エリン音楽ひろば 2024年4月

オンラインRPG『マビノギ』で、2024年4月28日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第16回、タルラークサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

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内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を以下に要約しています。当日に言及できなかったことも書いています。

昭和っぽい曲が流行っているような気がします。昭和っぽい、懐メロみたいな雰囲気を出したいときの表現のしかた、テクニックとかなにかありますか

昭和とひとくちにいっても60年以上の幅があります。昭和っぽい曲、昭和歌謡、懐メロ、という言葉で想い起こす曲もひとそれぞれだと思います。とくに敗戦後の流行歌は、数年単位で傾向がころころ変わっていきました。音を聴くだけである程度いつごろの録音作品か当てられるくらい、変化の激しい時代でした。1960年代、1970年代、1980年代、と乱暴にくくるべきではないにしても、おおまかな分類や把握には便利なので、よく「70年代っぽい」というような形容をしたりします。

質問したかたからは、80年代の固有名詞が出ていました。80年代の曲に絞っていうなら、シンセサイザーの音色、リバーブのかけかたなどにいちばん時代を感じます。マビノギの演奏でそういう音色をどう似せるか、というのは難しいところです。

70年代フォークのようなサウンドをいまやっても、そんなに古臭くは感じないと思います。いまも昔も、ギターの音や弾きかたにさほど違いはありません。録音の仕上げかたは、当時といまとでだいぶ差がありましょう。MMLづくりにはあまり関係ないでしょうけれど、歌詞のありかたや内容のほうが、時代の違いを感じさせます。

昔の曲によくあるパターンとして、「ギターソロのメロディがサビのメロディと全く一緒」というコメントがありました。たしかに、たとえばAメロとBメロで構成された歌があるとして、《前奏・A・A・B・A・A間奏・B・A・後奏》という展開が、半世紀前の流行歌によくありました。間奏では歌のかわりに楽器でAメロをなぞる、というパターンです。一方、平成以降のJポップの大半は3部構成で、間奏もガラッとフレーズが変わり、《前奏・A・A・B・サビ・A・A・B・サビ・間奏・サビ・半音上げサビ・後奏》なんていうのが典型的な構成でした。間奏の前後にさらにDメロのような部分(大サビ)を入れることもしばしば。恥ずかしながら最近の傾向はよく知りません。なんにしても、昔の歌のほうが曲展開が簡素で、3分以内の短さに収まるものが多いようです。

理論的に見れば、ナインスの音をメロディにたくさん入れたり伸ばしたり、曲の締めの和音もナインスを加えたサブドミナントコードだったり、というのが平成、あるいは2000年代以降の歌には多い気がします。逆に昭和歌謡は、もうすこしシンプルな、〈ドミソ〉や〈ラドミ〉のような3和音がわかっていればコピーできるような曲が多いのではないでしょうか。コード進行も、昔と近年とで流行りが違うようです。

録音の編集が昔よりかんたんになり、補正もしやすくなったので、とくにボカロの登場以降は、ふつうのひとには(プロでも)唄えないようなメロディ、合わせづらいリズムで攻めまくる曲も増えたのかもしれません。これも逆にいえば、大昔の歌はふつうのひとにも唄いやすいもの、(早口であっても)リズムのとりやすいものがほとんどです。

昭和の流行歌は、洋楽(アメリカ、イギリスのものに限らず)の受容と模倣のくりかえしでした。平成以降でもそういう面はありますけれど、ここ長いこと、欧米の同時代のヒット曲に興味のあるひとは少なくなり、「洋楽の影響を受けた懐メロ」の影響を受けたJポップ(の影響を受けたナニナニ)、といった感じで影響が間接的になって久しいようです。ある昭和歌謡が、どういう外国の音楽をルーツにしているのか、いろいろ並べて聴いてみると、ヒントがたくさんあるかもしれません。

あまり当てにならない回答をもうひとつ書くとするなら、だらだらと前述したような、Jポップのありがちパターンと、昭和歌謡のありがちパターンの違いを分析して、Jポップのありがちパターンを意識的に避けつつ、安心できる曲展開を選べば、たいてい昭和歌謡っぽい方向に寄せられるのではないでしょうか。もしかしたら逆に「未来」の音楽になるかもしれませんけれどね。

テクニックだけでどうにかなるものではなく、こういう歌が好き、という愛情や愛着がなければ、表層をなぞった程度のにせものしかつくれないのはいうまでもありません。

ハープとかで、エコーのような響きってどうやってつくったらいいですか

わたしの作品では「星霜」がいい例かと思います。約1秒遅らせたエコーをつけています。エコーが音響的な飾りにとどまらずメロディの一部のように聞こえます。ほか、たとえば「銀の点描」では、ピアノの響きに奥行きと伸びを加える為に、ごくわずかにずらしてハープで鳴らしています。

べつにハープに限らず、どんな楽器でも、もともとのフレーズ全体を、いくらかずらして、ぐっと音量を下げて鳴らせば、エコーになります。2023年4月以降の仕様だと、もとのパートとエコー用のパートを1本の楽器(楽譜)にまとめるのも簡単になりました。(以前は同音重ねする副作用を回避する為の、ちょっとした職人芸が求められました。)

