エリン音楽ひろば 2025年10月

オンラインRPG『マビノギ』で、2025年10月26日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第24回、ルエリサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベルカ)です。

当日のようすのスクリーンショット

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内容のまとめ

出てきた話題・質問に関して、ひろばでのやりとりをもとに、つらつら書いています。

トランスというジャンルの作曲にチャレンジしてみたんですけど、やったことのないジャンルなので勝手がわからず、これじゃない感が拭えずうまくいかない

コード進行の例を拾ってきて当てはめてつくってみている、という段階のようでした。実際にどんな感じか、制作中の曲を弾いていただきました。

トランスは、テクノ系ダンス音楽の一種です。テクノ系ダンス音楽は、一定のドラムパターンの繰り返しを土台とすることがほとんどなので、まずは単純なパターンをひたすらコピペで並べるところから始めると、ドラムの打ち込みに苦手なかたでも取り組みやすいかと思います。

エリン音楽ひろば 2022年10月のドラム道場の特集で、いろんなドラムパターンを取り上げました。そのときのお絵描きチャットにならって、一例を図示してみました(画像1)。

画像1:ドラムパターンの一例

テクノ系ダンス音楽では、1・2・3・4拍目いずれにもバスドラムを置く「4つ打ち」が頻出パターンです。そのウラにクローズドハイハットを置いてみましょう。バスドラムを「ど」、ハイハットを「ち」で表わすと、「どちどちどちどち」となります。昔のロックや歌謡曲にくらべて、かなり大きめの音量で鳴らします。強弱はひとまず一定でかまいません。スネアはひとまず省いておき、盛り上がりに応じて2・4拍目に加えてみてもよいでしょう。

このパターンに追加で重ねて、おもに16分音符刻みで、ハイハットか、それに近い種類の(たとえばタンバリンみたいな感じの)音を小さく入れたり抜いたりすれば、それだけでも間が持ちます。

この、入れたり抜いたりする、というのがポイントです。いろんなメロディをつなげていくかわりに、並走できるパターンをいくつか用意して、それらの抜き差しで変化をつけていく、という感覚でつくります。

テクノ系ダンス音楽では、ほかのジャンルよりもかたくなに、4の倍数の小節数をひとまとめにして構成することをお約束にしているようです。だいたい8小節か16小節ごとに、文章でいえば改行をするかのごとく、なにかフレーズを加えたり止めたり切り替えたりします。それぞれのまとまりの終わりでドラムを休みにしてみたり、スネアを「だ、だ、だ、だ、だだだだだだだだ」とこまかく連打させてみたりすることも多く、そうやってつぎの展開への期待を煽ります。

シンセのフレーズには、すこしずらしたおなじ音を小さく鳴らして、エコー、疑似リバーブをつけると恰好よくなります。

マビノギのチェロやバイオリンは、生楽器っぽさの強い音色なので、これらを使うのは避けるほうが無難です。

おなじフレーズ、あるいはおなじ高さの音をひたすら続けながら、音色の明るさだけをゆっくり増減させて変化をつける、という手法もテクノには多く、単調な反復であってもそれで間が持つのですけれど、これをマビノギMMLでやるのは至難の業です。倍音となる高さに音符を置いて音量を上げ下げすれば擬似的に表現できますけれど、楽器の発音音域に余裕がないのでなかなかそこまで凝れません。複数の似たタイプの楽器をユニゾンで鳴らして、それぞれの音量の比率をすこしずつ変える、というやりかたが現実的です。

トランスが流行してから何十年も経っているし、いくつものサブジャンルが生まれ、いろんな他ジャンルとの交差が起きています。千差万別、とまではいわないまでも、かなりの幅があり、トランスとはこういう曲調だよ、とひとくくりには述べづらいです。

だから、トランスはこうやってつくればいい、と書くのはよくないのですけれど、それでも手がかりになりそうな要点をまとめるとすれば、ジョギングのようなほどよいテンポで、4つ打ちの単純なドラムパターンとシンセのこまかい音符のフレーズをとことん反復し、8小節や16小節ごとに音を入れたり抜いたりしながらすこしずつ高揚感や酩酊感を強めていき、途中でドラムやシンセの反復フレーズを止めて休憩タイムも挟んで、……という感じでしょうか。これで、よくあるトランスの様式を踏まえることはできると思います。

メロディが前面に出ないものが主ですけれど、歌もののトランスもあるので、その点も一概にはいえません。

特定のコード進行を借りてくればトランスふうになる、ということはありません。

……と、こんなところでしょうか。あと、この質問にちなんで、別のかたが4つ打ちを用いた曲を例として演奏してくれました。

オルガンの音の表現、シャリュモーとフルートでできると教わったのですが、ほかの楽器の組み合わせかたはありますか

シャリュモーとフルートによるクラシックな演奏を昔からやっているかたをまねして、わたしも「オルガンのためのあやしい旋律」「病めるときも健やかなるときも」などといった、その手のMMLをつくったことがあります。ただ、こういう組み合わせでオルガンの音色が出せる、というと語弊がある気もします。わたしたちはなんとなく脳内変換して想像で補いつつ聴く習い性が身についているけれど、もしかしたら、マビノギの演奏界隈の外側のひと、マビノギを知らないひとにこういう音源を予備知識なしに聞かせたら、オルガンっぽいなんて思いもせず、チープで古臭い音色を鼻で笑うだけかもしれません。

