インフレ大宮殿

シラベル作曲「インフレ大宮殿」の紹介ページです。

MML

マビノギ用MMLとその演奏音源を公開しています。

フリースタイルジャム専用譜面です。

フリースタイルジャム

MMLの最終更新日
2023年7月17日
演奏音源

演奏で使われる楽器は毎回変わることになります。これらの音源は一例です。リスニング用途としてはテイクAがおすすめ。冒頭の無音部分は省いています。「参考音源」や「説明」の項も参照。

インフレ大宮殿_MabiMML_テイクA.m4a[AAC]
インフレ大宮殿_MabiMML_テイクB.m4a[AAC]
演奏時間
約4分30秒
備考・注記
フリースタイルジャムで演奏します。ジャム主催者がエレキギターを受け持ち、参加者が(空き瓶以外の)任意の楽器で参加します。
現仕様との適合性
対応済み
楽譜

参考音源

エレキギターだけでソロ演奏するとどうなるか、という参考音源を載せる……のもつまらない気がしたので、エレキとリュートだけによるミックスを用意しました。参考資料ということで別項に分けましたけれど、使用MMLは上に載せているものとおなじ。ほかの音源とあわせて聴くと、MMLの骨組みがすこし見えやすくなるかと思います。

インフレ大宮殿_MabiMML_エレキとリュートのみ.m4a[AAC]

すこし前の版

2022年10月15日の演奏会で弾いたときの(自分の環境で鳴っていた)演奏音を記録したものです。使ったMMLも現在の版とすこしだけ異なります。ジャムをするとどうしても重くなり、わたしのプレイ環境だと音飛びしがちで、公開できる水準の録音素材がこれしかありません。この音源も、最初のほうで再生がちょっとヨレている箇所があります。プチプチノイズは、おもにチューバの発音によるものです。

64bit改変より昔の演奏なので、すこし演奏音が大きめで、左右の定位が充分に拡がっています。定位が途中で動くのは、演奏中にカメラアングルを回した為です。

インフレ大宮殿_MabiMML_Live2022-10-15.m4a[AAC]

説明

単なるソロ譜面ではありません。フリースタイルジャムでいろんな楽器と一緒に弾くことで成立します。演奏結果が毎回変わる、不定形な曲です。

フリースタイルジャムについての解説記事は、マビノギのフリースタイルジャムによる演奏のページにあります。

以前にも、4人、5人ぶんの楽譜と自由参加によって成立するような「フリースタイルジャム合奏」をつくったことがありました(サイトにはきよしこの夜」を載せています)。そういう作品をフリースタイルジャム縛りのユーザーイベントでやったりなんかすると、手間取ってどうも好まれないようで、かといってふつうのソロ譜面を持っていくのもおもしろくないから、どうしたものかなと悶々としているうち、1本の譜面でもなにかフリースタイルジャムならではのことができるかもしれないとひらめいたのが、制作のきっかけでした。

F7以上の音高の音符が鳴らせるのはエレキギターとチューバだけ、さらにC8以上はエレキギターだけ、ということを利用して、F7からD♯8までの狭い音域を中心に、〈メロディ〉パートを組み立てました。このような作譜上の工夫は後述するとして、先に、4点もある掲載音源のそれぞれを説明していく形で、どういう楽器がはいるとどうなるか、というのを見ていきます。

掲載音源と楽器構成について

エレキにしか出せない音域の音符をメロディに使っているので、エレキが必須です。よって、ジャムの主催者がエレキを持ちます。

ほかの楽器は、空き瓶以外なんでもありです。ただし、チューバがひとり、ドラムがひとり(以上)加わるのが理想的パターンです。

欲しい音がひととおり揃っている、望ましい演奏例として「テイクA」と名づけた音源を用意しました。実際のジャムでは、なかなかこんなふうに鳴らないと思います。ただし、楽器を指定して固定メンバーで弾くなら再現できないこともありません。

テイクAは、以下の楽器を1本ずつ使ったミックスです。

つづいて「テイクB」。こちらは「チューバがない」「ハープがある」のが、テイクAとのおもな違いです。チューバが1本加わっていないと、メロディがやや引っ込みがちに聞こえます。ハープがあると、低音域の音が尾を引いて、もこもこした感じになりやすいようです。テイクBの音源だとちょっとハープの低音が邪魔っけですけれど、楽器の組み合わせ次第でそれほど気にならないかもしれません。また、歌(女声)が加わってもさほど支障のない設計になっているのが、この音源でも確認いただけると思います。

テイクBは、以下の楽器を1本ずつ使ったミックスです。テイクAで使っていない楽器をなるべく選びました。

64bit改変後の現状だと、主催・参加者は演奏音がほぼモノラルで聞こえることになるでしょう。でも、これらの音源では聴き心地を優先して、半数の楽器の定位をすこしだけ左右にずらしてミックスしています。

