エリン音楽ひろば 2022年12月

オンラインRPG『マビノギ』で、2022年12月29日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第8回、マリーサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベル)です。

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内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を以下に要約しています。当日に言及できなかったこともちょっと補足しました。トークが弾んだぶん、ひとつひとつの答えをその場でしっかり拾いきれなかったので、記事に書ける範囲で、なるべくフォローしてみました。

しばらく、ミニ特集のコーナーのボリュームが大きすぎたという反省を踏まえ、今回は、メインの質問・試演奏コーナーだけでやってみました。締めくくりに、ハンドベルをメインにした「お正月」を合奏しました。

音楽知識の不足を感じている。勉強法などを相談できるような、おすすめのギルドなどがあれば教えてほしい

演奏会に来る顔ぶれを見ていると、多くの楽師が在籍するギルド、というのがいくつかあるようです。わたしは長年、どこのギルドにも属していなくて、内情はわからないと前置きした上で書くと、たぶん、ギルドチャットでそういうまじめな情報交換は、ほとんどしないのではないかと想像します。演奏系ギルドに属せば、合奏のお手伝いメンバーを揃えやすい、というようなメリットがあるのだろうと思います。

むしろ、おもに演奏会の前日(金曜日)にやっている、音合わせ目的の集まりに顔を出したり、エリン音楽ひろばに参加したりするほうが、知識やモチベーションを上げるには、即効性があるかもしれません。

ときどきメンバーを募集している演奏系ギルドもありますから、そこに加わってみてもいいのでしょう。フレンドの輪を拡げる、という感覚の延長としてギルドに出入りすればよく、あまりギルドそのものにこだわらなくてもよさそうです。もちろん、ひろばの目的のひとつは「交流」ですから、ここでじゃんじゃんフレンド登録するといいですね(かくいうわたしは、ギルドやフレンド機能にログイン監視みたいな窮屈さを感じてしまうので、なんとも……)

マビの演奏システムやMMLについての話は、楽師間ですることもあるでしょうけれど、音楽についての一般的な知識は、インターネット(や書籍)で独習するほうがいいでしょう。これってどうなってるんだ、と疑問を持ったときに調べる、ということを繰り返していけばいいと思います。感覚的な話にやたら逃げたり、狭い視野に陥ったりしていない、信頼できる文書を見極めるのも大事です。

楽器撒いておくので欲しい楽器あったら持ってってください

ありがとうございます。

画像1:楽器の無料頒布
アルペジオコンサートホールで演奏会やりますので参加者募集中です

年明けの1月3日、ルエリで行なわれました。かっちりした会ではなくて、ふだん使われることのないアルペジオコンサートホールで試しにチャレンジ、というノリの企画のようでした。

アルペジオコンサートホールのシステムはやや難解で、準備時間の終了時刻(21時台からのレンタルならば21時30分)に、コンサート主催者が舞台上にいないと、キャンセル扱いとなります。残念ながら当日、そのパターンになってしまったようです。客席側の壇を用いた、ノーマルな演奏会となりました。

(追記:マビノギのアルペジオコンサートホールのページをつくり、ホールのシステムや使い勝手などを書きました。)

作譜する曲を、みなさんはどういう基準で選ぶのでしょうか

わたしも、みなさんの演奏を見聞きするなかで、どこにモチベーションを置いているのだろう、ということは気になっていました。質問されたかたは、ほかのひとにリクエストされるとがんばってつくれるけれど、自分の為に作譜することがあまりない、とのことでした。

みなさんの意見からは、演奏したい曲、みんなが知ってそうな曲、みんなに知ってもらいたい(ジャンルの)曲、フレンドが好きそうな曲、季節もの、などなどのキーワードが出ました。

何曲か軽く試作してみて、うまくいきそうな・飽きずに完成させられそうな曲を採る、という声もありました。

わたしは、ほとんど自作曲ばかりやっていますし、演奏したい・聞いてもらいたい、の区別が希薄です。聴いてもらいたいから演奏するわけですし、また、聴いてもらえる、ということがモチベーションになって、曲づくりが進むことも多々あります。そのほか、昔の童謡なども少々レパートリーにありまして、そちらはやはり、みんなが知ってそうな曲、という基準といえるでしょうか。嫌いな曲はつくりませんけれど。