複数人の合奏で、エコーだけ担当する楽譜をひとりかふたり追加する、という手ももちろんあります。エコーをつけたい音符を、まるごとコピーしてうしろにずらして音量を下げるだけです。こんな手抜きな作業でいいのかなあ、なんて思ってしまうのですけれど、効果てきめんです。

どれくらいうしろにずらすか、どのくらい小さい音にするかは、いちばん望ましい響きになるまで試行錯誤します。ずらしかたに迷ったら、付点8分、付点4分の長さぶん遅らせてみると、きれいに乗りやすいと思います。

ホールの残響のような自然な響きを再現するのは、マビノギの演奏では難しいところです。擬似的にそれっぽく錯覚させる手法はあります。

エリン音楽ひろば 2022年6月の特集「エコーやリバーブっぽい音を作るには?」のときに使ったお絵描きチャットが、ここで役立ちました。ですからそちらの記事を参照……と書こうとして読み返してみたら、あまりMMLのつくりかたに関する説明を載せていませんでした。足を運んでくれたかたにとってのお得感が薄れてしまう、と考えているから、特集の内容すべてをウェブサイトの記事で共有することはしていなくて、それで掲載を省いていたのです。そうねー、2年くらい経ったからもういいかなー、というわけで、当日の内容をちょっとだけつけ足し、説明用のお絵描きチャットを載せておきました。参考にどうぞ。

皆さんは(自作の)曲を作られる際にメロディーから作りますか?それとも伴奏から作りますか?

自作の経験があるひとは限られるのですけれど、だいたいケースバイケース、という感じのようでした。わたしもそうです。

コード進行を決めて伴奏のトラックをつくってから、それにあわせてメロディをつけることもあります。たとえば「ヒノキジャム」の作品群は、そういうつくりかたをルールのひとつにしています。

言葉からメロディが生まれて、そこから拡げていくこともあります。「髪の毛バサッと切ってきました」や「輸入または国産」でタイトルを連呼しているところなんて、まさにそういう出自です。

あとからコードをつけたり、あとからメロディをつけたり、というのがめんどうだから、同時につくることも多々あります。

メロディだのコードだの関係ないや、という曲をつくることだってあります。

以前にも、詞先・曲先の話などを、エリン音楽ひろば 2021年12月のときに話したことがあります。

もし、いつものつくりかたで行き詰まりを感じているなら(質問したかたはどうやらそういう悩みもあるようでした)、まるっきりべつの手順でつくってみるのもいいかもしれません。MMLとかMIDIデータとかだけで作業していると、こんなメロディでいいのか、と自信が持てなくて、ついついこねくりまわしてしまい、ますます袋小路に陥るということも。そうなりそうなときは、実際に唄ったり本物の楽器で弾いたりしてみると完成への近道になることがよくあります。

シラベルさんは、演奏のときによく曲に合わせて衣装を毎回用意されていますけど、結構前から準備しているのですか?

この曲にはこの衣裳で、というほど強く結びつけているわけではなく、いろんな曲、いろんなTPOに対応できるように、日頃から仕込んでいます。

たとえば去年「クロッカスハイスクール制服」が登場したとき、来年3月の演奏会はこれがあれば卒業シーズン感が出せる、と思って、競売場を毎日見て、値下がりしてきたころを狙って購入し、染色も済ませておきました。でも、今年の春は着るタイミングがないまま終わりました。

演奏会の前日か数日前にコーデと弾く曲を決めておくこともあれば、演奏会の直前まで予定が定まらないまま、10分くらい前から慌てて準備して、遅れて着いたころには待機列が長く伸びていて1次会のうちに弾けなかった、というまぬけなこともたまにあります。

1000万以上の相場の衣裳はそうそう買いません。競売場で安い順にぼんやり見ていって、どれもこれもスカート丈が極端すぎる、いちいち女性用と男性用とに分けるな、なんてぶつくさいいながら、生活感のあるデザインの衣裳を好んで集めています。

イベント産やランダムボックス産の装備品は、初期状態の配色が固定されていることが大半です。その配色のままで着るのが好きではないので、服は必ずといっていいほど染色をします。

恋咲島イベントなどのミニゲームでもらえた色指定染色アンプルをたくさん確保してあります。ふつうの染色アンプルでは到達できないRGB値の色(たとえばかなり黒めの紺色や焦茶)を重点的に。あるいは、ふつうの染色アンプルでも賄えるけれど狙いうちがめんどうな灰色系やオフホワイト、キャラの肌とおなじ色などもあると便利。あと、当サイトのテーマカラーの《R24・G144・B132》もときどき使っています。

そして、必要になったらポーション調合スキルで「色指定染色アンプル(調整済)」をつくります。このとき、製薬師のグランドマスター専用効果を有効にしていれば、1個の色指定染色アンプルから、2個から5個ぐらいのおなじ色の調整済アンプルがつくれます。複数の箇所をおなじ色に染めたいときに便利です。

