エリン音楽ひろば 2025年4月
オンラインRPG『マビノギ』で、2025年4月27日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。
第21回、ルエリサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

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内容のまとめ
内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。
出てきた話題・質問に関しての要約と補足です。
- ラグリンネに楽器や楽譜を、以前は会話してプレゼントで渡してたんですけど、(3月のアップデート後の)いまは装備枠に直接移動させるというやり方で、あってますでしょうか? それが仕様でしょうか?
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合ってますし、そのように仕様変更されました。
マビノギの演奏パートナー・ラグリンネのページに、変更点のまとめを載せています。
ラグリンネが〈装備中の楽譜を先に取り外してからでないと、楽器が外せない〉ようになったのが、以前と操作感覚が違って慣れない点です。それを除いては、演奏に関して便利になったというのがわたしの印象です。
ところが、〈ラグリンネのインベントリに楽譜を置けなくなって困る〉という不評もわりと聞こえてきます。どのみち2人合奏であればプレイヤーキャラの手許にも片方の楽譜を用意しておくわけで、それが2倍になるだけだと思うので、そんなに困ってますか、そんなにプレイヤーキャラのインベントリってカツカツで余裕ないんですか、という疑問をここでぶつけてみましたけれど、まあ、実際そんな感じのようです。
それなら、その都度スクロールに書いて渡す、という運用に切り替えるしかないと思います。
- ポピュラーだと最近は4和音の進行が普通ですけど、マビノギソロだと3音しか使えないです。コードを省略するとき、フィフス(5度)とセブンス(7度)、どっちを省略するのが普通でしょう?
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以前、エリン音楽ひろば 2022年6月で、「ソロ用MMLのアレンジをするとき、3音に収める為にどの音高を優先すべきか」についての話題が出ました。
そちらの記事に丁寧な説明があるからくわしくはそちらで、ということで、ここでは短めに。5度は、基音の倍音成分としてもともと強めに出ているから、省いても和音の(役割的な)印象は損なわれない傾向があります。一方、〈ド・ミ・ソ〉の3和音で、3度の〈ミ〉を抜いてしまうと、メジャーかマイナーか役割がわからなくなります。わからなくなって困る場面では、3度は必須です。
……さて、質問されたかたは、どうやらそのへんのことは百も承知で、「みんなどうしてる?」的な趣旨で質問されたようでした。それはもう、そもそも「4和音の進行が普通」かどうかは現代でもジャンルによりけりなわけで。たとえば、ヘビーメタルで多用されるいわゆるパワーコードは、1度と5度を鳴らして3度を省きます。メタル系は西洋クラシック(とくにバロック)の子孫ですから、平均律のエレキやキーボードでの3度の濁りを嫌って1度と5度で伴奏を弾きたがる、ということなのかもしれません。
ほかにもフォーク系の弾き語りなんかは、仮にセブンスやテンションコードとしてコード譜には書かれてあっても、〈ド・ミ・ソ〉のようなシンプルな3和音で代用して問題ないことが多々あると思います。
楽譜のコード・ネームにセブンスが書かれてあるならつねにその指定通りに鳴らすべきだろう、といえるかどうかは場合によるわけです。ひろばの当日は、コードの構成音すべてを使いたいところでどれを泣く泣く棄てればいいか、という意味としてわたしは話していたから、ここでつけ足しておきます。
前回のエリン音楽ひろば 2025年2月の記事でも取り上げたように、4和音を基本として考えていくのはジャズ系の音楽理論に由来します。〈G―C〉というコード進行があるとして、〈G〉や〈C〉だけではそれぞれがコード進行のなかでどういう役割(トニックとかドミナントとかの機能)なのかわからないので、〈G7―CM7〉と書いたり〈GM7―CM7〉と書いたり、あるいは〈G7(♭9)―C7〉などと書いたりすることで機能がわかるようにして、演奏者がどの音を使えばいいかも把握できるようにします。使っていいだけであって、つねに使わなければならないわけでもなく、もちろんセブンスが省けることもあります。
また、先述した倍音の5度の音と平均律の5度とは微妙に高さが違うので響きがうんぬんかんぬん、という話も出てきましたけれど、そもそも純正律は〈ド・ミ・ソ〉の3和音がきれいだバンザイ、の世界であり、一方、平均律の響きでよしとする世界だからこそ4和音や5和音が多用できるようになっているわけで、この話題の文脈では、そのへんをこだわってもしかたない気がします。
- (和音の構成音を省かず)MMLに全部詰め込む場合、みなさんなんかいい工夫というか、色んな情報ありましたら共有して頂けたら
