おなじ音色で連打するより、スネアならA2とB2とを交互に鳴らしてみると、自然な感じになります。それぞれ、音量感もちょっと違うので、音量指定をいちいち入れずに済む、という利点もあります。ハイハットの8分音符刻みで、A3とB3のハイハットを交互に配置することも、よくやります。おなじ音・おなじ音量で連打すると、いわゆる「マシンガン」になって、へたな打ち込みっぽさが出てしまいます。

E4のライドシンバルは、ふつうに使うぶんにはジャズ向けの音色かもしれません。かなり音が小さめ。F4のほうはロックで使えます。

「音楽NFT」と呼ばれるものを買ったり、関心を持ったりしていますか。または「音楽NFT」や「NFTアート」に対して、どう考えていますか

これはわたしが投げかけた質問です。

2021年ごろから、仮想通貨の仕組みを応用した「NFT」が、急速に注目を集めはじめました。

音源(にかぎらずデジタルコンテンツ)をウェブ上で公開・販売しようとする場合、いくらでもその品物が複製できて、その複製が自分の預かり知らぬところで勝手に配布されかねない、という点が悩みになります。これはなかなか防げることではありませんけれど、どうやっていくのが現時点で最善か、悩んでまごまごしていたそんな折、NFTという言葉を知り、興味をもったのが今年1月でした。

NFTを発行し、デジタルコンテンツに紐づけることで、そのNFTが「真贋証明書」の役割をするとされます。デジタルコンテンツ自体の複製は防げないけれど、NFTは唯一のものであり、複製できません。改竄もほぼ不可能だし、発行者や取引の履歴がすべてたどれます。また、小さなデータであれば、NFT自体にデジタルコンテンツを含めることもできます。

と、こういうふうな解説を読んでもピンとこないので、「OpenSea」や「Rarible」というNFT市場に、試しにファイルを登録してみたものの、無料でできる範囲だと、単なるアップローダーと大差ない印象しか得られずじまい。そもそも仮想通貨すら持ったことのない人間にとって、NFTはなおさらイメージしにくい、わかりにくい代物です。6月にはいってから、ブロックチェインのことも含め、改めて勉強してみたら、これはどうもわたしの求めているものと違うようだ、ということがようやくわかってきました。安易に用いるべきではない理由がたくさんありました。

でも、記事や文献やツイッターの声などだけで知った気になるのは危険かもと思って、もうちょっとリアルな声を聞いてみたい、ということで、ひろばで質問することにしました。NFTについての認知度を推し量るヒントにもなるだろうと。

「オンラインRPGを(昔から)やっていて、音楽に興味がある、10数人規模の集まり」という偏りがありますけれど、参考までに書きとめておくと、「NFT」なんて知らなかった、というかたがほとんどでした。ちなみに、仮想通貨の元祖「ビットコイン」は、もう浸透している言葉のようでした。

そういうわけで、話がまったくはずまなくてちょっと寒かったのですけれど、それはさておき、NFTと紐づけて作品を発表しても、喜ぶひとは今後しばらくほとんどいないだろう、ということが確認できました。

特集・エコーやリバーブっぽい音を作るには?

こういう、MMLミニ講座的な企画もやれたらいいねというのは、エリン音楽ひろばをやろうという計画を立てていたときから、話に挙がっていました。

音のお化粧テクの代表格、エコーのつけかた、リバーブっぽい音の表現のしかたについての紹介です。マビノギの演奏システムでリバーブを付加することはできませんので、あくまでリバーブ「っぽい」音に聴かせるやりかた、ということになります。

このページにすべてのことは載せないのですけれど、どんな感じの内容だったか、流れをひととおり記してみます。

まず、なにごとも基本から、ということで、エコーとはなにか、リバーブとはなにか、という話からしました。

山で「ヤッホー」と叫べば、遠くの山から音がはね返ってきます。この山彦がエコーです。山でなくても、壁、天井、床、そのほかいろんなものにぶつかって反射してくる音は、すべてエコーです。