みなさんが初めてつくったMMLはなんですか

最初になんの曲のMMLをつくったか、けっこうみなさんちゃんと覚えていて、ちょっと驚き。「ねこふんじゃった」とか「かえるの合唱」とかは、習作向けでなんとなく納得なのですけれど、好きな曲にいきなり取り組んだかたも多いようす。また、昔は、MML投稿サイトというのがあって、それを手本に真似ることから始めた、という声もありました。

2013年ごろ、本格的に演奏会通いを始める前のわたしは、テキストエディタで試行錯誤しながらつくったり、あるいは、マビノギMMLとは別ですけれど「テキスト音楽『サクラ』」というMML作成ソフトで書いたりもしていました。そのころのファイルがいくつか残っていますけれど、初めてつくったMML、ということになると、まったくわかりませんね。でたらめな「試作A」「テストその1」みたいな類の曲だった可能性すらあります。

みなさんの初シラベルはなんですか

この直前に、わたしの「リリッツ7」が聴きたい、というリクエストがあり、なんでと尋ねると、オリジナルつくってるひとだ、という感じで衝撃を受けたのだそうです(「リリッツ7」は、このあと幻想コーラスの話が出たついでに弾きました)。いわば初シラベルだったということらしい。その話の流れでこの質問になりました。

長年やっているから、初シラベル、または存在を認識したきっかけの曲は、ひとによってさまざまのようです。

話の流れでポッと出ただけの内輪な質問であり、質問者も連続していましたから、早めに切り上げる恰好に。閉会後、サポート役のかたに、もうちょっと拾ったほうがよかったのでは、といわれました。たしかに、みなさん喋りたがっていましたから、そこは申し訳なかったなとあとから思ったところです。バランスが難しいです。チャットログはちゃんと残してあるので、個人的に、ふむふむ、と読み返しています。

ちなみに、質問されたかたの初シラベルはおそらく「リリッツ7」ではなくて、おなじシリーズでいうなら「リリッツ3」か「リリッツ4」か、そのへんだと思います。「7」はそれらより1年ほど初演があとなのです。いずれにしても、衝撃をもたらした曲としては地味めな気がしますねえ……。このシリーズ、まだ「リリッツ1」しか当サイトに載せられていません。なかなかきっかけがなくて。

みなさんはどんな音楽を普段聴きますか

さっきの「作譜する曲の選曲基準」の話のとき、シラベルや、めろさんは自作曲中心なので、どういう音楽を普段聴いているのか興味がある、という声があって、それを改めて拾って、めろさんがこのタイミングで投げた質問です。

しかしめろさんは、よくよくログを見返すと、「仕事から帰ってくると無音なんです」といってるだけでした。ずるいねー。それだったらわたしも「落語とか昔のAMラジオの録音とかを聴くことが多い」とかいって逃げておけばよかった。「だれだれのファンです」と固有名詞を出すことに、極端に照れる性格です。本屋やCD屋で商品を手に取ることさえ、どきどきまごまごするくらいです。困ったもんだ。当サイトの記事にも、とくに存命のミュージシャンの名前があまり出てこないのは、おもにそういう理由です。

ふだんの演奏会のレパートリーからは想像もつかないジャンルを聴いているかたもいるから、こういう話題のみなさんの答えはいつも興味深いですね。

ネットラジオの話も出ました。やはり、みなさんさまざまなインプットを持っているのですね。わたしは、ラジオを聴く機会もめっきり減ってしまいました。動画で聴く頻度も高くありません。音楽つくってるくせに、もっと浴びるように未知の音楽に触れなければ――という強迫観念を持つのもよしあしなんですけれど、うーん、引け目は感じますねえ。

ついでに、「紅白」も見るの? と訊いてみたら、見ません、と何名か即答。好きなミュージシャンが出るので見る、というかたもいるし、録画はしておく、というかたもいました。わたしは……お察しの通り、テレビはまったく見ません。

幻想のコーラスをもっと普及させたい。どうしたらいいでしょうか

戦闘における幻想のコーラスの使いこなしについて詳しいプレイヤーはたくさんいそうな一方で、「幻想のコーラスをかけてバフ演奏すると、楽器演奏パートに加えて、幻想のコーラス用の音で歌パートが鳴る」ということは、なかなか一般に知られていないようすです。

幻想のコーラスを用いた演奏のやりかたや注意点については、とりあえず、エリン音楽ひろば 2022年2月のページの、幻想のコーラス特集の節を参考にしていただければと思います。