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質問されたかたは、「よく64分音符を音の前後に和音として一瞬鳴らしたり、その中でどの音を伸ばすかみたいなのは結構選んでたり」するとのことでした。リラやハープやシロフォンなどのような、リリースが残る(音がゆっくりめに消える)タイプの音色が、こういう手法に向きます。おなじく似たような手で、チューニングフルートや女声幻想コーラスのようなアタックのゆるやかな音色は、〈ドミソドミソドミソ……〉というようなアルペジオを高速で繰り返すことで、持続する疑似和音が出せます。これらは何度か取り上げたことがあります。
そのほかにありますか、といわれると、思いつくネタはもうあんまり……。すくなくとも(打楽器を除く)2人以上の合奏であれば、発音数が足りないせいでコード感の表現に困るということもあまりなかった気がします(自作曲だとどうにでも融通がきいてしまうからかもしれません)。むしろ最近のわたしは、倍音的な音を加えてどう音色に変化をつけられるか、ということを試すことが増えています。無理していろいろ削って少人数編成にまとめるのにも飽きた、ともいいます。そんなこともないか。
- あまり歌モノは聞かないんですけど、たまに聴くとどうしても後ろの音楽のほうに耳がいっちゃうんだけど、みなさんは歌詞の内容とか重視して聞いたりしてますか?
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これはめろさんからの質問。ひとびとは、なにに感情移入して歌を聴くのでしょうか。その場で尋ねてみると、
- 「歌詞よりサウンドが大事」派のひと……6人
- 「歌詞があってこその歌よねー」派のひと……2人
曲にもよる、両方のバランスが大事、という意見もあって、もちろん単純な2択の話ではありませんし、回答者の偏りなども横に置いておくとしても、この「6対2」は意外でした。
音楽家が「昔は曲を書くとき、ほとんどサウンド面に意識を向けていたけれど、聴き手からもらう感想は、歌詞がいいね、というのが案外多い。それでだんだん歌詞も重視するようになった」なんていう話をするのも何度か読んだり聞いたりしたことがありましたし、また、音楽というよりもヒーロー・ビジネス的な「アーティスト」に焦点を当てている場合、歌詞に込められたメッセージがどうの、心境の変化のあらわれがどうの、という語りくちで作品を評するような紹介のしかたも長年あふれかえっているわけで、きっと「ふつうの」聴き手はサウンド面のこまかいつくりこみやメロディのきれいさよりも、歌詞に共感しやすいものなのだろう、あるいは歌詞と唄い手とをセットにして共感しているのだろう、と思っているからです。(めろさんは、そういう種の共感に関心がないのかもしれませんね。)
80年代くらいまでにくらべて、平成以降のヒット曲は往々にして歌詞が長くなっているようです。それだけ「メッセージ」「御託宣」が求められているのかもしれません。覚えるのに努力が要るような歌詞も増えましたね。
わたしが子供のころからつくってきたのは、音楽というよりもまず「歌」だったんだろうな、と思います。いいたいことがあって、それを歌の形にこねあげているような感じでした。やがてマビノギMMLを書くようになってからは、器楽的なものへの意識が多少強まったものの、やはり「言葉」を届けたい性分のつくり手なのかもしれません。
とはいえ、リスナーとしてはどうかというと……どうなんでしょうね。歌詞カードを見ずとも言葉がびんびんに伝わってくるような唄い手が好きですけれど、べつに歌詞からはいるわけではなくて、音のかっこよさ、声質や唄いっぷりの魅力が先にありきです。オフボーカル版を聴くのも楽しいものです。ドラムパートばかり追いかけたり、ギターのフレーズばかり傾聴したりもします。
ひとつ思うんですけれど、歌詞とメロディとの関係性を捉える音楽理論、というのはどのくらいあり得るのでしょうか。もしそういう研究が進んでいるとしても、英語の場合、日本語の場合、イタリア語の場合……などと言語によって事情が違ってくるでしょうし、さらに音楽ジャンル・歌唱スタイルなどによっても変わるでしょうし、歌詞の中身を考えだすと人文科学を横断しないといけない厄介さもありそうだから、個人の方法論以上のものは出てこないのかもしれません。せいぜい韻の踏みかたのコツくらいでしょうか。べつに理論化しなくていいですけれど、みんなコードがどうの、テンションがどうの、ということを熱心にいうので、そういう方面の話だけだと、いろんなことを見落としてしまうのではないかな、なんて思うわけです。
メロディと歌詞、サウンドと歌詞とが幸せな結婚をしている歌は良いものです。そうでない歌なら無理して歌詞を覚えたり追ったりしなくてもいいでしょう、という感じですかねえ。
スクリーンショット集

21時30分からの演奏コーナー。めろさんは1曲。わたしは「サイクリング・ピッピ」の鳥ペットつき版、それからふたりでラグリンネ入りの4人合奏もしようとしましたけれど、打ち合わせ不足でラグリンネの準備が整わず、飛ばして代わりに3人合奏の「エレマ・レマ」を弾きました。


11時をまわってから、めろさんが書いたアジアン・テイストな曲を合奏しました。

そして、23時20分ごろに記念撮影をして閉会となりました。
来ていただいたみなさん、ありがとうございます。次回は6月にタルラークサーバーでの開催となる予定ですけれど、詳細が決まり次第おしらせします。