エコーが無数に集まった響きを、リバーブといいます。コンサートホールや銭湯などでよくわかる、ぼわーん、と長く尾をひく響きです。

日本語に置き換えると、エコーは反響、リバーブは残響です。反響・残響は字面が似ていてまぎらわしいから、この講座のときは、あまり反響・残響という言葉を使わずに説明していました。一般的には、リバーブの意味も含めてエコーと呼ぶこともよくあります。

エフェクト絡みで、ディレイとエコーの違いについても話しました。音が遅れて届くという点で、どちらもおなじです。でも、山彦のことをディレイとはふつういいません。わたしの理解では、ディレイというのはあくまでもエフェクトとして捉えたときの言葉で、人工的な(テンポに合わせるように鳴らしたりもする)効果、エコーのほうは、自然現象(を模倣した効果)、というように使い分けられる、と捉えています。でも、べつに厳密な区別はなくて、ディレイとエコーは「呼びかたが違うだけ」と思っておいて大丈夫、というようなことをしゃべりました。音楽(とくにDTM周辺)の言葉は、わりと用法が混乱している言葉が多いから、あまりこのへんのことを気にしすぎて「○○と△△の違いをわかりやすく解説!」みたいな記事を読んでますます頭が混乱してしまったりすると損なので、そういう意味であえて触れたという面もあります。とんちんかんな説明をしてしまわないよう、改めて調べて言語化してみて、自分でもちょっと整理できた気分になりました。

ふつうのエコーは、もとの音にくらべて高音域が弱くなるのですけれど、そういった(DTM向けな)話はしませんでした。

続いて、MMLで(打ち込みで)エコーをどうつけるか、リバーブをどう表現するか、ということを、童謡や自作曲をネタにして実演していきました(画像3)。

画像3:特集コーナーでの実演

どんなふうに音を置いているのか、ピアノロールの形で図示してお絵かきチャットで出していった、というところがわたしなりの工夫でした。エコーとはなにか、の説明時に必要な画像もふくめて、18枚用意して、本番では15枚を出しました。ちなみに、前回と前々回は7枚程度でした。

実践例とともに説明したあれこれについては、このページでは割愛します。

わたしの曲では、「薄暮色に沈む単機」と「病めるときも健やかなるときも」を、エコーやリバーブの表現を抜いたもの、入れたもの、の聴き比べの形で演奏しました。当サイトにはMMLも載せていますから、研究の材料に使っていただけたら幸いです。

ひろばの方向性として、参加型であることを大事にしているのですけれど、今回は、取り上げる内容の性質上、また、時間がかかりすぎないよう、紹介・解説に徹した形にしました。みんなでやってみる、という要素が足りなかったので、最後くらいみんなで合奏を、ということで、エコーの効果をつけた大人数合奏の例として、めろさんの曲を演奏して締めにしました(画像4)。

画像4:特集コーナーの締めの合奏

今回は、かなりかっちり台本をつくりました。打ち合わせをもとにして、めろさんがオンラインのスプレッドシートに書き込み、それをわたしがさらに加筆して、仕上げていきました。この分量ならこのくらい時間がかかる、という目安がひとつできた点は、主催としての収穫でした。

スクリーンショット集

画像5:開会前

開会10分前、BGMを流しているときのようす。(例年だったら)梅雨どきですから、しっとり、暗めな曲を中心に。サポート役のかたが、PCの不調でエラー落ちしやすい状態なので、今回は仕事を回さず、わたしやめろさんが自分で演奏しました。

画像6:22時25分ごろ

今回は(今回も)実践的な議題が多く、なかなか口を挟めなかった、というようなかたが多かったかもしれません。それでも、演奏会界隈によく顔を出すようなかたからは、好意的反応もいただいたのですけれど、そうでない層のかたにとっては、なかなか近寄りがたい場なのでしょうか。こわくないぞ!

画像7:エンディング

記念撮影とともに、エンディング曲……なのですけれど、集合写真を撮りそこねました。

0時きっかりにエンディングにたどり着けて、ひと安心。お越しいただいたみなさん、ありがとうございました。