幻想のコーラスでこういうことができる、ソロで4音ぶん鳴らせる、ということが周知されればいいのですけれど、ひろばでの特集1回、そしてその記事だけでは、周知には至らないということです。ツイッターで検索しても、詳しい話はなかなか出てきません(それは幻想のコーラスに限った話ではありません)。強い関心があるひとでないと、情報にたどり着く機会もないわけです。正直、どうすれば普及するかは、わたしたちにはわかりません。

幻想のコーラスがあまり使われない理由は、いくつかあるのでしょう。この相談に関していろいろ書いてみたら長くなったので、このあとの「内容の掘り下げ」の節のほうで、エッセイとして述べることにします。

オルゴールがおもしろい。メロディだけのMMLでも楽しいけれど、もっとほかに楽しみかたはありますか

オルゴール合奏の「G-Zero R」みたいな特異な例もありますけれど、かんたんな遊びとしては、「花火円形舞台」を設置して、その上に乗ってオルゴールを使ってみると、ちょっと笑えます。その状態で舞台が消えると……。

なんといっても見栄えが華やかなので、休符だけの楽譜をセットして、何人かで並んでオルゴールを使うのもいいでしょう。

わたしは、このひろばの数日前に行なったクリスマス演奏会でも、衣裳替え時に「オルゴールのなかに隠れる」演出を使いました。オルゴール使用時、オルゴールの上に立たず、地面に座ることができます。ただし、それには「呪いの楽譜」(書き込んだはずのMMLが消えた楽譜スクロール)をセットする必要があります。幸い3サーバーで呪いの楽譜を棄てずに持っていたからできることなのですけれど、現在は呪いの楽譜がつくれなくなっていますし、一種のバグ技とみなされるのかもしれませんから、紹介は控えていました(これだけ書いたらすっかり紹介かな? 「呪いの楽譜」についてはマビノギの演奏システム七不思議のページに解説があります。)

スクリーンショット集

画像2:オープニング演奏

開会時のようすです。うしろのほうで、寝ているひともいます。芝生の上に寝転がるのは気持ちいいものですね。

画像3:質問コーナー開始

画像には写していませんけれど、ムーンゲートからラフ王城へ走っていくひとをよく見かけました。この月に実装されたアルカナ才能に関するクエストで、王城内に足を運ぶことになるのだそうです。ひろばの会場のそばでちょっと立ち止まるかたもいました。こんなところでなにを集まっているのかと、いぶかしく思ったのでしょう。まあ、次回のひろばのころには、おそらく往来も減っていることでしょう。

画像4:ハンドベル入り合奏のようす

画像4は、締めくくりの出しものとして、めろさんが用意した「お正月」の合奏のようすです。去年もおなじようなことをしましたけれど、ドラムなどを加えた元気な新バージョンでした。

画像5:記念撮影

今回も無事に終わりました。年末にも関わらず、20人くらい来てくださり、ありがたや、ありがたや。未来のことはわからないけれど、引き続き、できるかぎりのことをやっていこうと思います。

主催としての感想は、学びと交流の場として、過不足なく役目を果たせた回でした。反省点は、めろさんとわたしのトークが噛み合っていなかったこと。ログを見返すと笑えます。開会直後のマクラとして、めろさんが大掃除の話を持ち出している最中に、わたしは「きょうはメインの質問・試演奏コーナーをたっぷりやりましょう」といって、そのあとめろさんが「ではではー質問、試奏希望の方挙手をお願いしまーす!」と呼びかけた直後に、わたしが「大掃除は年末よりあったかい時期に」とかなんとかいっているのが、よい例です。掛け合いの練習をしないといけませんね。あと、質問に対するみなさんの答えを、もうちょっと丁寧にキャッチしてコメントできればよかったとも思います。まあ、拾いきれないくらいに話が弾んだ、ということで……。

内容の掘り下げ

今回出た話題のうち、幻想のコーラスを普及させるには、という話題に関して、掘り下げにはならないかもしれませんけれど、エッセイとしてつらつら書きます。


この相談には、「幻想イコールタイミング合わせ」「幻想は上級者向け」という印象を払拭したい、という趣旨が含まれていました。

質問されたかたも含め、幻想のコーラスを多用する楽師というのは、あまりふつうの幻想バフつきソロ演奏ではなく、幻想コーラスを起こしておいてからピアノを設置してタイミングを計って弾きはじめたり、複数の幻想コーラスをひとりで順番に重ねたり、複数のPCを操作して3キャラで同時に幻想コーラスをかけてから合奏したり、というテクニカルな手法を採ることが多いのです。テクニカルな手法は、操作ミスで演奏をしくじることもあります。そのときに、楽器演奏は止められますけれど、幻想のコーラスは止めることができません。つまり、演奏をやり直すには、幻想のコーラスが鳴りやむ、曲の終わりまで待たないといけません。

