エリン音楽ひろば 2025年6月
オンラインRPG『マビノギ』で、2025年6月29日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。
第22回、タルラークサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.
内容のまとめ
内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。
質問・相談コーナーで出た話題のまとめです。特集企画のほうに時間を多く充てたので、今回は質問ひとつ、テスト演奏1曲、でおしまい。
- 一昔前はボリューム13というとすっごい大きな音に聞こえてた気がするんですが、最近普通くらいな気がして、作譜時の音量の基準がわからなくなってきました。また、フォルテの表現などで強弱をつけた場合に、キンキンしないように音量を抑えめに調整すると全体が盛り上がらない感じになり……
-
全体の音量の決めかたについては以前にもしゃべっていて、エリン音楽ひろば 2023年12月の記事にある「私の演奏、音量小さいと思いますか?」の質問のところで解説しています。たくさんMMLをつくって経験則を積み上げてきたつもりなんですけれど、過去作を点検していると「これは音量1くらい上げるべきだったかな……」なんて思うこともときどきあります。つくった当時はそれで正解と判断したはずなのに。なかなか難しいものです。
単独で1曲流すだけだったら、聴き手が再生環境のボリュームを加減すればいいだけで、べつにそんなに基準にこだわる必要もないので、ただ、2曲以上つづけて披露するときに1曲目と2曲目の音量が違いすぎると落ち着かないから、自分の作品それぞれの音量のばらつきを減らすことには意義があります。
マビノギの楽器の音色には〈強弱〉の違いがありません。音量指定が一定以下なら優しいタッチの音、音量指定が一定以上なら激しいタッチの音、というようなサンプルの出し分け(ベロシティ・レイヤー)が用意されていないのです。あくまで音の大きさ、ボリュームが変わるだけです。
1音だけ、あるいはワンフレーズだけ強弱を変えたいというときは、音量差だけでも案外それっぽく聞かせられます。でも、前半が静かで、後半から力強くなるような曲だと難しくて、音量指定だけで変化をつけても演奏の表情づけになりづらく、「スピーカーの音量つまみを回した」だけのように聞こえがちです。
タッチの違いによる〈強弱〉を擬似的に表現したい場合、性質の近い別の楽器の音色を混ぜる方法があります。たとえばピアノソロだったら、ハープかリラを加えて同じフレーズを小さめの音で重ね、ハープ(リラ)の側は音量をあまり上下させず、ピアノのほうだけ音量を上下させてみましょう。すると、ピアノの音量を下げたところでは相対的にハープ(リラ)の比率が増え、ハープ(リラ)のほうがアタックが穏やかなぶん、柔らかく聞こえます(ただしハープの高音域はアタックが硬質です)。
キンキンさせずに音量感だけアップさせたい、という観点なら、ピアノの音量をそのままにしてハープ(リラ)のほうを上げる、という逆の調整のしかたもあり得るでしょう。
いずれにしても、ピアノ単品だとキンキンしがちでも、別の音色を重ねるだけで響きがすこしまろやかになります。
わたしのMML作品でそういう考えかたを実践した曲としては「銀の点描」があります。ピアノにうっすらハープを重ねて、両者の音量の配分を変えることで強弱をつけようと試みました。
ほか、フォルテの表現として、1オクターブ上を小さく重ねる、という手法も挙がりました。強い音や明るい音は、倍音の量も多くなる傾向があります。倍音にあたる音(1オクターブ上や、さらにその5度上の高さなど)も音符でこっそり鳴らしてしまえば、強い音に聞かせられる、というわけです。こっそり、というのが肝腎で、ちょっとでも大きくしすぎると、ふつうに「1オクターブ上を重ねて弾いている」ふうに聞こえてしまうので加減に注意です。
どちらも、強弱の話に限らず「音色づくり」に使える技でもあります。
特集・演劇イベントと演奏
初めて今回、外部のゲストを招いた企画を催しました。
「演劇イベントでの演奏~マビ劇スタッフにきく!」と題して、《マビ劇》の第21回公演で音楽を担当したスタッフのみなさまとともに、劇中の使用楽曲の再演とインタビューをお届けしました。
マビ劇は、タルラークサーバーで演劇イベントを展開しているプロジェクトです。過去には《Fun!Pro》など、演劇系のユーザーイベントがほかにもありましたけれど、近年は演劇イベントといえばマビ劇、といってよいでしょう。5月11日の第21回公演は、童話の「人魚姫」をもとにした喜劇「The W Mermaid」でした。
脚本を書くひとがいて、演技をする役者がいて、背景や舞台効果を手がける大道具班がいて、BGMを受け持つ音楽班がいて、お絵描きチャットやポスターをつくるひとがいて、……といったぐあいに、なにしろ総合芸術ですからたくさんのひとがイベントに関わります。
めろさんは長らく音楽班のメンバーとして、曲づくりや演奏に関わっています。わたしはこの第21回で初めてスタッフとして参加し、合奏を数曲だけ手伝いました。

