エリン音楽ひろば 2023年8月

オンラインRPG『マビノギ』で、2023年8月31日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第12回、ルエリサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

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内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を以下に要約しています。当日に言及できなかったこともいくらか補足しました。このほか、テスト演奏が2曲ありました。

違う曲を(メドレー形式で)つなげる際のコツとかあれば教えて欲しいです

これは、題材や目的によっても変わってきます。単に複数の曲をひとまとめにして弾きたい、ということであれば、音楽的な意味でのつながりのよさや仕掛けは必須ではありません。曲間の休符をあまり長くしないほうがいい、というくらいでしょうか。

ダンス系の音楽のノンストップ・メドレーの類は、テンポを揃えることが多いようです。もっといえば、クラブでDJが次々にレコードをかけていく際、テンポがおなじ作品をたくさん用意しておき、片方をフェードアウトさせながら片方をフェードインさせてつなげる、というようなことがよく行なわれます。

また、曲のコードや調がわかっていれば、音楽的にきれいにつなげるのが楽になります。たとえば、前の曲の終わりと次の曲の始まりがおなじコードでおなじ調なら、前の曲を締めくくると同時に、つぎの曲を重ねることができます。

おなじコード進行を使っている曲同士は、(ベルトコンベアで次々に運ばれてくる回転寿司のように)スムーズに並べやすいのですけれど、調が違う場合が多いので、どれかの曲にあわせて移調をする必要もあります。ただ、曲やジャンルによっては、原曲の調のままにするほうが聴き手に好まれる場合もあります。

メドレーは普通、曲のなかの一部、たとえばサビの部分だとか、3番まであるなら1番だけとかを抜き出して並べます。そのどこからどこまで(の小節)を引用するのか、という点も重要で、いまひとつ自然につながらないなと思ったなら、何小節か前からつなげてみると、うまくいくこともあるかもしれません。

マビノギで合奏するのであれば、楽器構成を練る必要もあります。メドレーにする曲それぞれでまったく別の音色が要るとしても、実際の合奏では実現しづらいので、曲によってかなりアレンジしないといけないことが多いかもしれません。

わたしの「組曲 ハマグリさん」なんかは疑似メドレーといえるでしょうか。曲と曲のあいだに短いフレーズを入れています。このような手もあります。わりと強引なつなげかたでも、そんなに気にならないものだったりもするし、違和感や落差がよいインパクトをもたらすこともあるので、いろいろと試してみましょう。やはり、メドレーものの音源をたくさん聞き、つなげかたをまねてみるのが一番です。

(2023年10月22日追記:)TTP45☆うたっておどろう・なつかしの童謡メドレー」が、ダンス系の音楽のノンストップ・メドレーみたいなものですので、参考にしていただけたら。4拍目に次の曲の準備のようなフレーズを(たとえばドラムで)ちょっと挟むだけでも、スムーズにつながります。

「MabiIcco」のエラーで困っています。MIDIデータを読み込ませて編集しようとすると、音符を入れるなどの編集ができず、「テンポをすべて削除すると直る可能性があります」というエラーが出る。テンポを消しても直らないことがあり、その場合はそれ以上の編集ができなくなる。この発生条件、または回避方法があれば教えてほしいです

おそらく「マビノギMMLで表現できない短い休符」が生じてしまうような、音符やテンポの配置が含まれていると、そのエラーが出るようです。

MIDIデータに限らず、「3MLE」などでつくったMMLを「MabiIcco」に読み込ませたときにも、同様のエラーが編集時に起きることがあります。

当サイトに載せているMMLが「MabiIcco」でいじれないのは、なにかプロテクトでもかけてるんですか? と訊かれたことも以前ありました掲載しているMMLについてのページの「そのほかの留意事項」の節を参照。訊いてきたかたは、ほかでもないめろさんでした。)その件については、その後のアップデートですでに改善済み。それでも「MabiIcco」はピアノロール型のMML作成ソフトですから、音符を入力する際に「マビノギMMLで表現できない休符」ができてしまう状況があるかぎり、このエラーに出くわすのは避けられないようです。

