エリン音楽ひろば 2024年7月

オンラインRPG『マビノギ』で、2024年7月7日に開催したプレイヤーイベント「エリン音楽ひろば」の内容を載せています。

第17回、マリーサーバーです。主催は、羊野めろさんと、わたし(シラベル)です。

このページで扱っている『マビノギ』のゲーム画像やゲーム内データの知的財産権は、株式会社ネクソンおよび韓国NEXON社に帰属します。© NEXON Korea Corporation and NEXON Co., Ltd.

内容のまとめ

内容は、羊野めろさんのブログ記事もあわせて参照してください。

出てきた話題・質問を要約しています。当日に言及できなかったことも書いています。

めろさんと、シラベルさんの、今晩の夕食はなんでしたか?

わたしは夕食がまだでした。夜型の生活リズムなので。閉会後に食べました。

みなさんは「MabiIcco」について、こういう機能あればとか、ここ困ってるとか、そういうのありますか

これは、テスト演奏後の話の流れで、わたしが持ち出した話です。質問のひとつとして書き残しておきます。

「(小節の範囲を指定して)短い曲をどんどんつなぎ合わせるようなインポートができたら助かる」とか「文字数があふれたトラックの内容を2トラックぶんに振り分けられたら」とか「文字数多い順から〈メロディ・和音1・和音2〉となるようにしてほしい」といったコメントがありました。

マビノギのサービスが終わったり、MML演奏機能が廃止されたりしたあとも、MML文化を継承する最後の砦になるのがMML作成ソフトかもしれません(音色ファイルの再入手に関する問題はあるにせよ)。そういう意味でもMML作成ソフトが便利になるほうがいいはず。ソフトの作者さんに提案を投げるのを遠慮しているひとも多いと思いますけれど、たいていは検討(うまくいけば実装)してもらえます。最近わたしが要望した件は、和音パートにテンポ指定が含まれる場合のエラー · Issue #109(外部リンク)で、バージョン1.5.4に反映され、当サイトに載せているMMLは(後追い重ね系の特殊なものを除いて)すべてエラーなく読み込みできるようになりました。わたし自身は「3MLE」をおもに使っているとはいえ、ほかのひとがわたしのMML作品を「MabiIcco」で鑑賞する場合の為には、この改善はありがたいことです。そういうわけで気軽に、ソーシャルメディア(ツイッターなど)で伝えるか、《GitHub》で課題[イシュー]を立てるかして、「MabiIcco」の品質のさらなる向上にみんなでどんどん貢献しましょう。「和ねこ」もまたしかり。

コードががくっと変わると(前後で共通の音がない場合など)、ギャップを感じるときと、なんの違和感もないときとあります。この差はどこから生まれるのでしょう?

言葉だけだととっかかりがないので、実例(ゆったりした、おそらく自作曲)をピアノ合奏で弾いていただきました。

本来質問したかった内容とずれるのかもしれませんけれど、その実例で違和感があるらしき箇所に論点を絞りました。聴いたかぎり、コード進行の骨組みとしては順当でスムーズなものでした。そこに9度や7度など(テンションノート)が加わり、その複雑な和音の響きがやや低音域に集まり過ぎているせいか、または、その9度や7度などの存在感が強いせいで意図と異なるコードに聞こえてしまうせいで、もどかしい、惜しい感じがするのかもしれない、とわたしは察しました。和音の構成音がおなじでも、転回(構成音の積み重ね順を変える)、分散和音化、わずかなずらし、音量バランスの調整、などで印象が変わることがあります。根音以外の省略できる音を抜くほうがいいこともありましょう。

聴いていて心が鎮まる曲にしたいなら、違和感をなくすに越したことはないと思いますけれど、スムーズすぎて淀みないのも、白々しいというか、匿名性が強まるというか、あまりおもしろくなかったりするものです。もどかしい感じも取りつくろわない、訥々とした調子で聴かせるほうがリアリティがあって好ましいかもしれません。

うちの姪っ子が「ぼっちざろっく」の影響でエレキ始めたんですけど、自分は人に教えるほど上手でもないので、いまのところ黙って見守ってる状態です。いいアドバイスしてあげたいんですが

音楽でもほかの芸事でも料理でもスポーツでもゲームでもプログラミングでも、教えたいひとはたくさんいて、動画サイトで探せばいっぱいそういうのが出ていて、チャンネル登録お願いしまーす、と血の叫びをあげています。信頼できる発信者をなんとか選りわけた上で、どんどん参考にしましょう。