テイクA・Bはいわばシミュレーションの演奏音源です。実際にジャムをしたときの音源も載せました。2022年10月15日の演奏会で弾いたときの録音です。ジャムに参加したみなさんありがとうございました。「ドラムがない」「エレキが2本ある」のがテイクA・Bとのおもな違いです。また、当時のスクリーンショットを見るかぎり、参加人数が16人に達していなかったようです。テイクA・Bでは、各楽器をまんべんなく1本ずつ入れていますけれど、たいてい実際のジャムでは、おなじ種類の楽器が複数参加することになりましょう。この曲の場合「エレキが2本」は問題ないのですけれど、たとえば「リュートが5本」とか「ピアノが4台」とかになるとちょっともの足りないかもしれません。楽器の偏りが小さいほうが、豊かな響きが期待できます。後述するように、後半部分はドラムを考慮して書いているので、ドラムが参加しているほうがこのMMLのポテンシャルが発揮できるのですけれど、いつもドラムが参加してくれる保証はないし、むしろフリースタイルジャムで使われづらい類の楽器かもしれません。かといってドラムの参加を推奨するアナウンスを入れたりすると、注文がうるさくなってしまいます。

楽器の数を絞った音源もあるほうがいいかと思って、「エレキとリュートのみ」の音源も載せました。エレキ(とチューバ)で鳴らされるメロディ部分とくらべて、伴奏がかなり抑えぎみなのがわかるでしょうか。10人くらいで〈和音1・2〉パートを鳴らして、エレキ1本でのメロディが埋もれないくらいのバランスを目指す、というような匙加減です。64bit改変以降、音割れしないように音量を抑える必要がなくなったから、音量を全体的にもっと底上げできるか探ってみたものの、エレキ1本が埋もれないバランスとして、このくらいの音量指定がやはりよさそうでした。もちろん、エレキが複数人加わってメロディの音量が増す可能性もあるし、すべてのケースを考慮することはできません。

ちなみに、ハンドベルが加わった場合、ところどころで違和感はあるものの、鳴る箇所も音量も限られているので、全体的にはそれほど致命的なことにはなりません。

空き瓶がはいるとちょっと台無しになります。これだけは、どんなMMLを書いても対策のしようがありません。空き瓶での参加だけはだめ、と演奏前にアナウンスするしかありません。

17人以上の楽器が参加すると、いずれかの楽器が聞こえなくなります。どの楽器が聞こえなくなるかは、プレイヤーによってランダムに違うようです。もし主催のエレキのパートが聞こえなくなると致命的です。そういう意味では、エレキがもうひとり参加していると安心します。(主催の楽器は聞こえなくなりづらいとか、そういう法則があるのかどうかはわかりません。)

注意:上記の「17人以上の楽器が参加すると、いずれかの楽器が聞こえなくなります。」は、現在あてはまらない可能性が高そうです。2024年2月時点で、18人のフリースタイルジャムが正しく鳴りました。ただし、そのときは全員が別々の楽譜を持って演奏したので、この曲のように1本の楽譜を大勢でジャムする場合は、また違うことになるのかもしれません。

作譜の説明

マビノギのフリースタイルジャムによる演奏のページにもおなじようなことを書きましたけれど、フリースタイルジャムでふつうの(独奏用につくられた)独奏譜面を弾くと、つぎのような問題に直面します。

  1. 打楽器(太鼓やシンバルなど)や歌声がはいるとうるさい
  2. 音量が大きくなりすぎて、大きい音と小さい音の差が小さくなった圧迫感のある音になる(64bit改変前は音割れを招いた)
  3. 楽器によって発音される音域が違うので、とくにメロディ、大事なフレーズが以下のような影響を受けると、まぬけに聞こえることが多い
    • オクターブ番号が切り替わるところで、初期の管楽器類(フルート、チューバなど)が1オクターブずれて鳴る場合がある
    • エレキギターの場合は、E4以上とD♯4以下とで音色が分かれていて、その境目を上下するフレーズを鳴らすと、数オクターブの音程を跳躍することになる
    • とくにバイオリンやチェロなどにとって、発音する最高音のあたりを行き来して、大事なフレーズが虫食いみたいになることがよくある

このうち、ひとつ目・ふたつ目の項目は、ある程度対策できます。

ひとつ目については、極端にいえば〈メロディ〉パートになにも書き込まなければ問題なくなります。書き込むにしても、打楽器や歌声が発音できない音域に音符を置けばいいのです。太鼓類やシンバルなら、B0以下、またはC♯7以上なら発音しません。シロフォンも考慮するなら、下のほうはG♯0以下が安全圏。そんな極端な音域、まともに使えないよ、とふつうは思うところですけれど、エレキならD♯8まで鳴らせて、実際の発音は2オクターブ下になります。ただし、E7まではリュートほかいくつかの楽器が発音するので、E7以下とF7以上を行き来するようなフレーズだと、3番目に挙げたようなリスクがあります。