回避方法は、なるべく単純なベタ打ちぎみのデータを読み込ませる、というのが確実なのですけれど、バージョン1.2.80でMIDI読み込み時の休符の扱いが改善され、オプションに「アライメント」も加わっていますから、繊細なMIDIデータでもけっこううまくMMLに置き換えてくれるようにも見えます。この記事を書くにあたってちょっとばかりMIDIインポートの実験をしてみたものの、特定の箇所でエラーが起きることはあっても、まったく編集ができなくなるような状況を生み出すことはできずじまい。あまりはっきりした結論が書けません。

「MabiIcco」上ですべての作業をすれば、その種のエラーは起きないのでしょうけれど、MIDIシーケンサーでの下ごしらえを経由する楽師は案外少なくないようですから、「MabiIcco」だけでつくれ、というのはちょっと酷な話。でも、エラーが起きる場合に、そのピアノロールを見ながら改めて「MabiIcco」上で音符を手作業で再配置する、という声も聞かれました。たいへんな労力です。ほか、すべて切り取って、また貼り付けるだけで直ることもある、という話もありました。こまかい表現を犠牲にしていいなら「音符間の休符を削除する」機能を使うのも対処法のひとつかもしれません。

コード進行とかコード譜とかの「コード」そのものが理解できてません。どうしたらわかるようになりますか

コードとは、日本語で和音のことです。和音とは、「高さを異にする二つ以上の音を同時に響かせた時の一緒になった音」(『新明解国語辞典』)のことです。その和音のなかでいちばん大事な「根音」と、その上に乗っける音の構成を、〈Am〉や〈G7〉などのような「コードネーム」で表わします。和音のなかでも、コードネームで表わされるような和音のことを指してコードと呼ぶことが多いと思います。当サイトの記事向けの音楽用語集の「コード、コード進行」の節にも、ごくかんたんな説明を書いています。

で、質問されたかたの話を閉会後にじっくり聞いてみたら、リアルの楽器演奏の経験者で、五線譜は読めるけれど、コードネームだけでどうしてみんな演奏できるのかが謎、という趣旨の質問だということがわかりました。譜面を追いかけて吹奏楽器を吹くのと、ギターやなんかでコードネームを頼りにコード弾きするのとでは、住む世界が違うというか、想像以上の懸隔があるということなんでしょうね。

五線譜が読めるならそれでいいのでは、なんてわたしは逆に思うのですけれど、リアルの演奏はさておき、MMLをつくる際に、参照できる資料がタブ譜やコード譜だけのことが多々あり、コードがわかればMMLをつくるのも楽になるだろうなあ、というのが質問の背景だったようでした。

コードネームだけで原曲再現はできません。たとえば〈C〉というコードの構成音は〈ドミソ〉ですけれど、1オクターブの範囲内に〈ドミソ〉が密集しているのか、それとも〈ド〉の1オクターブ半上に〈ソ〉を重ね、さらにもっともっと上に〈ミ〉を置いているのか、あるいはどの楽器がどの構成音を受け持つのか、こういった情報がコードネームには含まれていません。コードネームは、あくまで手がかり程度のものとして捉えましょう。でも、コードネームがパパッと読めるようになれば、かなり耳コピの助けになることは請け合いです。

おまけの参考資料として、アコースティックギターで、〈C〉のコード(構成音が〈ドミソ〉の和音)を、4通りの指板の押さえかたで鳴らした音源を用意しました。それぞれ、アルペジオで低い弦から順に鳴らしてから、それらの音をストロークで一気に鳴らしています。

4種類のポジションでCコードを弾く.m4a[AAC]