実演CDつきの教則本を、いまもわたしは使っています。早いうちから、構えかた、ピックの持ちかたなども意識づけるほうがいいと思います。軽視しないほうがよいことです。

エレキは絶対にアンプに通すべし、そうしないと不要な音を鳴らさずに弾く訓練にならない、という具体的な意見も出ました。そうそう、耳が痛い。余弦のミュートは、わたしの苦手とするところです。

クラシックを弾くのではないのだし、弾きこなせないところで悩んで早々に挫折するより、てきとうにごまかしつつ1曲ぶん弾き切ることを優先したほうが、モチベーションが保てると思います。完成度を上げるのはあとでよし。アドバイスとか手ほどきとかいわず、楽しんでセッションしたらいいのではないでしょうか。身近に、一緒に演奏できる相手がいること自体が幸せなことです。お互いの好みに付き合っているうち、自身の視野やレパートリーも拡がっていくでしょうし。

みんなゆで卵割切りにするやつの糸をピーンと鳴らして遊んだことあるよね? あれへんな音して面白いんですよねえ。まあそれだけなんですけど

残り時間が少ないので軽い質問なにかありますか、という呼びかけに応えてくれました。そうですね。当サイトにも「きりきり卵切り器」という迷作が載っています。卵切り器で鳴らして遊んだことある、という声はいくつか挙がりました。音楽は日常のなかにあります。

以上の質問のほか、テスト演奏もありました。

特集・フリースタイルジャム

休憩を挟んで、後半のコーナーは「フリースタイルジャム特集」です。

2016年12月のフリースタイルジャムの実装以来、フリースタイルジャムならではの演奏の可能性をわたしは追求してきました。その総まとめのような内容にしました。

打ち合わせの際、わたしがなにに気をつけてジャム用譜面を書いているのかを、くわしく聞きたいひともいるのでは、ということをいわれて、そんなの、また講座みたいになってしまうからちょっと……と思いましたけれど、演奏を楽しんでもらいながら、作譜の奥義に限らずフリースタイルジャムのあれやこれやを語り倒す形にするならいいかな、と考え直しました。その場で理解してもらえるかどうかは目標にしませんでした。

ほんとに詳しく知りたくなったときに、マビノギのフリースタイルジャムによる演奏のページを改めて参照していただければいいですし。いってみれば、そのページに書いていることを、多くの実演を加えつつ再構成しただけなので、当サイトをよく読んでいただいているかたには既知の話がほとんどだったと思います。ただ、わたしの文体が読者を選んでいる面もあるかもしれませんけれど、サイトの記事で説明していることが、楽師のみなさんの共有知になかなかなっていません。めろさんでさえサイトのMML解説記事をあまり読んでくれていないようすです。そういうことを痛感しているから、サイトの記事内容をもとに実演するだけでも意味はあるかな、と思いました。

知識がなくてほとんどわからない話であっても、専門分野を熱心に解説しているひとの、その活き活きしたさまに触れているだけでも、なにかしら感化されるときがあります。そういう「なんかよくわかんないけれど最先端ならではの熱気が伝わってくる参加型プレゼン」のようなものにしたいと思いました。いちおう、世界のマビノギユーザーのなかでも、これだけフリースタイルジャム専用譜面の知見を積み上げたのはわたしのほかにいないだろう、という自負はあります(検索しても出てこないので)

来ていただいたみなさんにどう映っていたかはわかりませんけれど、特集中のわたしは白熱するどころか、寂しさが募っていました。ひろばの来場者がもうちょっと多かったらなあ、というのも(毎度ながら)ありましたけれど、とくに気持ちがくじけたのは、ジャムのミニゲームに失敗したときに体型が巨大化するのがいやなのでジャムには参加しない、と決めているひとが何人もいたことでした。気持ちはわかります。ジャムの現場の騒々しい光景は好みの分かれるところです。わたしだって巨大化するのはいやです。ジャム中にぞろぞろと現れるクモやヘビも邪魔です。それらはモンスターと異なり、アイテム「携帯用ディフューザー」でクマのぬいぐるみの外見表示に差し替えることができません。しかし、それしきのことが参加の障壁になっているのだとすると、演奏する側と聴き手側との垣根を下げようという思いでジャム演奏に取り組んできたのが、むなしくなってしまったのは否めません。いっそ「フリースタイルジャム中の見た目表示をマイルドにするディフューザー」や「体型維持ポーション」の実装を、みんなでアンケートなどで要望したらいいではないかと思います。「MabiIcco」と違って、ユーザーの声が開発スタッフに届くのかどうかはわからないですけれど。

まあ、ジャムに参加しない信条を明言してもらえたのは、ある意味でよかったかもしれません。無反応のほうがつらいですし、ふつうの演奏会ではそういう事情を知る機会もないのです。


