エリン音楽ひろば 2024年8月

オンラインRPG『マビノギ』で、2024年8月25日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第18回、ルエリサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

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内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を要約しています。当日に言及できなかったことも書いています。今回はまじめな質問ばかりですね。

コード進行からメロディをつくろうとしていまして、メロディが、すこし暗いマイナー(短調)な感じと、すこし明るいメジャー(長調)な感じとごちゃまぜになってしまうのですが

作曲途中のMMLをその場で聴いてみました。〈Am―F―G―C〉の繰り返しでした。このパターンは、定番のコード進行のひとつとしてよく知られています。

調性がごちゃまぜになってしまう、ということは、長調か短調かはっきりするように書きたい、ということでしょう。さて、これは〈Am〉(Aマイナー)コードから始まっているから短調なのでしょうか。それとも、メジャーコードが3つも並んでいて〈C〉(Cメジャー)コードに向かって進んでいくから長調なのでしょうか。

〈Am〉を「トニックコード〈C〉の代理コード」と捉えると、長調のようでもあります。その場合、ローマ数字でコード進行を表記すると〈Ⅵm―Ⅳ―Ⅴ―Ⅰ〉となります。短調だとすると〈Ⅰm―♭Ⅵ―♭Ⅶ―♭Ⅲ〉になります。こうやって書くと、全然別物のように見えます。あるいは、頻繁に部分転調を繰り返し、AマイナーになったりCメジャーになったりしている、と見てもよいでしょう。いったい、どう解釈したらいいのかわからなくなりますね。この手の説明には、どうもこじつけっぽさを感じてしまいます。無理があるというか、腑に落ちないというか。……だから、下記リンクの記事を見つけたときには、胸のつかえがおりたようでうれしくなったものでした。

「SoundQuest」では、西洋クラシック音楽由来の理論も、ジャズ由来の理論も踏まえた上で、〈自由派音楽理論〉を構築しようという野心的な試みがされています。本件にいちばん関係のあるページへのリンクを張りましたけれど、初歩的なところの解説記事からじっくりたどって読んでいくと(あるいは拾い読みでも)、目からうろこな話がいろいろ出てくると思います。(逆にいうと、ほんとに最初の学びたてであれば、従来型の理論に則った入門記事からあたるほうが順序がよいでしょう。)

それで本件ですけれど、ひろばの当日のトークのなかでは、「マイナーとメジャーといりまじるのは、メロディとしては普通でしょうか?」という懸念に対して、「長調らしさと短調らしさを行き来するのは、いまのポップスではごく自然なことだから問題なし」というような話をしました。

バロック音楽の時代以来、長調・短調の世界観による音楽がたくさん生まれ、現代の音楽の多くもその影響下にあります。音楽を分析する切り口として、長調・短調の二分法は主流に違いありませんけれど、それにこだわりすぎる必要もありません。

小節ごとのコードひとつひとつに対してあまりべったり寄り添いすぎると、まとまりのない、めりはりに欠けるメロディになりがちです。そんなときは、もうちょっと俯瞰して、フレーズのまとまり(4小節なり8小節なり)の流れを重視するといいと思います。どの音・どの和音を目がけて着地したいかを意識しながら、すこし先を読んで、フレーズの終わりから逆算する、そういう感覚がつかめると楽です。

曲全体の印象を長調に寄せたいなら、フレーズの終わり、着地のところでメジャーコードを使って、そこに向かってメロディの流れをつくってみましょう。途中は山あり谷あり、いろんな色に染まっていいのです。そうやっているうちに、だんだんコード進行も自分でアレンジしたくなってくるはず。

チューニングフルートやチューニングホイッスル、音はとても魅力的なのですが、(発音の伸びが)短すぎて使いにくいです。何とか長い音を自然に鳴らす方法は……

64分音符のような短い音符を並べると効果的です。おなじ高さの音をずらっと並べるトレモロ、〈ドミソドミソ……〉のように分散和音を並べる高速アルペジオ、どちらもチューニングフルートと相性よし。女声幻想のコーラスでもおなじ技が使えます。ただし、長い音符でピィーと鳴らすのにくらべて、音量が小さくなる傾向があります。