響きが4種類とも違いますけれど、どれもコードネーム〈C〉の和音です。ほかにもいろんな押さえかたで〈C〉が弾けます。ギター以外の楽器でも同様です。もし、押さえかたを示した図(ダイアグラム)が併記されていれば、どう押さえてどう鳴らすかもわかるので、打ち込みで表現する際の音符の置きかたも決まってきます。そうはいっても、そもそも録音された演奏が市販の楽譜のとおりの弾きかたをしているわけでもないのですけれどね。

ひろばでは、みなさん思い思いにコードに関する話をしゃべってくれました。質問よりも2歩3歩先のような話が多かったですけれど、それだけコードとかコード進行とかに関心が強いひとが多いというのを実感しました。解説記事が巷にあふれるのも当然なわけですね。

この2、3年で音のバランス調整ってありました?

数年前に書いたMMLを弾いたら、バイオリン類がキンキン響いて……というお話でした。そのとおりで、今年1月の64bit改変でいろいろ変わりました。くわしいことはマビノギのアップデートによるMML演奏への影響のページにて。……バランス調整、なんていう気の利いた修正ではなくて、変わらざるを得なかったというのが実情だと思います。

演奏音に破壊的変更があったのは、それより前になると、2016年末のMusicQ改変のときとなります。

私は、MMLをつくってる最中から文字数削減を意識して、音の変更などをするのですが、皆さんは文字数調整は最後まで書きあがってからしますか

文字数と闘うのはひととおり音符を入れ終えてから、というひとのほうが多数でした。一方、質問されたかた以外にも、文字数の節約を考えてMMLを書くひとも何名かいました。わたしもそうです。

短い音符を1拍ごとに入れてパーカッションふうに鳴らす、という場面で、仮に64分音符なら〈L64cr9r8cr9r8……〉というふうに置けますけれど、ちょっと発音が長くなっていいなら〈L38crr5crr5……〉とも書けて、このほうが1拍ごとに1文字節約できます。1曲ぶんの長さで〈L64cr9r8cr9r8……〉のパターンを試しに入れてみて、ああ全然足りない、と見積もれたら後者のパターンに置き換えたり、部分的にあきらめて全休符にしたり、ということを、各パートの組み立て(と、そもそもの曲づくり)と並行してやっていくことが多いですね。

ちょっと書きはじめてみて、文字数が絶対的に足りないと気づいた段階であきらめる、という声もけっこうありました。わたしはそういうことがあまりなかった気がします。自作曲だから、MML演奏の制限に合わせるように曲構成をまとめようとしがちだった面もあるかもしれません。

ドラムなら、〈メロディ・和音1・2〉の3パートに、バスドラムやスネアやタムやハイハット類をうまく振り分けると、音量指定にも都合がよく、文字数が抑えられるでしょう。こういったことは、先の質問の答えにかかわりなく、多くのかたがやっているようです。

また、文字数を削る場面は少なく、むしろ演奏時間の調整のほうを気にする、というかたもいました。

みなさんがいままでつくったMMLで、一番長い曲、短い曲について教えてください

効果音のMMLをつくったことがあるひとなら、短い曲は数秒程度になるでしょう。長い曲については、ひとによってばらばらです。あまり長いものはつくったことがないかたもいるし、7、8分台のMMLをつくったことがあるというひとも何名か。

ゲーム内で弾けるわけもないのに、30分、40分のMMLを書いたことがあるというひとも。作譜そのものが楽しかったんでしょうねえ。

わたしの最長のMMLは「TTP45☆うたっておどろう・なつかしの童謡メドレー」が9分55秒です。これはまだ1回弾いたきりで、サイトにもまだ載せていません。掲載しているバージョンで9分15秒です。尺の長い作品は、演奏する機会を慎重に選ばないといけない気がしてしまいます。

ザブキエルの楽譜集やチューニングキットは、自分で手に入れたかたは何周くらいかかりました?