曲そのものがオルガン曲らしければ、音色がどうあれ、それっぽく感じられるということもあろうかと思います。

で、本題ですけれど、フルートやシャリュモーのような素直な持続系の音色を使い、1オクターブ上や1オクターブのさらに5度上、つまり倍音となる高さに小さい音量の音符を乗せる、という方法が音色づくりに有力でしょう。ただ、フルートもシャリュモーも音域が3オクターブしかないので、もとのフレーズの1オクターブと5度上をなぞり続ける、という条件だけでもかなり手詰まりになりがちです。ホイッスルを加えてもなお不足ぎみ。

チューニング系の笛は、音域が広いかわりに癖が強く、音を伸ばしたときの音色や音量の変化が大きいので、それを避ける為にトレモロを使うなどするといいです。連打しているのがあからさまにならないように加減するのがちょっとめんどうなところ。

オルガンとひとくちにいっても何種類かあります。ハモンドオルガンだったら、アタック音を強調するとそれっぽくなります。「舞いあがり降りつもる」の間奏は、これもほかのひとの演奏を参考にして、フルートにピアノを重ねてハモンドオルガンらしくしようとしました(あまり狙いどおりにならなかったけれど)。倍音にあたる音を上手に重ねていけば、ハモンドオルガンのドローバーの出し入れも表現できるかもしれませんけれど、トランスの質問のところでも書いたように、マビノギの楽器の場合、制限が強すぎてそこまで凝れません。持続系の音色は発音音域が狭いし、減衰系の音色のほうも、高さによる音質のばらつきのせいで別々の音に分かれて聞こえがちな傾向がある印象です。

西洋クラシックの演奏らしさを出すなら、疑似リバーブのテクニックも欠かせません。ポップスなら必ずしもそこまでしなくてもいい気がします。

電子音の出しかたがもっと知りたい

トランスの音づくりの話の、追加注文のような質問でした。

ここでいう電子音とは、正弦波とか矩形波とかに限らず、電子楽器の音、シンセサイザーの音を広く指しているものとします。で、ギターの表現にいつも困っているわたしからすると、リュート、ウクレレ、マンドリンなどだって、むしろ電子音っぽく鳴らすほうが得意なのではないかと思えます。電子音っぽい音を出すというより、電子音が鳴っていそうな雰囲気の曲に仕上げることで、おのずからそのように聞こえるのではないかなと。これはオルガンの件でもおなじことがいえます。

トランスの質問でも書いたように、エコー、ディレイをつけると効果的です。それがめんどうならリラなどの音色が便利です。たとえばウクレレとリラをユニゾンで鳴らすと、ツヤのある音色になります(「つぼみ」のイントロなどを参照)

また、ほかのいろんな手法にもあてはまる話ですけれど、64分音符のような短い音符を上手に使うことが、アイデアを見つけるコツです。

ひろばを始めたころから、音色づくりについての話題はしょっちゅう出ていて、みなさんの関心はそのへんに集中しているのかなという印象があります。マビノギの楽器の詳細や、エリン音楽ひろば 2022年9月の「特集・既存の楽器でいろんなパーカッションを鳴らしてみよう」の節などにも、音色づくりのヒントが転がっているかと思います。ただ、わたしの場合、音色そのものを再現することにはあまり関心がないので、「こうするとナニナニの音色に似せられる」というパターンをそんなに知っているわけではありません。「この曲でこうやってみてそれっぽく聴かせられた」例がいくらかある、という程度のことです。

スクリーンショット集

画像2:開会後のBGMコーナー

21時30分からの演奏コーナー、今回はちょっと多めにふたりで5曲。わたしは「石焼きいも」の変奏と「昼下がり十三里」、「アイリッシュアイリ -3-」を弾きました。

画像3:質問・相談コーナー

この日、ラフ王城周辺マップはぐずついた天気でした。キャンプファイアを何度もつけました。それでも画面が暗くて暗くて。

画像4:合奏コーナー

画像4と5は締めの合奏コーナーのようす。今回もわたしとめろさんからそれぞれ1曲、季節ものの曲を。わたしのは、去年にもべつのところで弾いた「幻想コーラスつき、間奏から半音上げ」バージョンの「落葉樹」。幻想コーラスを鳴らしてから合奏を重ねる段取りについてもついでに軽く紹介しました。

画像5:合奏コーナー

めろさんは「秋風」を演奏。去年の月光島ライブが偲ばれます月光島ライブ開催後記を参照)。長い長い夏がようやく過ぎたかと思えば、もうこたつを出したくなる冷え込みになり、秋らしい秋が年々どんどん失なわれているなか、せめて音楽で秋気分にひたろう、という2曲でした。

画像4:テスト合奏

1つめの質問のときの演奏のほかにも、テスト合奏がありました。なんだか今回は演奏が盛りだくさんでした。

画像4:エンディング

記念撮影をして、23時20分ごろに閉会。

来ていただいたみなさん、ありがとうございます。次回は年末にタルラークサーバーで開催予定です。日にちが近づいたら詳細をおしらせします。