以前、めろさんのフリースタイルジャム合奏の試作をひろばで弾いたことがありましたエリン音楽ひろば 2021年11月参照)。ふつうの合奏譜面に準じたつくりになっていた為、ジャムの不確定要素に弱いという不安があって、そのあと最終的にはふつうの合奏作になっていました。

今回めろさんは、わたしにあれこれ訊きながら、フリースタイルジャム合奏版の「たなばたさま」を書きおろしました。たのしいサンバのアレンジ仕立て。ジャム専用譜面としてうまくいくか、MMLの添削というか確認を頼まれ、これではシンバルでうるさくなるから〈和音〉パートを使うべし、音量ももっと下げるべし、などのことを伝えました。

本番では、添削前の〈打楽器が加わるとうるさい〉版と、きれいな修正版とをあえて両方弾きくらべて、工夫の有無でどう変わるかの実例としました。しかし、完成版のほうでも、主催担当譜面のテンポ指定がひとつだけ〈和音1〉に行ってしまっていたので、本番では打楽器だけタイミングがずれてしまっていました(打楽器は〈和音〉パートの記述を無視するので)。テンポ指定の場所に留意してチェックしていたつもりが、事前に気づけなくて、めろさんに申し訳ないことをしました。閉会後に見直してみて気づいたのは、「MabiIcco」用のMMI形式のファイルをやりとりするだけでは、MMLの正確な共有にはならず、MML出力時の設定も合わせて知らせておかないと違いが生じてしまう、ということでした。今回の場合は「和音にテンポ出力を許可する」オプションのオンオフの差によるものでした。

ほか、わたしの作品の「森のくまさんと山の音楽家」「インフレ大宮殿」「幸せなら手をたたこう」などをジャムしました。時期が違うので選曲に入れなかった「きよしこの夜」をもし含めていたら、ほぼ、わたしのジャム作品フルコースでした。


フリースタイルジャムで弾く前提のMMLをつくるときのコツをいくつかまとめました。音量の件は本番では触れられませんでしたけれど、こういったことを、実演込みで掘り下げました。

なぜわざわざフリースタイルジャムで弾くのか、ということまで触れる余裕がありませんでした。ここでサッとまとめると、さっき書いた、演奏する側と聴き手側との垣根を下げようという思いと、ゲーム内システムをうまく使って、不確定要素を孕んだその場限りの音楽を試みたいという思いです。


もっと親しみやすい話題として、ミニゲーム成功時のエフェクトについても取り上げました。

画像1:特集コーナーの演奏風景1

画像1は、「キュッパミニドール」を召喚した状態でジャムを始めた場合のエフェクトが出ているときの光景です。コンペイトウがぶわっと飛び散ります。

画像2:特集コーナーの演奏風景2

画像2、ペットのカニがそばにいる状態でジャムを始めると、大きな泡が体を包むエフェクトが出ます。

画像3:特集コーナーの演奏風景3

火のそばでジャムをすると、画像3のように炎のエフェクトが出ます。キャンプファイアがそばにあればOKです。天気が雨の場合は黒煙になります。

これらのエフェクトなら、アイテムやペットがあれば、場所を問わず出せます。ほか、特定の場所で出せるさまざまなエフェクトがあります。マビノギのフリースタイルジャムによる演奏のページに載せています。


ほか、演奏に直接関係のないこと(コルプレの祝福の発生条件など)についても、前もって再調査していましたけれど、それは取り上げませんでした。ミニゲームのコツもとくにありません。作譜のコツに絞っても、すべてしゃべろうとすると優に1時間を超えてしまうのでした。

今回、掛け合いにする必然性はなかったから、ぎりぎり収まる分量にした原稿をわたしがひたすらしゃべって、めろさんがアドリブで合いの手を打つ形で進めました。エフェクトの種類の件に関しては、どこに盛り込むか最後まで決まらず、これもアドリブでねじ込みました。駆け足でしたけれど、予定時間以内に終わった点はよかったと思います。

これまで、幻想のコーラスも特集したしエリン音楽ひろば 2022年2月、インタラクションの歌詞出しも解説したしエリン音楽ひろば 2022年4月、エコーやリバーブエリン音楽ひろば 2022年6月、ドラム道場エリン音楽ひろば 2022年10月などのような実践的な講座もいろいろやってきました。その間のマビノギ側の新しいトピックは、64bit改変による破壊的変更くらいのものです。そろそろ取り上げるべき題材が尽きてきました。

スクリーンショット集

画像4:開会時
画像5:テスト演奏
画像6:エンディング

閉会は23時40分をすこしまわったころでした。来ていただいたみなさんどうもありがとうございました。

次回はルエリで8月末、特集コーナーは「サイコロトーク」の予定です。