ふたつ目については、64bit改変前は、音量指定を〈v5〉から〈v7〉くらいにとどめておけば安全だろうという感触でした。(瞬間的な大音量はそれほどに感じないので、スタッカートぎみに短く切って鳴らすのもいいかもしれません。)いちおう、環境設定の演奏ボリュームを下げるなり、離れた位置で聴くなりすれば解決します。現在は、音割れの心配はほぼなくなりました。

そして、音域に関する問題については、すべて解消する必要はないにしても、気にしはじめるとなかなか厄介なところ。でも、そこが自作曲の強みで、問題が起きづらいような音の置きかたをしていけばいいわけです。パズルのようにいろいろ考慮しながら曲を書いたのでした。

主旋律を、エレキとチューバのみ発音する音域(F7以上)で書いています。チューバが鳴る音域(オクターブ番号7)の音符の音量を、鳴らない音域(オクターブ番号8)より抑えめにしました。後半部分では、チューバが鳴る・鳴らない音域を使い分け、あまり上下に音を動かして旋律的にせず、リズム刻みを前面に出したフレーズにしました。

伴奏についても、オクターブ番号が上下しまくるようなフレーズは避けていたと思います。それで平板な……いや、ロックっぽい伴奏を多用した曲調になったわけです。

ドラムがドラムらしいリズムパターンを鳴らしていたら、1本だけの楽譜でこんな音が、という驚きも増すことでしょう。ドラムの参加を期待して、曲の後半部分に、ヘビメタふうのドラムパターンを仕込みました。これがそのままほかの楽器ではリフ(短い反復フレーズ)になっています。フロアタムとスネアのオープンリムショットの音符はそれぞれG2とB2なので、GとB、つまり〈ソ〉と〈シ〉を交互に鳴らして違和感のない調でつくるという考えかたです。この曲の場合は、G2とA2の組み合わせにしました。ほかの楽器では〈ソソラソソソラソ……〉というフレーズになります。いちおうハイハット類も鳴らしていますけれど、音量的にあまり聞こえません。

また、作譜上の注意としては、Nコマンドにも気をつけないといけなくて、〈和音1・2〉パートのNコマンドの音符は、歌が発音してしまいます。それが目立ってしまう場合は、Nコマンドをふつうの音名記法に直す必要があります。音域外ならそのままにしても支障ありません。

逆に、〈メロディ〉パートで打楽器が発音する音符をNコマンドに書き換えると、打楽器の音量を抑えることができます。この曲では、シロフォンの鳴るところなど、ピンポイントでNコマンドに書き換えています。

せっかく参加している打楽器をまったく鳴らさないで済ませるよりは、ところどころで活躍させたいと思うのが人情というもので、とくに前半でシロフォンがちょこちょこ顔を出したり、シンバルの銅鑼が鳴ったりするのも、意図的にそういうフレーズにしています。銅鑼の音を入れるということは、D♯2の音高の音符を入れるということですから、そこで無理の生じないように(というより、そこでの違和感もカッコよいと強引に思わせられるようなタイプの)曲を書く、ということでもあります。まあ、つくっている最中は、きっと行きあたりばったりだったと思います。

ザブキエルの楽譜集を使っているので、文字数はたんまり費せたのですけれど、「3音縛り」には違いないので、高速アルペジオで和音を表現している箇所もあります。高速アルペジオのところは、リュートやウクレレなどが多いジャムだとやや硬めの、バイオリンやリラなどの比率が多いジャムだとエレガントな響きになると思います。

その他の補足

冒頭に小さな音量の4分音符があります。これは単に、(ここに載せている)音源をミックスする際、位置合わせに便利なように入れてあるだけです。ジャムの参加は主催より数秒以上遅れることになるので、6秒ほどの無音を挟んでいます。掲載音源は、その無音部分までをカットしています。さらにそのあと、エレキでノイズめいた音をうっすら入れてから、ようやくじわじわと始まります。イントロが終わるまでにはさすがに、ジャムの参加にみんな間に合うでしょう。少々じらしすぎかもしれませんけれど。

ジャム中のミニゲームは、開始後すぐに参加していれば、合計26回発生します。

曲のあらまし

2022年7月作曲。「MML」の節でいろいろ説明しているとおり、特殊な制約下でつくりました。狭い音域でメロディを暴れ回らせようとした結果、変拍子もはいったアバンギャルドな曲になりました(いまどきアバンギャルドだのプログレッシブだのもないでしょうけれど)。つくっている間、これは新しいことをやっているぞ、といううれしい実感がありました。タイトルは苦し紛れにつけたものです。

作品データ

曲名表記
インフレ大宮殿
曲名かな書き
いんふれ だいきゅうでん
作曲
シラベル
発表日
2022年7月17日