野付半島へゆきます
シラベル作詞・作曲「野付半島へゆきます」の紹介ページです。
宅録・DTM
歌入り音源
動画
2025年5月23日公開。
説明
おもに2025年4月から5月にかけて制作しました。それ以前からも断続的に取り組んではいたものの、なかなか進んでいませんでした。前作「けむり」から10ヶ月も経っての公開となってしまいました。
沈んだ曲調に合わせて、アコースティックギターではなくクラシックギターを用いました。以前、クラシックギターのブリッジが突然取れてしまい、木工用ボンドでくっつけて1日置いてから弦を張り直して以来、どうやら問題ないようですけれど、しばらくは弦の張りをすこしゆるめにしています。それで、今回は1音下げチューニングのカポタスト3フレットで録音しました。
ボーカルとクラシックギター以外のパートは、MIDIデータとソフトウェア音源を用いました。ベース、ピアノ(とオルガン)、グロッケンシュピール、ドラム、チェロを入れています。
MIDIデータは、別で載せているマビノギMMLの内容がもとになっています。マビノギの演奏音源にイメージが引きずられてしまい、手持ちのサウンドフォント類ではどうやってもちょっと違う、という感じになって、理想の音色を探そうとすると気が重くなりました。昔から抱えている、選択肢が多すぎて見通しが立たなくなる問題です。
とくにチェロのパートの音色に困りました。これまで宅録・DTM作品では、ストリングス類をあまり取り入れていなかったし、ちょっと苦手意識がなくもありません(とくにギターやストリングスを本物らしく聴かせるには、打ち込みの工夫だけでは超えられない壁があるように思います。ギターは本物を弾けばいいからいいのですけれど、ストリングスとなると……)。おなじフレーズをバイオリンやコントラバスなどで鳴らして全部混ぜ込んだり、いろいろ試した末、2種類の音源のチェロを採用しました。結局、ストリングスなんだか、チェロの独奏なんだか、どっちつかずの鳴らしかたになっています。
グロッケンシュピールも、ふたつの別のフリー音源から持ってきて重ねています。
ピアノは、音色の明るさ・強さに留意しました。柔らかすぎず、硬すぎず。間奏ではちょっとキンキンするかなというくらい。また、オルガン系の音をうっすらとピアノに重ねています。オルガンは、マビノギMMLでいうとフルートのパートがもとになっています。
やや広めの空間で鳴らしている感じが欲しくて、リバーブをいつもより多めにかける方針を採りました。歌入り音源の過去作にくらべてあまりにかかりすぎても釣り合いが悪くなるから、並べて聴いても違和感がない程度の設定を探る必要もありました。曲によって解は違うから試行錯誤するしかないとはいえ、もうちょっと要領よくやりたいといつも思います。
普段どのようにリバーブの設定をしているかというと、部屋の広さと(今作でいえば、横幅20メートル、前後の奥行き30メートル、高さ7メートル)、聴き手、各楽器の位置を仮定します。すると、前後左右上下それぞれの初期反射音の遅れと大きさが、楽器ごとに計算できます。それを出発点にして、よりよい感じになるように、場合によってはリアリティを犠牲にして、リバーブや初期反射音の音量など加減していきます。その加減の作業が、いくらやっても無限に終わらなくなりがちで、コツが掴めていません。また、ボーカルパートには別のリバーブもかけてツヤをつける場合もあり、こういうバラードだととくに効果的ですけれど、これもやはり、あまり欲張ってたっぷりかけすぎないようにしました。
ミキシングで半月以上費やしたようです。ただ、音源を試作してはMIDIデータを直し、各トラックを更新してはミキシングして、しまいには動画を仕上げる段階になってもミキシングをまたやり直したり、と行ったり来たりする制作スタイルなので、リバーブやイコライザーの加減だけで半月迷っていたということではありません。