マス音楽ダンジョンでの楽師向けアイテムの出現確率の話なのですけれど、結局は「運に左右される」という話になってしまいます。わたしの場合、メモに残しているかぎりでいうと、883周でチューニングキット3つ、楽譜集10、といったところでした。ほかのひとの証言と突き合わせると、これはちょっと引きが悪い例だったようです。

ゲームというのは効率を求めるだけでなく、経験がより大事ですから、1つ出るまでは地道に回ってみるのもいいと思います。いやあ苦労したなーあのときは、なんて語れますし。でも、まあ、以前にも書きましたけれどエリン音楽ひろば 2022年2月の記事)、ほかの方法でお金をためて、競売場などをこまめにチェックして、チューニングキットが安く売られているのを見かけたらすぐに買う、このほうが精神衛生上よい、と考えます。

ペット探検隊の「聞こえますか?」クエストでも、同ダンジョンの報酬が手にはいります。短期集中でこなせるものではなく、確率的にも期待しづらいので、おまけのつもりで気長にやるしかありません。また、冒険家の印章でザブキエルの楽譜集が買えるようになりましたけれど、色違いが欲しいのでない限り、現状では、そこで楽譜集を買うくらいなら、ほかのアイテム(完全回復ポーションなど)を買って、それを競売場で売りさばき、もうけたお金で楽譜集を競売場で買うほうがずっと得します。

弱いので、交易時に出てくる略奪団とやり合う際に音楽バフが必須です。そのときに弾くMMLの長さの最適解が知りたい

子守唄をかけて略奪団を寝かせ、戦場の序曲で攻撃力を上げているそうです。

ストップウォッチで計ってみたところ、子守唄の効果が出るまでには1.5秒くらい、戦場の序曲は2.5秒前後。ちなみにいちばん起動の遅い豊作の歌は5.5秒ほどでした。

どんなに短いMML(たとえば〈MML@t255r64;〉)を弾いても、空白文字のみのMMLを弾いても、演奏が止まるまでに5秒ほどかかるようになっています。よって、豊作の歌以外は、空白文字のみの無音譜面で問題なく効果が起こせます。

豊作の歌を半角空白1文字のみのMMLを使ってかけようとすると、バフ効果が発生するより早く演奏が終わってしまい、数回に1回くらいしか成功しません。成功したり不発だったりするということは、演奏終了までの時間にコンマ数秒の誤差があるということでしょう。〈MML@t45r1;(テンポ45で全休符ひとつ、5.33秒)なら、おそらく確実に豊作の歌がかかるようです。

本題は戦闘用のバフですので、豊作の歌を度外視するなら、とくに凝らずに半角空白ひとつ書くだけでいいと思います。

ところが、子守唄1回だけでは敵が全員寝ないので、5秒で終わるのも困る、というお話だったのでした。でも、全員が寝るまで弾き続けるより、眠った敵を先に始末するほうが……といいだすと、もはやひろばの話題の範疇ではないので、まとめとしてはここまでです。

スクリーンショット集

画像1:開会前

画像1、ふつうの薪がないからわざわざ高級薪を消費してキャンプファイアを焚き、そのことをネタで喋ったら、薪の差し入れをいただきました。

画像2:休憩時

途中の小休憩、オルゴールのソロ演奏で涼んでいただいてるところです。

画像3:テスト演奏その1
画像4:テスト演奏その2

画像4のようすがちょっとわかりにくいと思いますけれど、おなじ位置に密集してのピアノ合奏をしているところです。

画像5:記念撮影

23時45分ごろ、閉会時の記念撮影です。みなさんありがとうございました。

次回は、なにかお楽しみ企画をやろうかと考えています。以前のような講座もやってほしい、という声にも応えられたらいいのですけれど、いまのところ、質問相談コーナーが充分にまじめ路線で濃いので、バランスをとるなら企画のコーナーはとっつきやすいもののほうがいいかなあと。