テンポによって、響かせかたによって、また使える文字数によっても、最適な音符の長さは変わってきます。あえて長めの音符を連打することで、ビブラートっぽいふるえを強調することもできます。

高速アルペジオやトレモロは、文字数を大量に消費します。1本だけなら、ザブキエルの楽譜集を使うのをためらう理由はないと思いますし(最近は相場が安い)、はじめからそう決めて取りかかるほうが気が楽です。

残念ながらチューニングホイッスルのほうは、アタックの部分にクセがありすぎるので諦めざるを得ません。ただし、低音域はアタックがゆっくりしているので、まだ望みがあります。おなじ高さの長い音符を複数パートでずらして配置して、片方の音符の発音が終わりそうな手前で、もうひとつの音符の発音が始まるようにすると、わりとなめらかにつながります。多少は音量の大小がついてしまいますから、音符の位置や音量を調整するなどして、なんとかごまかすべし。なお、これはチェロなどでも使える技です。

フルートとホイッスルは音の波形が正弦波に近いので、何個も重ねればどんな音色も理論上は作れるはずですが、シンセサイザーみたいにして試した方っていますか?

音色づくりの話は、これまでのひろばでも何度か話題に出ました。違う種類の楽器の音色を重ねたり、おなじ楽器でオクターブ違いで重ねたり。

正弦波は、なめらかな波の形をした波形で、三角関数で表現できます。時報の音、といえば音色がイメージできるでしょうか。

あらゆる音波は、さまざまな周波数の(あるいは無限個の)正弦波に分けることができます。この分解手法をフーリエ変換といいます。たとえばこれによって、時間と周波数成分との関係を視覚的に表わすスペクトログラム画像の例が生成できます。「三角関数なんて習ってなんの役に立つの」と知人に訊かれたなら、こういうことができるんだぞ、DTMやってるひとの役にも立ってるんだぞ、と答えておきましょう。もちろん、道具をただ使うだけなら、三角関数やフーリエ変換の知識は要りません。

「音の波形が正弦波に近いので、何個も重ねればどんな音色も理論上は作れるはず」というのは、そういう文脈での話です。

ただ、マビノギのフルートの音域は3オクターブ、ホイッスルは2オクターブ半くらいしかありません。擬似的に倍音を足して音色づくりをしようとしても、3オクターブの範囲内では、たいしたことができそうにありません。でも、「意識して聞こうとしても聞き取れないくらいの音をこっそり重ねる」ことでなにかできないか摸索する、という姿勢そのものは、音色づくりの秘訣といえるかも。

ちなみに、人間の声の「あいうえお」なんかも、倍音の分布に規則性があります。子音はちょっと苦労しそうですけれど、徹底的に真似すれば「正弦波で唄う」こともできます。マビノギの楽器の音色だけで人間の歌唱を摸そうとしたおそるべき楽師もいます。

サックスの音作りたいけど……どうやってもできなくて、なんかヒントないかなぁって

こちらも音色の話。素朴に考えて、シャリュモーかチューバが候補になりますけれど、どちらも本物のサックスの音色とは隔たりがあります。ほかの楽器と組み合わせるにしても、これといったレシピはなさそうで、めろさんも、音色づくりを「色々試してみたけどコレってのは見つからなかった」そうです。

わたしはあんまり、サックスなどラッパ系の音を模倣しようという欲がありません。昔「ちくわビバップ」というジャズ系の曲をつくりました。これも、ただ音色だけ聴いても、脳内補正を加えないことにはサックスのイメージが浮かんでこないでしょう。

逆に、脳内補正させれば勝ち、というふうに考えてみましょう。きっとサックスなんだろうな、と思わせられるような雰囲気づくりができれば、音色がすこし違っていても問題にならない……はずです。