動画については、「雨がやまない」のときとおなじく、曲が長いので色調の変化をつけました。こういうことするのは余計かなあ、聴き手の想像力を信頼してなにも味付けしないほうがいいかなあ、とも思ってかなり迷いました。Vチューバーのアバターがうにうにとアニメーションするような時代なのに、色だけいじって頑張ってみたところで素人臭が増すのみで無益な気もします。20作くらい、動画の様式はあまり変えずに統一感を保つ方針でやってきましたけれど、機会を見てやりかたを改めるべきかもしれない、と考えています。
MML
マビノギ用MMLとその演奏音源を公開しています。
10人合奏です。
10人合奏
- MMLの最終更新日
- 2024年8月2日
- 演奏音源
-
冒頭の調律部分を含みます。
野付半島へゆきます_MabiMML.m4a - 演奏時間
- 約7分40秒
- 並び順
- チューニングバイオリンが中央。左側にチューニングチェロ、ピアノA・B。右側にフルート、ハープ、シロフォン。ほかは中央の近くに。
- 現仕様との適合性
- 対応済み
- 備考・注記
- シロフォンは要チューナー。チューニングバイオリンは調律失敗が聞き分けづらいのでチューナー装備推奨。
- 楽譜
-
※すべて、歌パート除外で入力。
- チューニングバイオリン (文字数:1479・1173・896)
- チューニングフルート (文字数:1599・1192・661)
- リュート (文字数:1586・1118・900)
- ピアノA (文字数:884・860・492)
- ピアノB (文字数:1344・899・861)
- フルート (文字数:1584・1118・900)
- ドラム (文字数:1534・1164・758)
- ハープ (文字数:1599・1194・876)
- チューニングチェロ (文字数:1597・922・346)
- シロフォン (文字数:1600・0・0)※要チューナー
歌詞
探さないでくださいって 書いたら大騒ぎするでしょう だから正直に書きました 野付半島へゆきます 霧が浮かぶ釧路の朝 ちいさなかばんとわずかな持ちあわせ 路線バスにゆられて 東の果てまで来ました 右を向いても海です 左を向いても海です キタキツネ そちらの暮らしはいかが なにを支えにして 明日を待つのか 人類の吐息が 霧より深く眼をふさぐのです 浜梨には なれないって気づいた 遠い日のめまいに耐えて 黒百合はうつむいて 生まれたことを恥じるのです 骨ざらしの立ち枯れの松より 電信柱のありさまが 胸にすきま空けます つながりを絶てば墓標のよう 季節が往けば 芒がそよいで エゾシカが輪舞 国境い またいで 渡り鳥の群れ なにもかも忘れて 明け渡したい ただ風だけに抱かれたままで お月さまが見たいのです どうかかまわないでひとりにさせて 案内のひとの手を ふりはらって子供に還る 返り血をあびせて 夕陽がつぶれて 空が低くて手が届きそう いまゆきます もうすこしだけ 地平線のにじみが消えるまで ここで
曲のあらまし
景観豊かな最果ての地、北海道東部の野付半島を舞台にした歌です。実際に行ったことはないから、文章や画像による情報を頼るのみでした。歌詞に入れたい事物を全部盛り込むと季節的につじつまが合わなくなるとか、交通手段はどうすべきかとか、おかしなことをうっかり書くのを恐れながらの難しい作詞でした。
半島だの岬だのというと演歌が想像されるかもしれませんけれど、演歌でもないし、〈ご当地ソング〉らしくもありません。曲の後半に盛り上がりのピークがあります。歌詞のありかたも含め、フルコーラスで聴いてもらうことしか想定していないつくりなわけで、30秒や1分程度の試聴形態なんてもとより眼中にありません。これは美点なのやら難点なのやら。2022年11月作詞作曲。
作品データ
- 曲名表記
- 野付半島へゆきます
- 曲名かな書き
- のつけ はんとうへ ゆきます
- 作詞
- シラベル
- 作曲
- シラベル
- 発表日
- 2022年11月26日
関連リンク
- ほかの楽曲紹介ページ(ランダムリスト)