画像1は、第21回の上演で締めくくりのスタッフロールのときに演奏しているようすです。そのほかの劇中のほとんどの時間は、客席のそばで黒いローブを着て演奏します。
今回は、このマビ劇の音楽班にスポットライトを当てて、お仕事探訪というか、その舞台裏に迫るというか、そういった企画を組みました。
わたしは長らく演奏会イベントをおもな活動の場としてきました。演奏会でも「曲を弾くだけ」ではなくもっとなにかできるのではないか、と演劇イベントを観るたびに思ったものです。ふつうの演奏だと正直、演奏を開始したら終わるまで操作が要らず、チャット以外することがなくて暇なのです。インタラクション機能で歌詞出しを工夫したり演奏パートナーを踊らせたり、人形カバンで腹話術したりと、個人芸とはいえいろんなことを演奏会で試してきたのも、演劇イベントのパフォーマンスの緊張感と密度に影響を受けた面が多かれ少なかれあります。
そういう観点で「楽師として演劇イベントから学べること」がひろばの特集のテーマにできるかどうか、ということを以前からぼんやり考えていました。でも、切り口としてちょっと狭すぎる感じがするし、「シラベルはこういう問題意識があってこんな実践をしてきました、演劇イベントからよい刺戟をもらっています」という話で終わってしまいそうです。
そんなわけで、小難しいことは抜きで、マビ劇の音楽班のやっていることを紹介する企画にして、BGMを披露したり、関係者それぞれが思っていることをしゃべるだけでも、けっこうおもしろくなるのではと考えました。それでマビ劇のスタッフ業に興味を持ってくれるきっかけがつくれれば、やった甲斐があるというものです。

ゲストは、画像2の右側から、バローウズさん、ドミヌーラさん、ぱすたやさん(以下「ぱすたさん」)、ファニーチキンさん(以下「鶏さん」)の4名です。出演に快諾していただいて、たいへんありがたいことでした。なお、スタッフは毎回毎回入れかわりがあるので、いま現在の音楽班がこのメンバー、ということではなく、第21回に関わったのがこのメンバー、ということです。
企画の前半を合奏コーナー、後半をインタビューコーナー、としました。
合奏コーナー
劇中のBGMを手がけたぱすたさんとバローウズさん、それぞれ3曲ずつ演奏していただきました。

演奏とともに、自作解説ふうコメントも軽く挟んでいただきました。
劇中は、台本に「演奏停止」とあればそのタイミングで演奏を止めることになります。だから本番で必ずしもフルサイズ完走できるわけではなく、また演出上いろいろと効果音が鳴ったりもするので、案外ゆっくり聴けないものです。たまにマビ劇でもコンサート系の企画が行なわれるので、そういうときにたっぷり聴けると思いますけれど、せっかくなので今回のひろばでも合奏コーナーを設けてみました。ディミニッシュが……なんて言葉が出たら絵チャットで説明を添える、なんていうのはひろばならでは、かもしれません。
マビ劇のBGMは、ここぞという場面の曲は別として、基本的に4人程度の編成に収めることになっています。これは、本番でメンバー不足になったり、合奏準備に手間どって台本どおりに演奏を始められなかったり、というリスクを減らす為です。
さきほども書いたように、劇の本番中、音楽班や大道具班などは「裏方」らしく黒いローブを着ます。今回取り上げられなかったので、脱線ぎみにここで書くと、黒いローブは支給されるわけではなくて、各自で用意します(あるいは誰かに頼めばつくってもらえると思います)。目立たなくてそれっぽいものなら種類はなんでもいいようです。とくにこだわりがないなら、衣料品店で売っている安いローブを黒く染めればOKです。

で、第21回公演でシラベルカが着ていたのが画像4の「ケルティックデザインローブ」です。腰紐で青緑の差し色を入れています。シルエットもローブ類のなかではシュッとしているほうだと思います。……黒子のローブなんかをこんなにことさらに紹介してもしょうがないかもしれませんけれど。なお、靴などはふつうのものでよく、全身すっかり黒ずくめにする必要はありません。
インタビューコーナー

ゲストも主催も、トーク番組みたいに椅子に座って、インタビューコーナーです。
いきなり余談なんですけれど、椅子アイテムはいっぱい種類が出ているものの、ふつうの椅子は案外少なく、やたら大きなオブジェクトがくっついているものばかり次々に登場していて――それゆえにマビ劇の大道具班の手札もどんどんバラエティ豊富になっていくわけですけれど――もっとふつうの椅子、家庭や職場にあるような椅子もあったらなあ、なんて思いながら、マリーのキャラで保管していた古めの椅子アイテムを何種類か競売場経由でタルラークのほうに送って、ゲストのかたにも貸し出せるように準備していました。めろさんの座っている椅子もわたしのです。種族・性別だけでなく、椅子の種類によっても座りかたがちょっと違うのがおもしろいです。
インタビューの質問内容は前もってゲストのみなさんに伝えました。それで当初は、おおまかな台本だけ用意して、質問の答えについてはその場でしゃべってもらって、という形でいいかなと考えていたのですけれど、答えのほうも事前にかっちりと書いていただけたので、それだったら答えも全部台本に組み入れて綿密に仕上げておこう、ということにしました。
台本をつくって特集コーナーをすると、めろさんもわたしもあっぷあっぷにいつもなるので、今回は役割を分け、めろさんに司会進行をぜんぶ振って、わたしは茶々を入れる程度にして、時間配分を見る余裕を残しました。