ジャズでのサックスの演奏をつぶさに聴くと、かなりの強弱がついていることに気づきます。それに倣って、音量をおおげさに調整したり、アタックの部分だけところどころ強調したり、装飾音をいっぱい入れたりしてみるといいのかもしれません。

「その音楽の素晴らしさはその音でないと表わせないのか」という大事な問いも出ていました。〈本家の音〉にあまり執着しすぎて、こうあらねばならぬと思ってしまい、前に進めなくなったなら、「マインクラフト」の四角いブロックに思いを馳せてみましょう。「トランペットとサックスの実装を早くしてー」と泣いたりするのは、「こんなカクカクしたブロックだけあってもなんにも再現できないよ」と嘆くようなもの……たとえがちょっと強引?

企画コーナー・サイコロトーク

休憩を挟んで、後半のコーナーは「サイコロトーク」です。

マリーサーバーでの前回のサイコロトークのようすはエリン音楽ひろば 2023年12月の記事に、そしてタルラークサーバーでの前々回のぶんはエリン音楽ひろば 2023年4月の記事に載っています。

今回で、3サーバーそれぞれ1回ずつ、このコーナーを開催したことになります。

参加者のかたにサイコロを振ってもらい、出た目によって以下のテーマで数分しゃべっていただく、という交流企画です。

画像1:サイコロトークのトークテーマを書いたお絵描きチャット
  1. めろに・シラベルに質問
  2. 初めて買ったCD・レコード(・配信音源)
  3. 思い出に残っているマビノギの演奏会・イベント
  4. キャラ名の由来
  5. この夏いちばん聴いた曲
  6. 好きなマビノギBGM

最初のひとり目は自己申告で出てもらいたかったのですけれど、いなかったので、紙ヒコーキを飛ばして落ちたところに一番近いひとを当てる、ということにして、その場で「きらめく紙」を競売場で買って(便利な時代になりました)、すいっと宙に投げたところ、思いのほか15メートルも飛んで、いましがた来たばかりのかたの近くにストン。さっそくサイをふっていただきました。

画像2:サイコロトーク・一番手

前もって、目安として来場者の人数の3分の1くらいのかたにサイを投げてもらおうというふうに決めていたのですけれど、欲張ってちょっと多めにしました。ふたり目以降の6人ぶん、サイコロの結果を1枚につなげてまとめました(画像3)。このとおり、今回は偏りなく目が出ました。

画像3:サイコロをふったときのようす・6人ぶん

普段聞けない話がいろいろ出てきて、どきどきしつつも興味津々。なのですけれど、チャットをばんばん挟み込むのが得意なひとが会場に少なかったから、主催が話を転がしていかないといけない場面も多く、それなのにわたしは子供じみた相槌くらいしか打てず、めろさんも切れ味のある返しができるタイプではない(?)ので、どうだったのかなあ、という感じでした。こればかりは事前に練習できないですからね。あと、やはり恐怖の罰ゲームかなにかみたいに思われているふしもありそうで、しゃべり終えたあと胸をなでおろしてホッとため息をついていたかたも。

スクリーンショット集

画像4:開会時

人数が増えるまですこし待ってから、21時15分ごろにオープニングです。椅子アイテム(「恋咲島ハンモック」)でヤシの木を出しているのが、いい感じ。

画像5:休憩BGM

前半・後半を区切る休憩時間。わたしはチューニングフルート2本による新しい合奏作を初演しました。ちょうど、チューニングフルートの音の伸ばしかたについての質問が出たので、その実例にもなりまして、つくってきてよかった、という感じでした。めろさんは、盆踊りイベントの宣伝を兼ねた曲をひとつ。

画像6:エンディング

サイコロトークを終えて、23時50分ごろに閉会でした。はじめて参加されたかたも、いつも来てくれるかたも、ありがとうございます。

さて、次回についてです。本来のスケジュールなら10月末に開催なのですけれど、本ページ公開時点では未定とさせていただきます。理由については省略します。めろさんと打ち合わせを重ねて、のちのち改めて予定をおしらせします。