2022年10月のソロ演奏縛りの演奏会「ぼっち会」の告知で、幻想のコーラスが禁止とされた(のちに取り下げられた)ことがありました。演奏者の回転率を上げることを重視する「ぼっち会」の場合、その、幻想のコーラスが鳴りやむまでの待ち時間が致命的なので、そういう事態を未然に防ぐ為に「幻想のコーラスは禁止」にしたほうがいいかな、というのが主催のそのときの判断だったのでしょう。「幻想のコーラスを重ねることは禁止」というのは一般にはわかりにくいルールです。主催のかたもそのへんの違いがあいまいだったのかもしれませんけれど、経緯としてはそれだけのことにすぎないと、わたしは理解していました。もっと複雑な事情があったのかもしれませんけれど、なんにせよ、こういう動きがあると、幻想のコーラスを多用する楽師からしたら、危機感を覚えるのかもしれません。それがこの相談の背景にあったのだろうと思います。実際、質問されたかたも最近、あえて意識的に、ごくふつうの幻想バフでソロ演奏を弾いていて、幻想のコーラスのお手軽な側面を強く打ち出そうとしていることが伝わってきます。

幻想のコーラスが、一部の楽師以外にあまり使われない理由は、いくつかあると思います。

スキルの習得については、歌スキルを上げて関連クエストをこなすか、英雄才能「アリア」を選べばいいので、難易度は高くありません。楽師なら持っているでしょうけれど、だれでもかといえば、微妙なところでしょうか。

ひろばでの反応を見ても、幻想のコーラスでこういうことができる、ということを周知することは大事だなあ、という感はあります。ただ、先述のとおり、ひろばでは幻想コーラス特集を1回やっています。記事も書きました。

幻想のコーラスは、やや暗い、奥まって聞こえる音色で、曲のジャンルを選ぶところがあるかもしれません。アレンジ次第でいかようにも、といえなくもないですけれど、幻想のコーラスの音色を生かしてMMLをつくる、というのもけっこう壁になるのかもしれません。たとえばリュートやリラなどで伴奏を弾き、幻想コーラスを主旋律に充てる、という場合は、幻想のコーラスの音量をなるべく大きくしておき、その音量に合わせたバランスで伴奏をつくることになります。けっこう小さめの音量指定でつくることになるでしょう。「バランスを考慮して音量を下げる」のは、だれでもできそうで、実はなかなか難しいことのようです。音量を下げると負け、という価値観さえ(いまだに音楽制作界隈には)根強いですから。

音量や音域などのハンデこそあれど、1音増えるぶん、3音縛りでソロを書くよりも楽になります。試しに幻想つきのソロ譜面をつくろうかな、というかたには、リラを伴奏楽器として使うことをおすすめします。リラももともとの音量が小さめだし、音色としても幻想のコーラスとなじみやすいと思います。

男声の幻想のコーラスは、かなり不思議な音色で、扱いが難しい、というよりイロモノみたいな感じになりがちです。こればかりはしかたありません。

真似してみたいと思ってもらえるようなパフォーマンスを続けることと、真似したいひとが手かがりにできるような文献(とか動画とか)があって、探せばすぐに見つけられるようにすること、この2点くらいしか、普及させる方法が思いつきません。そして、その2点だけでは普及しないことも事実です。わたしなんかは、すぐに真似しようとするタイプですけれど、「すごい」で終わってしまうひとのほうがどうも多数のようです。インタラクションによる歌詞出しにしてもそんな感じがします。お米をカップで量って、水で研いで、釜の目盛りにあわせて水をひたして、炊飯器のボタンを押す、というだけのことなんだからできるでしょ、と説いても、いや、そんなんようせんわ、というひとは多いのです。それでも、必要に迫られたら、自炊しないといけないし、そのとき、なんだこんなことか、とようやく気づくのです。……実践しているひとには至極かんたんなことでも、見ているだけのひとには魔法のように見えてしまうというのはあるようです。そして、必要に迫られることがなければ、本気で習得しようと目の色を変えることもなかなかないわけです。

幻想のコーラスの音色がドンピシャではまるような曲がはやる、というのが、幻想のコーラスで作譜するきっかけとして、いちばん即効性があるのかもしれません。身も蓋もないですけれどね。