画像1:「色指定染色アンプル(調整済)」の生産画面

その応用技として、たとえば画像1のように、上列左から2番目の枠に赤い色指定染色アンプル、その右隣の枠に緑の色指定染色アンプルをセットし、ほかの枠に染料をひとつだけ入れて生産するとします。成功すると、赤い調整済のアンプルが1個、緑の調整済のアンプルが1個かそれ以上、手にはいります。そして消費されるのは、染料と赤いアンプルだけで、緑のアンプルは手許に残ったままです。

このように、左上から順に数えて先の枠に不要なアンプルをセットし、そのうしろに増殖させたいアンプルをセットすれば、不要なアンプルを犠牲にするかわりに、好きな色のアンプルをずっと維持できます。もちろん、調合の成功率は100パーセントにしておきたいところ。調整済のアンプルは有効期限が短く、競売場にも出せないので注意です。

特集・ドラムパートをつくってみよう

休憩を挟んで、後半のコーナーは「ドラムパートをつくってみよう!」と題した特集です。

こちらで用意したMMLをみんなに改変してもらって、それをひろばで弾いてもらう、というような企画(または夢)を前からめろさんは提案していました。今回はそれをやることにしました。めろさんのブログの記事のとおり、具体的にこういうふうにやろうと決めた(というかめろさんが突然いいだした)のは、開催日の1週間くらい前のことです。

めろさんとわたしと、それぞれ1曲、16小節程度の素朴なソロ曲をつくり、それにドラムパートを各自で加えていただき、その譜面で2人合奏しましょう、という企画です。

その場でみんなに作譜してもらうというのは、対面ならともかく、オンラインゲームでのアバターだけでは作業中なのか放置なのか外見上まったくわからない点でも無理があるし、そんな素早く作譜できるひとも限られます。それで、事前の「宿題」のような体裁で、1週間前の告知とともに、吟遊詩人掲示板に課題曲を載せました。宿題はもちろん必須ではなく、興味のあるひとだけやってきてくださいということです。課題だの宿題だのいうと、お勉強感が出てしまってよくないのですけれど、うまいいいかたがとくに思いつきませんでした。

作曲スキルを上げていないキャラでしか来られない場合もあるでしょうから、そういうかたをのけものにしてはいけないし、かといってMMLをその場で共有するうまい方法もないので、その場合は事前にめろさんにお問い合わせください、ということにして済ませました。

主催が心配していたのは、だれもつくってこなくて企画倒れになることでしたけれど、何人もつくってきてくれて、いろんな演奏ができて、ありがたいことでした。どちらか片方の曲、というふうに告知していましたけれど、両方つくってきたやる気満々なかたもけっこういたのもよかった。

前回書いたように、講座的な企画は当分やらないことにしたわけですから、アドバイスやらコツの解説やらは極力しないと決めていました。

これまで、エリン音楽ひろば 2022年10月に「ドラム道場」の特集もやってきたわけですけれど、それでもドラムパートのつくりかたがさっぱりわからないかたへの助け舟として、ドラムの作譜例もあわせて載せておきました。ただ、例を聴くとかえって囚われてしまって不自由にもなるし、課題曲の曲調自体がすでにドラムパターンを制限してしまっている、というような声ももらいました。もっとシンプルな、たとえば「かえるの合唱」みたいなのを課題曲にしたほうが自由でよかったのでは、と。たしかにそれはいえるのですけれど、前回のアレンジ講座の続きみたいなことをする気にもなれなかったし、それよりも一種の「コラボ」合奏をすることに軸足を置きました。いかにも練習用な曲ではなくて、ふつうの曲のほうがいいだろうと思いました。

わたしのつくった課題曲は「お出かけ日和」という作品で、いずれ「組曲 ハマグリさん」の続篇作の一部になるかもしれないし、ならないかもしれない曲です。要するに「サザエさん」のBGMをほうふつとさせるであろう曲です。めろさんのほうは、典型的なロックンロールふうの曲を用意していました。

画像2:みんなでまとめてドラムを叩いてみよう

最後のほうで、めろさんの曲のドラム譜面をつくってきた全員で、一斉に弾いてみましょうよ、と提案しました。それはカオスだ、という声があがるなか、めろさんと4人のドラムで合奏してみたら(画像2)、けっこううまくいきました。今回のハイライト。マビノギならではの演奏の遊びができたと思います。

スクリーンショット集

画像3:開会前

開会時間を待ちながら集中力を高めようとしているシラベルカ……の、横の席に座りたそうな約2名。

画像4:開会時

今回は、オープニングの時点でそこそこの数のひとが集まっていました。そのことだけでも主催にとっては心強いものです。

画像5:特集コーナーの演奏風景1

画像5から画像9、特集コーナーでの演奏風景をいくつか並べます。

画像6:特集コーナーの演奏風景2
画像7:特集コーナーの演奏風景3
画像8:特集コーナーの演奏風景4
画像9:特集コーナーの演奏風景5
画像10:エンディング

そして、23時50分ごろ、閉会の記念撮影です。みなさんありがとうございました。そのあと、4月28日だからどうしても弾きたい曲があって、無理をいってこのあとに7人合奏をしました。

次回はマリーで6月末です。おそらく30日(日曜日)になります7月7日開催の予定です。どうぞよろしく。