まず、劇の準備期間中の音楽班のスケジュールについて、お絵描きチャットつきで紹介しました。こちらにも書くと、
- つぎの公演のメンバー募集がかかったら参加表明
- 各メンバーの希望をもとに担当曲が割りふられる
- 締切日に向けて各自の裁量で作譜
- 本番1ヶ月前ごろから練習(日曜)に合流
- 通しのリハは2回くらい
という流れです。進捗などのやりとりはツイッターのグループDMを用います。
脚本には、BGMが「日常」とか「悲しみ」とかいうような名前で指定されています。スプレッドシートに丸印を書き込むなどして担当希望曲を伝え、ほかのひととかぶったら適宜相談。割りふりが決まったら、場面にふさわしいと思う曲(自作・パブリックドメイン・マビノギBGMのアレンジ)を自由に作譜します。トップダウン式にダメ出しされるなんてことはありません。各自が良いと思えるものを持ち寄ることで劇が形づくられます。
以下、インタビューの中身に軽く触れます。(いつもの記事と同様で、全部書いてしまうと来場してくださったひとにとってのお得感が減るので、あらましだけ書いています。)
ドミヌーラさんには、演奏メンバーとしての初参加の感想をふりかえっていただき、楽譜スクロールや楽器のインベントリ管理、演奏会での合奏のお手伝いとの違いなども語っていただきました。
ぱすたさんには、演奏班の指揮担当として、いつもどのような準備をしていたかについての説明をお願いしました。曲順の一覧表のお絵描きチャットもここで紹介しました。それから、古参の音楽班メンバーならではの思い出話を少々、過去に大変だったことなどにもちょっと触れていただきました。
それにつなげる形で、第21回公演でのハプニングをひとつ取り上げました。人魚姫がうまく唄えなくて王子が離れていくというシーンがあって、本番ではランダム演奏で表現していたけれど、これ、ほんとは……と、ここでは内緒にしますけれど、そういう裏話でした。
つづけてバローウズさんに、マビ劇のBGMならではの苦労した点について伺いました。それから、まったく逆の雰囲気のBGMをあえてぶつける手法についての質問や、今後マビ劇の音楽スタッフとして挑戦したいことについても語っていただきました。
鶏さんには、なんとなくいろんな質問がしたくなるところでしたけれど、第21回公演では効果音を担当されたので、そのお仕事に笑点を、もとい、焦点を絞りました。劇中で使われた効果音から、鶏さんが選んだ数点をコメントつきで披露していただきました。

会場のみなさんからの質問を受けつける時間も設けました。質問というより、ねぎらいの言葉のほうが多かったかも。タイミングよく音が鳴らせているのはどうして、といった質問も出ました。
締めくくりの合奏

最後に、めろさんが担当したBGMを演奏しました。スタッフロールで使われた5人合奏です。長尺なので、演奏中に今後の告知を入れてもらったりしました。
ふりかえって
特集コーナー、ゲストのみなさんのお力添えのおかげで充実した内容が届けられたと思います。台本がかっちかちで不自由ではなかろうかと内心不安だったのですけれど、それは杞憂で、みなさん適宜アドリブを加えて自然なトークを展開していました。時間が押して日付をまたぐなんて悪夢に至ることもなく、ほぼ想定どおりの時間で進行できました。
一方で、ひろばの集客力のなさを今回も思い知らされ、そこには宣伝面の課題ももちろんあるのですけれど、そもそもひろばが「入口」「きっかけの場」としてあまり機能していない問題もあります。大きな企画のときの告知のしかたについては今後も手探りをするとしても、イベントのやりかたはいまさら変えようもないので、考えかたのほうを変えたり趣旨を見直したりするしかないのかもしれません。
スクリーンショット集

21時30分からの演奏コーナー。前回に弾きそこねた「温め直しのエチュード」ほか、あわせて3曲。

そのあと、いつもなら夜明けを待って40分からオープニング曲とあいさつなのですけれど、今回は5分前倒しで、まだ暗いうちから本篇開始です。2025年6月のアップデートで、ギルド作成時に必要な要件が緩和されて、さっそくわたしもギルドを初めてつくりました。頭上のたまごマーク・ひよこマーク(累積レベルが低くギルド未所属のキャラの名前の上に表示される)と、ようやくおさらばです。ギルドタイトル「口がすべった」は、この日かぎりのネタです。


いつもの質問相談・試演奏コーナーでは、雅楽ものの合奏もひとつありました。

画像13は、特集のインタビューコーナーを、植え込み側から見たようす。いつものサポートメンバーのかたにBGMのリピート演奏をお願いしました。BGMは「どういたしましてのおなじみさん」。

23時50分ごろに記念撮影をして閉会となりました。お越しいただいたみなさん、ありがとうございました。
次回は8月末にマリーサーバーで開催の見込みです。大きな企画は予定していません。
関連リンク
- マビ劇の公式サイト